全国学力・学習状況調査結果公表で声明等―道教組・道高教組 競争主義的施策の転換を 豊かな成長保障する教育要請
(関係団体 2018-08-10付)

 道教組(川村安浩執行委員長)、道高教組(尾張聡中央執行委員長)は六日、全国学力・学習状況調査結果の公表に対して「“全国一斉学力テスト”による競争教育・順位争いを改め、子どもたちの豊かな成長・発達を保障する教育を大切にしよう」と呼びかける「見解」を発表した。見解では、調査が「学校・教員・子どもを息苦しい学力競争に追い込んでいる」などと批判。文部科学省・道教委に対して「競争主義的な教育施策を根本的に転換するべき」と求めている。

 見解の内容はつぎのとおり。

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1 文科省・道教委は「全国一斉学力テスト」を使い、学校・教員・子どもを息苦しい学力競争に追い込んでいる

 文科省は、七月三十一日、全国の小学校六年生と中学校三年生を対象に実施した「全国学力・学習状況調査」(学力テスト)の都道府県・政令指定都市ごとの結果を公表した。

 道教委の佐藤嘉大教育長は今回の結果を受け「本道の状況は、全国の平均正答率との差が中学校国語A・理科で上回り、中学校国語Bで同じになるとともに、他の教科では全国平均に達していないものの小学校国語A、中学校数学Bで差が縮まるほか、小学校、中学校ともに正答率の少ない児童生徒の割合が減少するなど、改善の傾向がみられる。全国平均以上という目標の実現に向けて、調査結果等を活用した検証改善サイクルの確立、基礎、基本を定着させ見通しをもって主体的に学ぶことのできる指導の充実、…(中略)一定の成果として現れているものと考えている」とのコメントを公表した。

 道教委は「すべての教科で全国平均以上となるよう目標の実現に向けて取り組む」という方針を掲げ、子どもや教員ばかりでなく、家庭までも過度な点数競争に巻き込み、追い込み、本来、人間的成長の場である学校という空間を息苦しい競争社会に変えてきた。

 また「学力テスト」と同時に行われる質問紙調査(学習状況調査)の結果も公表した。「学校の決まりを守っている児童生徒の割合」「学習規律の維持の徹底を“よく行った”学校の割合」など、日常生活を詳細に質問し、肯定的な回答を「子どもや学校のあるべき姿」として生活目標に刷り込もうとする仕組みとしている。規律維持を求めるあまり、上意下達の学校のスタンダード化によって「こうあるべき」が押し付けられ、子どもたちの健やかに成長する権利が奪われている。

2 長時間過密労働の中、本来必要な授業準備の時間さえない教員のためにも、学力テストの見直しは喫緊の課題

 文科省・道教委による「学力テスト」競争は年々苛烈になり、全道でチャレンジテストによる反復練習や過去問対策が常態化しており、生徒の知的好奇心を刺激するはずの楽しい授業が「学力テスト」対策に追われ、人間的かかわりを紡ぐ、生き生きとした学校生活にゆがみが生じている。

 道教委は、各学校にチャレンジテストを強制し、春休みの宿題を促し、過去問や類似問題の繰り返し、日常的に宿題を増やすなど学テ対策に躍起になっている。

 家庭学習時間を増やすことや個別の事情など構いなしに一方的な生活習慣を家庭に押し付けており、保護者からは「学校の宿題が多すぎて大変。子どもたちの遊ぶ時間がない」などの声が出ている。

 昨年三月、福井県で担任の行き過ぎた叱責を原因として、中二男子が自殺した事件があった。この問題にかかわって昨年十二月に福井県議会が教育行政の抜本的な見直しを求める意見書を採択した。

 意見書では「学校の対応が問題とされた背景には、学力を求めるあまりの業務多忙もしくは教育目的を取り違えることにより、教員が子どもたちに適切に対応する精神的なゆとりを失っている状況があったのではないかと懸念するものである」と指摘しており、文科省が推し進めてきている学力重視への批判とともに、生徒一人ひとりに教員が向き合える教育環境が必要だと訴えている。テストの準備と実施・結果配布、答案コピーの独自採点などの学テ対策のために、本来、必要な授業準備の時間さえない教員のためにも、学力テストの見直しは喫緊の課題である。

3 財界の要請に沿ったグローバル人材育成、競争主義「学力テスト」の弊害を改め、子どもたちの豊かな成長・発達を保障する教育を大切にしよう

 政府は「世界で企業が一番活躍しやすい国」を支えるグローバル人材を求める財界の根強い要請に沿って、競争主義社会を勝ち抜いた一部のエリートを中心とした社会、弱者冷遇の新自由主義的社会の固定化を目指し躍起になっている。こうした社会だからこそ「学力テスト」は、学校と教員を点数偏重主義に一層駆り立てるシステムとなり、早期に「エリート」を選別するために機能していると言える。こうした過度な競争主義によって、子どもたちの学ぶ意欲ばかりか個性や発達にまでゆがみが生じてきていることは、多々指摘されているとおりである。

 子どもの権利条約三一条では「休憩および余暇についての児童の権利」「文化的および芸術的な生活に十分参加する権利」をうたっているが、日本の子どもたちには、休憩や余暇を楽しむ時間は保障されないのか。

 日本の過度な競争主義に対し、国連子どもの権利委員会は、数度にわたり問題点を指摘しているのは周知のとおりである。

 文科省は二〇一五年、全教(全日本教職員組合)の申し入れに対し「全国的な学力の把握は数%の実施で可能」と回答している。毎年五十~六十億円も使い、同じような傾向を把握するための、全員参加の「学力テスト」は直ちに中止すべきである。そして、この予算は、三十五人学級の拡充や長時間過密労働で日夜働いている教員の負担軽減など教育条件整備に使うべきである。

 文科省・道教委には、子どもと教員、保護者に過度のストレスをかける政策から、子どもたちの豊かな成長・発達を保障する教育という憲法や子どもの権利条約の基本に立ち返って、その競争主義的な教育政策を根本的に転換することを求める。

(関係団体 2018-08-10付)

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