声明発表し配置計画再考求める―道高教組・道教組 教育の機会均等保障を(関係団体 2018-09-13付)
道高教組(尾張聡中央執行委員長)と道教組(川村安浩執行委員長)は四日、道教委の公立高校配置計画、公立特別支援学校配置計画に対する声明を発表した。声明では「地域の高校の統廃合は、そこで暮らす子どもたちの教育の機会均等を保障する観点からも決して許されることではない」と批判し、配置計画の再考を求めている。
声明の概要はつぎのとおり。
◇ ◇ ◇
1 はじめに
道教委は九月四日「公立高校配置計画」(二〇一九~二一年度)と「公立特別支援学校配置計画」(二〇一九年度)を決定した。
「高校配置計画」では、二〇二一年度に南幌高校を募集停止するほか、女満別高校と東藻琴高校を統合し大空町立の新設校の設置を決定したほか、二〇二〇年度には深川東、函館工業など五校での学科再編などを示した。
また、伊達緑丘高校については、今後の市の検討結果を勘案し、二〇二一年度における伊達高校との再編を含め、計画を変更することがあることを新たに付け加えた。
「特別支援学校配置計画」では、二〇一九年度に職業学科設置の知的障害高等部を、道央圏で七学級五十六人の減、道南圏と釧根圏では五学級四十人の増、道全体では二学級十六人の減とする一方、義務校に併置の高等部を六学級三十八人の増としている。
今回の「高校配置計画」で、新たに統廃合や募集停止の対象となったのは、いずれも地域の小規模校である。また、機械的な学級減によって、三学級以下の高校が十一校となり、道教委の言う「望ましい学校規模」にそぐわない学校が増えた。
地域の高校の統廃合は、そこで暮らす子どもたちの教育の機会均等を保障する観点からも決して許されることではない。私たちは、道教委が「高校配置計画」を撤回し、子どもや保護者・地域の願いに基づいた学校配置となるよう配置計画の再考を求める。
2 道教委は機会的な学級削減や統廃合をやめ、小規模校が果たしている役割を再認識し、高校配置計画を再考せよ
次年度学級増となった十四校のうち羅臼高校を除く十三校は、ことし四月に一~二学級が減とされたばかりである。いずれも今後の中卒者の増加を見込めば学級減の必要はなかった。急な教職員の削減によって、教育課程の変更を余儀なくされることもあり、場当たり的な学級削減が現場に与える混乱は大きい。
七月十日、南幌町では「南幌高校の存続を求める集会」が開かれ、学校関係者、教育委員、町議会議員、南幌高校同窓会、地域住民など約六十人が参加した。道教委の案に対し参加者からは「四~八学級がなぜ望ましい学校規模なのか」「少人数の学校には教職員が十分手をかけられるよさがある」「数字だけを見て統廃合を判断するのは納得いかない」など強い要望が続々と述べられた。南幌高校振興協議会は八月二十日、道教委に対し南幌高校存続を求める要請を行った。
しかしながら道教委は、こうした地域の声に応えようともせず、南幌高校の閉校を決めてしまった。南幌町の教育長は「少人数で先生の目がゆきとどき、中学校のときに不登校だった生徒が立派に卒業している」と語った。地域の小規模校は、地域に果たしている役割の大きさは当然のことながら、不登校経験のある近隣の生徒を受け入れ、ゆきとどいた教育を行っている。小規模校に自分の居場所を求め、そこで成長し卒業していく子どもたちがいる事実を受け止め、学校規模によって少人数募集を行うなど適切な施策を行うべきである。
道教委はこの三年間で四十六校四十八学級の削減を行おうとしているが、その結果新たに十一校が一学年三学級以下となる。
これらの高校は、道教委の言う「望ましい学校規模」を下回り、新たな高校再編の呼び水となる可能性も否定できない。私たちは小規模校が果たしている役割を訴え、道教委が示す「一学年四~八学級を望ましい学校規模」とする指針に一貫して反対してきた。道教委は「高校配置計画」を撤回し、子どもや保護者・地域の願いに基づいた学校配置を策定するよう再考を求める。
3 特別支援学校の教室不足を早急に解消するとともに、長期的な配置計画の策定を求める
本年度、特別支援学校高等部の在籍者は約三千七百人であり、これは、道内の全高校生のおよそ三%に当たる。特別支援教育がスタートした二〇〇七年の特別支援学校高等部在籍者の割合が約一・五%であったことを考えると、この十年あまりでその割合は急増している。生徒の増加に対応するため、道教委は、高等支援学校を増やしてきたが、小中学部を併設している知的障害特別支援学校高等部については、伏見支援学校一校のみの新設にとどまっている。
義務併設の知的障害特別支援学校については、長期的な見通しは示されず、毎年、臨時的に学級増を学校現場に押しつけている。そのため、多くの特別支援学校で、深刻な教室不足が起きている。根本的な問題の解決に向け、長期的な配置計画を策定するとともに、喫緊の課題としては、学校の新設や教室の増改築などを行うべきである。
また、この十年あまりで小中学校の通級指導を受ける指導生徒も倍増し、中学校の特別支援学級から高校へ進学する生徒も増加している。そのような中、本年度から高校でも通級指導教室の制度が始まったが、配置される教員は定数化されておらず、極めて曖昧な制度設計のもと、条件整備はいまだ不透明なままである。道教委は、標準法改正を国に求めるとともに、それを待たずに道独自での人員配置や施設・設備の予算化を行った上で、高校における通級指導を推進すべきである。
4 「これからの高校づくりに関する指針」を見直し、教育の機会均等を実現する施策へ
道教委は二〇一八年三月「これからの高校づくりに関する指針」を策定した。その中で「一学年四~八学級を望ましい学校規模」とし、三学級以下の高校を原則統廃合の対象としているが、その教育学的根拠はない。そればかりか、道教委がその「根拠」として挙げる「切磋琢磨」は、大規模な学校の中で生徒同士を競わせるという、短絡的な「競争の教育」にもつながりかねない。
不登校やその他様々な問題を抱え、自分の居場所を求めて小規模校や定時制高校へ進学する生徒がいるにもかかわらず、道教委はこうした教育の現実に向き合わない「指針」を策定し、小規模校や定時制高校を学級減や閉校に追い込んでいる。
また「地域連携特例校」に対して、道教委が進めようとしている遠隔システムは、教育の機会均等を脅かす事態を生みだしかねない。すべての教科の教員を配置できない地域連携特例校に対し、その人的配置の代替として遠隔システムを導入するのであれば、対面授業と同等の教育を保障したとは全く言えない。三学級以下に学級数を減じられた十一校の高校も、「指針」に従えば今後原則統廃合の対象とされる。生徒数の増加が見込まれる特別支援学校の教育条件は、現在でも過酷を極めている。すべての子どもたちに教育の機会均等を保障しているのか、甚だ疑問である。
高校配置や特別支援学校の新増設は、教育予算の充実と密接にかかわる問題である。日本の教育の公的支出(対GDP比)はOECD加盟国の中で最低であり、道は国に対して教育予算増額を強く要望するべきである。また、必要な予算は国の動きを待たずに道独自で措置すべきだ。
私たちは、教育予算の増額、国による少人数学級の実現、教育費無償化などを求める「教育全国署名」に全力で取り組むとともに、「ゆきとどいた教育」を求める全道的共同を一層広げ、大きく運動を進めていく決意である。
(関係団体 2018-09-13付)
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