【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】NO.26道徳科②北海道道徳教育研究会(鹿野内憲一会長)教科書教材を活用するポイント
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-10-31付)

伝えたい!北道研②板書
2つのコマの比較から主人公の心情変化を扱った例(クリックすると拡大表示されます)

◆授業を子どもと作る視点を大切に

 今年度から、小学校では道徳の時間が「特別の教科」となった。多くの教師が教科書を中心に週1時間の実践を積み重ねてきている。しかし、実践の中心となる教科書には、実に様々な形の教材が載っている。写真やグラフだけが複数載っていたり、漫画の形で掲載されていたり、教材文が5ページ以上にもわたる長文だったりするのだ。こうした多様な教材は、「まず読んでみよう」などと一本調子で子どもたちに投げかけても、充実した授業とはなりづらい。授業にはねらいがあり、その達成のために子どもたちに考えさせたい場面がある。これら多様な教材を効果的に活用していくことは、週1時間の授業を充実させていく上で重要な視点となる。本稿では、教科書教材の多様な活用法について、いくつか紹介したい。

ポイント1 大きな挿絵は情報量を減らして提示する

 低学年の教材に、一枚大きく掲載されている挿絵がある。例えば、街の中にたくさんの人がいて親切な行為があちこちに描かれている、というような教材だ。一般的には、挿絵の中から道徳的なよさをたくさん見つける活動を組むことが多い。例示した教材でいうならば、挿絵から「親切な行為」を探させ、子どもにどんどん発表させる授業となる。こうした授業は、子どもの発言が続くことで、活発な雰囲気が生まれる。しかし、授業は徐々に「よさの発表会」という様相を呈し、教師と子どもの一対一のやり取りが多くなる。子ども相互の発表は平行線をたどり、学びが十分に深まらないことも多い。

 このような教材を扱う場合は、必要なところ以外を隠すか、必要な部分だけを切り取って提示する方法がある。情報量を極端に少なくするのだ。それによって、子ども全員が同じ教材を見て、感じたことや考えたことを交流することができる。「親切にされたときの気持ちはどうか」「親切にした方はどんな気持ちだったか」など、内容項目に関する部分について、しっかりと価値理解を深めることができる。その後「相手が喜ぶ親切な行動を他にも探してみよう」などと、教材全体へと話題を広げていけばよいのだ。

ポイント2 漫画の教材では取り上げる場面を明確にする

 教科書を見ていくと、漫画が載っていることがある。漫画という形になることで、子どもは教材のあらすじを捉えやすくなる。このような教材を扱う際には、読んだ後に「どんな話だった?」というようなやりとりはなくしたい。あらすじの確認は最小限にして、すぐに授業の本丸に入っていきたいものである。

 漫画は、いわば「多数の挿絵の集合」である。大切なのは、授業のねらいに近づくために、どの場面を取り上げるのかを明確にすることだ。導入の手立てとして、漫画全体を読む前に、考えたい中心となる「一コマ」を先に見せるというものがある。「これから読むお話の中に、こんな場面があります」そう言いながら一コマを見せる。「『やっぱりようちえんはいいなあ』って、どういうことなのだろう」などと一言添えてから、漫画に入っていくのだ。こうすることで、子どもは漫画教材を読むときの「構え」を作ることができる。  

 漫画を一通り読んだ後は、先に見せた「一コマ」に戻って問うてみたらいい。きっと子どもは、登場人物の心情変化や問題となる行動について、提示された一コマとつなげながら語ってくれるだろう。また、教材の内容によっては、二コマを板書上に位置付けて比較しながら扱うことも効果的である=写真=。

ポイント3 長文教材は事実・人物・言葉等あらかじめ明らかにする

 高学年ともなると、非常に長い教材文が掲載されている。こうした教材は、あらすじを確かめたり登場人物の心情を追っていったりするだけで時間がかかる。教材を短時間で手際よく把握していくためには、やはり何がしかの工夫が必要となろう。

 こうした長文教材の場合は、要所となる事実・人物・言葉などをあらかじめ明らかにしてやるとよい。例えば、友達との軋轢について描かれた長文ならば、教材を読む前に登場人物の挿絵を提示して紹介する。子どもはその人物たちの関係に着目して読んでいくだろう。また、例えば『ぼくたち、少し足りなかったのかな』という本文中の言葉を提示する。こうすることで、何があったのか、少し足りなかったってどういうことなのかを念頭に置いて、子どもは教材を読んでいくだろう。教材を読み終えたとき、自然と焦点化した話し合いが生まれることと思う。

 他にも、焦点化を意図した手立てを打つ方法はいくつかあるが、その一方で教材文を徹底的に読み深めることによって、新たな道徳的価値に気付かせたり自らの感じ方を振り返らせたりする授業があることも付記しておきたい。

 ここに紹介した手立ては、授業の組み立ての中で生かされてこそ、効果的なものとなる。道徳の授業を、子どもとともに作っていくという視点も大切にしながら、実践に生かしていただければと思う。

(札幌市道徳教育研究会 研究部長 札幌市立八軒西小学校 教諭 目黒 唯史)

※次回は、「指導と評価の一体化におけるポイント」を掲載します。

(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-10-31付)

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