【伝えたい!授業づくりの基礎・基本Ⅱ】NO.23生活科編北海道生活科・総合的な学習教育連盟(礒島年成会長)生活科 授業改善のポイント(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-10-24付)
動物園と連携したモルモットの抱っこ体験活動。この体験を基に、飼育活動へつなげていく
◆気付きを見取り、つなげ、深い学びへ
生活科における「深い学び」は、「気付きの質を高める」ことである。児童の気付きを見取り、つなげ広げることが「深い学び」への入り口なのである。今回は、気付きの質を高めるための授業改善について紹介する。
ポイント1 意欲を引き出す体験活動を位置付ける
生活科は「体験を通して学ぶ」ことが重要視されていることからも、質の高い体験活動を単元に位置付けることが、学習を成功させる最も重要な要素である。
例えば、内容(6)「自然や物を使ったおもちゃづくり」の際には、ペットボトルや空き缶などをたくさん準備し、素材その物を使ってたっぷり遊ばせる体験活動を導入に位置付ける。素材を使って遊ぶ中で、子どもたちは「ペットボトルのキャップを使った車を作ってみたい」「うちわで扇ぐと進む船を作ってみたい」など、一人一人が思いや願いをもち意欲的に取り組むようになる。子どもたちは活動に没頭する中で、学習のエネルギーを醸成していくのである。
ポイント2 体験活動と表現活動を行きつ戻りつする
体験を通して、児童は様々な気付きをもったり、表出したりする。単元を構築する際には気付きを表現する「振り返り」の場面を意図的に設定したい。
例えば、内容(3)「町探検~おためし探検~」に出かけた後に「振り返り」を設定する。児童の気付きには「パン屋さんがあった」「病院があった」など施設への着目が多く見られる。その中で「パン屋の店員さんがパンを並べていた」「ガソリンスタンドの人が大きな声で挨拶をしていた」など「ひと」に着目している児童もいる。全体交流の場面で、「ひと」に着目した振り返りを取り上げることで、「どんな仕事をしているのか見てきたい」「どんな人が働いているのか会ってみたい」など「もの」から「ひと」へ視点を変換することができ、次の体験活動への意欲を喚起することができる。大切なことは「何のために振り返らせるのか」の目的意識を教師が明確にし、体験活動と表現活動を行きつ戻りつする相互作用を意識した単元を構築することである。
ポイント3 多様な学習活動で気付きの質を高める
学習指導要領にもあるように「見付ける・比べる・たとえる・試す・見通す・工夫する」などの多様な学習活動を取り入れた授業を展開し、気付いたことを基に考えることで、新たな気付きを生み出し、気付きの質を高める深い学びにもつなげることができる。
例えば、内容(9)「自分の成長に気付く学習」では、幼い頃に着ていた服や靴などを準備し、現在の自分の体と「比べる」ことで、身体が大きく成長したことに気付くであろう。内容(7)「小動物を飼育する活動」では、小動物の心臓の動きと聴診器で調べた自分の心臓の動きを比べることで、「小動物も人間と同じように心臓が動いて生きている大切な命なんだ」と気付くことができるであろう。既知の気付きを基に、多様な学習活動を通して思考することで、新たな気付きが生まれ、気付きの質の高まりへとつながっていくのである。
ポイント4 表出されない子どもの気付きを見取り「深い学び」へ誘う
児童の中に生まれた気付きは必ずしも自発的に表現されるとは限らない。低学年の時期は、書いて表現させることも大切であるが、文字表現がつたないことも考えられるので、音声言語で表現したことを教師が聞き取り、記録することも大切である。そうして蓄積した気付きを授業で関連付けることが気付きの質を高め「深い学び」へと誘う。
例えば、内容(6)「動くおもちゃづくり」で「速く走る車を作りたい」との願いをもち、個人で試行錯誤する中でいくつもの気付きが生まれる。「タイヤの数を増やす」「土台を丈夫な物にする」「タイヤを付ける位置を前にする」などの個の気付きを全体で交流する中で、「タイヤの位置と土台の重さが速く走るための秘密なんだ!」と気付く。これまで「素材と取り付ける位置」をバラバラにとらえていた児童も、「組み合わせることが速く走らせるコツなんだ!」と考えるようになる。個の気付きをつなぎ合わせることで気付きの質が高まる。
ポイント5 カリキュラム・マネジメントの視点に立ち生活科を考える
「スタートカリキュラム」については、一単位時間の授業内容を弾力的に運用し、幼児教育との資質・能力を重視した接続を円滑にする視点は欠かせない。また、他教科・他領域と関連させ、合科的に指導する視点も大切である。国語や図工で身に付けた力を生活科で発揮する場面を設定したり、生活科で身に付けた力を国語や図工で発揮したりするなど、教科等横断的に資質・能力を発揮する場面を意図的に設定する。教師自身が広い視野をもって生活科の学習を構築することが、児童の学びの世界を広げることにつながるのである。
(北海道生活科・総合的な学習教育連盟旭川地区 旭川市立緑が丘小学校 主幹教諭 植村博行)
※次回は、「総合的な学習の時間編 探究的な学習 充実のポイント」を掲載します。
(伝えたい!授業づくりの基礎・基本 2018-10-24付)
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