少年の主張根室地区大会 最優秀は「どんな人でも」 中標津町広陵中・楓川さん(道・道教委 2018-08-10付)
【根室発】根室振興局は七月中旬、別海町中央公民館で三十年度少年の主張根室地区大会を開いた。管内五市町から代表となった中学生十人が出席し、日ごろの思いを発表。審査の結果、「どんな人でも」と題して発表した中標津町立広陵中学校の楓川奈央さん(二年)が最優秀賞に輝いた。
楓川さんは、一昨年に神奈川県相模原市の津久井やまゆり園で発生した殺傷事件にショックを受けたことを伝え、高齢化が進んで介護の手が足りなくなっている現状はあるものの、自分で意思表示ができないからといって突き放してもいいことなのかと問いかけた。
その上で、自身も難聴を抱えていることから、いつかは弱者になる自分たちも安心して生きていける社会をつくることの必要性を訴えた。
楓川さんの発表内容はつぎのとおり。
◇ ◇ ◇
二〇一六年七月二十六日、何があったか覚えていますか?この日は、神奈川県相模原市津久井やまゆり園で殺傷事件があった日です。この事件で亡くなった人は十九名、けがをした人は四十名以上もおり、「戦後最大の事件」といわれています。
この事件を知ったとき、私は犯人に対し大きな怒りを覚え、被害者のことを思うと、とても悲しくなりました。
しかし、犯人のある言葉で、すべてがショックに変わりました。その言葉とは犯人の動機でした。「障害者なんて、いなくなればいいと思った」。
皆さんはこの言葉、どう思いますか。障害者を雇う会社も増えている今、このような言葉を発する人がいるとは、私は夢にも思いませんでした。それと同時に「私の耳は、どう思われているのか」と思いました。
私は難聴です。去年の十二月、手術により左耳はほぼ正常まで回復しましたが、今でもテレビを見るときは両耳に補聴器を付けないと聴こえません。
去年、中学校へ上がるとき「先生の声は聞こえるか」「耳のことで何か悪口を言われないか」と心配でした。ですが、先生の声はよく聞こえ、耳について悪口を言われたことは一度もありません。本当に良かったと思っています。
私は、社会で働く難聴者、ろうあ者はどのような悩みをもっているのか疑問をもち、「NHKハートネット」の書き込み板を見ました。すると、そこには多くの意見や悩みが書かれていました。その中で私が特に共感した悩みが二つあります。
一つ目は「聞き返すことに躊躇し、よく分からずに返事をしてしまう」ことについてです。
これは私も何度も経験があります。そこで私は友達の問いが聞き取れなかったら、今までの会話や、やっていたことから推測して答えたりしています。これはもし聞き返したら「聞いていない」と思われたり、「いやな顔をされたりするかもしれない」という思いがあるからです。
二つ目は「すれ違う人とあいさつをしたら、自分の声が向こうに聞こえず無視したと思われた」という悩みでした。
今は自分の声がどこまで届くか分かっているのでこのようなことはありません。でも、手術する前は私も誰かとあいさつするだけでドキドキして、「声、聞こえたかな」と心配でした。
世の中では、相模原の事件の犯人に共感したという人もいるそうです。たしかに高齢化が進んでいる今、介護の手も足りなくなっています。だからといって、自分で意思表示ができないから…、一人で生きていくことができないから…、そんな理由で突き放してもいいことなのでしょうか。
私は違うと思います。「齢」つまり「齢を重ねる」とは「弱いを重ねる」こと。これは社会学者である上野千鶴子さんの言葉です。その意味は年をとれば誰でも働けなくなり、生活をするには他人の手が必要となるということです。
だからこそ、いつかは弱者になる私たちも安心して生きていける社会をつくることが必要なのです。この上野さんの言葉に私は共感しました。
先ほど紹介した書き込み板では「もっと難聴について知ってほしい」という意見が多かったです。彼らは優しくされることや手助けされることだけを望んでいるわけではありません。この障害をもって何が大変で何ができないのか、正しい理解を求めているのです。
皆さんもいつか大人になったら障害をもつ人と働くかもしれません。でもどんなときでも忘れないでください。大人も子どももしゃべることのできない人も、歩けない老人も、どんな人でも「みんなが同じ重さの命をもっている」ということを。
(道・道教委 2018-08-10付)
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