北教組が全国学力調査報告書に対し声明 “点数学力”偏重の撤回を 教育条件整備・拡充求める
(関係団体 2018-11-15付)

 北教組(信岡聡中央執行委員長)は八日、二〇一八年度道教委『全国学力・学習状況調査北海道版結果報告書』に対する声明を発表した。北海道版報告書で示された調査結果や分析について、「競争・序列化を加速させる」「子どもの実態と乖離した画一的な指導を押し付けようとしている」などと批判。道教委に対し、子どもの貧困解消や少人数学級の実現、教職員の多忙化解消などが必要と主張し、「子どもたちの“学び”を矮小化する“点数学力”偏重の“教育施策”の撤回」を求めた。

 概要はつぎのとおり。

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 道教委は十一月六日、二〇一八年度『全国学力・学習状況調査北海道版結果報告書』(以下『報告書』)を公表した。今回の報告では、百七十五市町村が結果公表に同意し、十九市町(昨年比十市町増)が実数での平均正答率の公表となった。これは道教委が各市町村教委に対して執拗に「結果公表」を求め続けてきた結果で、こうした一層競争・序列化を加速させる姿勢は断じて容認できない。

 『報告書』では、「中学校の国語Aと理科で全国平均を上回り、他教科では全国平均に達していないものの差が縮まっている」とした八月の「北海道調査結果のポイント」をもとに、全道状況として、①平均正答率の推移②各領域の平均正答率③学習・生活・規範意識などの質問紙調査結果④正答数の状況―を示し全国との比較に終始している。また、十四管内の平均正答率の分布と市町村規模別の平均正答率の比較を行い、百七十五市町村の状況および「学力向上策」を列挙している。

 これは「平均正答率は、都市部を含む管内よりも町村部だけの管内で低い傾向が続いている」「都市に比べて地方では一日当たりの学習時間が少ない」など、地域間「格差」をあおる単なる点数の比較にとどまるものであるにもかかわらず「学校全体での授業改善が必要」「学習習慣の確立に向けた取組を進める」など、学校現場に対してさらなる努力を求めている。

 また、継続的に成果を上げているとする三県(秋田・福井・石川)について、「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善に関する取組」をはじめ「教員研修」「カリキュラム・マネジメント」「家庭学習」など、改訂「学習指導要領」の観点から詳細に取組状況を北海道と比較し、「点数学力向上」の取組を促している。

 同日公表した『資料編 北海道の学力向上関連の取組と検証および改善に向けた取組』は、何ら因果関係が明確になっていないにもかかわらず、「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善」「検証改善サイクルの確立」「小学校と中学校が連携した取組の充実」「望ましい生活習慣の確立」の四点に課題があると一方的に結論付け、「組織的な授業改善」が必要であるとして、授業内容・方法をマニュアル化し、子どもの実態とかい離した画一的な指導を押し付けようとしている。

 道教委の分析は「学校が検証改善サイクルの確立に取り組んでいるものの教科に関する調査結果にその効果が十分に現れていない」「ゲームなどをしている児童生徒の割合が全国よりも高い」ことをもって、全道一律に「授業」「研修」さらには「家庭生活」の改善を求めている。これは極めて短絡的であり、一層競争主義に基づく施策を進めようとするものである。

 道教委はこの間、各学校における教育課程編成権をないがしろにし、教育内容・方法・評価にまで詳細にわたって不当に介入し、学校に対して画一的な「学力向上策」の押し付けを繰り返してきた。こうした「授業改善」「検証改善サイクル」の名のもとに進める「学力向上策」は、子どもの多様性・主体性や教職員の専門性・創造性を阻害し、これまでの北海道における地域に根差した豊かな教育を破壊するものである。子ども一人ひとりの「学び」は、ゆとりをもって見守り支えていくべきもので、「管理と競争」「点数学力」によって培われるものではない。「貧困と格差」の拡大・固定化など子どもの実態や社会状況について一切分析せずに、一方的に現場に責任を押し付ける道教委の姿勢は、子どもの豊かな学びの保障や教育の機会均等の確保という教育行政の本来の目的すら見失っていると言わざるを得ない。

 今、道教委がすべきことは、地域や子どもの実態に即し、豊かな教育を保障するため、押し付けの「学力向上策」を直ちに止め、「経済格差がもたらした子どもの“貧困”を解消すること」「子どもの多様性を生かした“学び合い”を可能とする少人数学級を実現すること」「教育課程の弾力化や学校の裁量権を保障すること」「教職員定数を改善し教職員がゆとりをもって子どもと接することができるようにすること」など、教職員の超勤・多忙化解消と教育条件の整備・拡充を進めることである。

 また、新聞をはじめマスコミも、全国や全道・地域の平均正答率の比較など「点数学力」をあおる報道ではなく、政府・文科省・道教委の差別・選別の教育が子どもや学校を追い詰めていることを直視し、批判・分析するなど、本来の報道の役割を果たすべきである。

 以上のことから、北教組は、「学力調査・結果公表」に断固反対し、子どもたちの「学び」を矮小化する「点数学力」偏重の「教育施策」の撤回を強く求める。

 私たちは今後も、憲法、「47教育基本法」「子どもの権利条約」の理念に基づく「豊かな教育」の実現のため、一人ひとりの子どもに寄り添う教育実践を積み重ね、市民とともに教育を子どもたちのもとへ取り戻すための広範な道民運動を進めていくことを表明する。

(関係団体 2018-11-15付)

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