【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】NO.22英語科編③北海道中学校英語教育研究会(中村邦彦会長)教科書の題材活用のポイント(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-10-22付)
買い物活動で製作した看板
◆教科書を使って4技能の統合を図る
ポイント1 入門期に英語学習の基礎を作る
1年生の1学期に小学校と中学校の接続を意識した授業づくりを行う。外国語活動を経験してきた生徒たちは発音が上手で聞く力がある。しかし、音としてはわかっているが文字としてはわかっていない。そこでディクテーションやディクトグロスで「発音」と「綴り」を関連付ける学習を行う。そして、ALTやJTEとのティームティーチングを活用し、生徒のノートや課題プリントをチェックして単語や英文の書き方を定着させる。生徒は音を「かたまり」として覚えているため、単語間のスペースを狭く書いてしまったり、anとand、areとaなどを混同してしまったりするミスも見られる。入門期の生徒にとって教科書の本文を正確にノートに書き写すことは大変な作業である。そこで、ミスなく本文をノートに写すことができた生徒にはシールなどで褒美を与えて意欲喚起につなげている。音読も同様に教師が手分けをしてチェックを行い、定着を目指している。細やかにチェックすることで生徒のつまずきを把握して指導に活かすことができる。
授業中の指示を英語で出すほかに、週1回、ALTによる十分程度のプレゼンテーションを行っている。簡単な英語で(1年生の4月には単語だけ)でALTの母国の文化や名所、生活習慣などを紹介してもらい、たくさん英語に触れるような機会を作る。写真や図を用いて行うことで、生徒は単語を知らなくても概要や要点を理解することができる。この活動は、生徒は異文化と自国の文化の共通点や相違点を知り、視野を広げる機会となると考えている。入学当初には抵抗があった生徒たちも1学期の終わりにはスムーズに授業を受けることができるようになる。
ポイント2 協働を通して思考力・判断力をはぐくむ
例えば教科書の買い物表現を学習する単元では4人1組のグループで店を開店し、売り上げを競う活動を2時間扱いで行う。
1時間目は買い物場面で使用する表現を学び、グループに分かれて開店準備を行う。準備では店のコンセプト、店名、決められた在庫の上限内で各商品の内容や値段を考え作製する。授業でできなかったグループは次時までの宿題とした。
2時間目は買い物表現を復習した後、各店の宣伝、売買活動を行った。4人のうちの2人が店員で2人が買い物に出かけ、前後半で入れ替わる。活動の終末には各店の売り上げを確認して上位のグループを表彰した。売買の場面では、DownやNoなど自分たちの知っている単語を使って店員と客が駆け引きをしたり、客を呼ぶための表現をALTに教えてもらいながら学級に呼びかけて、在庫を減らそうとしたりするなど生徒の自主的な学習活動も見られた。
生徒が考えた店のコンセプトは高級ブランド、量販、コラボ商品など様々であり、買った商品をノートやファイルに貼ったりして大切に保管している生徒もいる。
活動のときにはどれだけ多くの英語を使ったか、活動のゴールは何なのか指導者が自覚することが大切である。そのため、活動の中間と終りには適切な評価をして振り返りをさせたい。また、活動を成功させるためにはあまり多くの活動を詰め込まないようにすることも大切である。この活動では制作するものは塗り絵方式の商品(Tシャツ、ジャケット、帽子)各グループ4枚ずつ、店の看板のみとし、あくまでも言語活動に集中できるようにした。また、普段の授業からペアワークやグループワークを取り入れるなど仲間とのかかわり合いの活動を授業展開に組み込み、一緒に課題解決にあたろうとする集団作りも大切である。
ポイント3 読み物教材から表現活動へとつなげる
教科書サンシャイン1年生のプログラム6では名探偵コナンが登場する。この教材を使用してリテリングを行う。リテリングとはキーワードや絵をヒントに、読み込んだ英文(教科書本文)を再生する活動である。教科書本文の内容把握をしたのちに音読練習を行い、リテリングの準備を行う。再生する英文を準備する際にコナンの説明文や話者のコナンに対する思いなどの英文をつけ加えて表現するように支援する。
中学1年生はコナンが好きな生徒が多く、表現したい事柄が様々ある。「読むこと」から「話すこと」へつながり、理解力や発信力を高めることが期待できる。暗唱や紙芝居などの場面を演じてみる活動は英文の内容にふさわしく音声で表現することが求められる。発表の際、情景や登場人物の気持ちを考えたり、聴き手に伝わるよう、強く読んだり、弱く読んだり、文と文の間、速さなどを工夫して感情豊かに表現できるものと考える。
(札幌市中学校英語教育研究会 事業部長 札幌市立月寒中学校 教諭 黒谷 香)
※次回は、北海道生活科・総合的な学習教育連盟「生活科の授業改善のポイント」を掲載します。
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生徒のノートの添削より
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-10-22付)
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