【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】NO.24総合的な学習の時間編 北海道生活科・総合的な学習教育連盟(礒島年成会長) 探求的な学習 充実のポイント
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-10-26付)

伝えたい2道生総連、上
総合的な学習の時間の基本原理(クリックすると拡大表示されます)

◆授業の基本原理を重視した単元づくりを

 総合的な学習の時間における「深い学び」は「探究の過程」が主体的に繰り返され、子どもが探究課題に関わる概念を獲得し,社会参画を目指していく姿のことである。この深い学びを成立させるためには、総合的な学習の時間の基本原理を重視した単元づくりが不可欠である。

 今回は、総合的な学習の時間の授業づくりの基礎・基本について紹介する。

ポイント1 総合的な学習の時間の基本原理を大切にする

 総合的な学習の時間の基盤となるのは、アカデミックな知識・技能を身に付ける各教科、道徳性や人間性を育む特別の教科・道徳、社会性を育成する特別活動である。つまり、学校における教育活動すべてが総合的な学習の時間の基盤なのである。

 その基盤を重視しながら総合的な学習の時間において、自分が興味・関心をもった対象と関わりながら課題を発見していく【課題の発見】、自分との関わりで在り方や生き方、暮らし方を獲得する【関わり方の追究】、課題追究の中で見付けた自分の役割遂行能力に見合った【実践・行動】といった「テーマと関わる体験的な学習」や「主体的・対話的な学習」を展開することで自己の生き方へ反映させるべき『○○観(概念)』を形成していくことが総合的な学習の時間の基本原理である=図=。

 この基本原理を大切にしながら、各学校では、教育目標に直結する総合的な学習の時間の目標を設定し、その達成に向けた単元を構想していくことが重要である。

ポイント2 探究課題発見の種をまく

 例えば、「福祉」をテーマにした学習を構想するとしよう。子どもにとって福祉の問題は決して身近なものではなく、探究したい課題として認識しているとは言い難い。

 そこで重要となってくるのが「共通体験」である。実際に車いすに乗って学校生活を送ってみたり、校舎の外を車いすで散歩したり、アイマスクをつけて授業を受けたり、老人疑似体験セットを使って老後の生活を体感したりと、全員が具体的な体験をすることで、共通して見えてくる疑問や感想が探究すべき課題発見の種となる。この時の体験は「直接体験」であることが望ましい。全員で本物の体験をすることが探究への大きなエネルギーになるのである。

 「日本の文化」をテーマにする場合は、全員の茶道体験から学習をスタートさせる。「環境」をテーマにする場合は、自然散策や小川遊びなどから学習をスタートさせることもできるだろう。探究課題発見の種をどのようにまいていくのか。そのきっかけは、やはりインパクトのある共通体験だと言える。

ポイント3 思考を可視化し、自分の考えを明らかにする

 総合的な学習の時間はあくまでも【個】(自分)の課題の探究を重視する学習である。同内容の課題をもった子どもたちでグループをつくって調査したり、調査した内容を検討したりするなどの協働的な学びが展開されることはあり得るものの、基本的には、【個】で課題を探究していく学びである。

 そのためには、一人一人が自分事としての課題意識をしっかりともち、情報を収集することが重要である。この時、安易にインターネットに頼るのではなく、人とのかかわりや体験を通して多様に情報を収集できるようにしたい。

 また、収集した情報を「整理・分析」する過程を大切にすることも重要である。最終的な学習のゴールとなる『○○観(概念)』を形成していくためには、課題に対する【個】の考えが明らかになっていなければならない。この自分の見方・考え方を明らかにする時、思考を可視化していくことが効果的である。調査した事実の因果関係や関連性、共通点や相違点などより深く事象を捉えることで自分の考えが明確になってくる。

 この「整理・分析」の過程をどれだけ大切に扱うかは「深い学び」をつくるための大きなポイントとなる=写真=。

ポイント4 概念形成と直結する実践・行動化を図る

 単元終末における「まとめ・表現」は、【実践・行動】につながる段階である。自らが導き出した『○○観(概念)』を様々な形で発信したり、実践したりする段階である。当然、学習のスタート時からその内容を見通せていたわけではない。

 しかし、探究の過程それぞれで見通しと振り返りを積み重ねてきていることが大切なのである。時には軌道修正をしたり、新たな方策を見付けたりするステップが最終的な「まとめ・表現」の学習を成立させる。子ども自身が自分の役割遂行能力に照らしながら「何ができるか」を考えていくことこそ総合的な学習の時間が目指す深い学びの姿だと言える。

 「誰にでもやさしくできる街づくりのために自分たちができること」を考えたり、「日本文化の素晴らしさを伝える文化博覧会」を企画したりすることで、積極的に社会参画しようとする態度が養われていくのである。

(北海道生活科・総合的な学習教育連盟旭川地区 旭川市立向陵小学校 教頭 野上大輔)

※次回は、北海道道徳教育研究会「板書づくりのポイント」を掲載します。

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伝えたい2道生総連、下
収穫した情報を付箋紙で「整理・分析」する

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