4種校長会長インタビュー④ 北海道特別支援学校長会 木村浩紀氏 市町村の核となる人材育成 専門性維持、センター的機能発揮(関係団体 2019-07-16付)
北海道特別支援学校長会・木村浩紀会長
―会長としての抱負
38代目の会長に就任した。本会は昭和38年発足以来、特殊教育・特別支援教育の充実・発展のために、道教委をはじめ、関係機関と連携を図りながら推進してきた。
少子化で閉校する学校が増える中、本年度は函館高等支援学校の新設や、中標津高等養護学校に小中学部が新設されて中標津支援学校となるなど、特別支援学校はまだ増えている。
インクルーシブ教育へ向かっている中で特別支援学校のニーズは衰えず、役割はますます重要になっていく。
本会としては、広域な北海道の特別支援教育をより良くするために、今後も特別支援学校の配置の在り方や障がいの重度化・多様化への対応、就労環境、小・中学校等に在籍する障がいのある児童生徒の状況や教育的ニーズの把握など、調査・検討し、道教委に具申するとともに、地域の人材育成を積極的にサポートするなど、専門性の維持・向上とセンター的機能の発揮を果たしていきたい。
―課題と対策
各障がい種の専門性を生かして、特別支援学校の教育をさらに充実するとともに、道教委が特別支援教育に関する基本方針の中で掲げる「校内体制の充実に関する現状と課題、特別支援学校のセンター的機能の状況の課題」にある「小・中学校や高校が、特別支援学校のセンター的機能等を活用して実施した教育相談や研修支援で得られた助言や援助を校内で適切に情報共有するなど、自校における特別支援教育のノウハウを蓄積・伝承する校内体制の構築」を促進する。
本会としても各学校を支える道教委や市町村教委と連携し、各支部が地域や専門性で役割を分担しながら、市町村の核となる人材を育成するための支援を行い、就学にかかわる教育相談や各学校の指導・支援の充実が図られるように協力していきたい。
―各障がい教育について
視覚障がい教育では、道内4校の盲学校の連携はもとより、小・中学校の弱視特別支援学級や眼科医会等の関係機関と連携し、見え方に不安や心配を感じている保護者、学校関係者などに対する教育相談や研修支援を随時行っている。
昨年から授業や寄宿者の舎友会活動、研究会や研修会などに遠隔TVシステムを活用し、道内盲学校4校や道立特別支援教育センターと連携した取組を進めている。
また、専門性向上研修会を道外の関係者にも案内し、全国の関係者が学べるようにするための拠点として継続的に取り組んでいく。
聴覚障がい教育では、全国的に新生児聴覚検査が普及したことによってゼロ歳児からの療育が行われている。道内聾学校においても乳幼児教育相談でゼロ~2歳児の療育を行っている。教育においては医療機関や保健機関、行政機関などの関係機関と連携を密にし、多面的に子どもをとらえながら、効果的・効率的な言語指導、学力向上に取り組んでいる。
また、聴覚障がいの状態等に応じて、音声、文字、手話、指文字などを適切に活用して、的確な意思の相互伝達が行われるよう、指導方法を工夫するなどの聴覚障がい教育の専門性の向上を図りながら、増加する人工内耳や重複障がい幼児児童生徒への指導など、多様な教育的ニーズに対応している。
知的障がい教育では、社会に開かれた教育課程の実現など、今次学習指導要領の中心的理念達成に向けた取組の充実が求められている。子どもたちの卒業後の社会生活を見据えた地域での育ちを実現するために、学校が広く地域と協働する教育課程への見直し・改善を進めていくことが重要である。
知的障がい教育校長会では、各学校のカリキュラム・マネジメントの取組・工夫について情報交流を深め、これまで進めて来た本道知的障がい教育の検証と、今後求められる新たな時代を見据えた知的障がい教育校の在り方について研究協議を深めていきたい。
また、道教委が進める新しい形の特別支援学校(知的障がい校)高等部への移行に伴う入学者選考検査のシステム改訂に向け、引き続き関係部署と連携強化を図りながら協議・推進を図っていく。
肢体不自由教育では、幼児児童生徒の障がいが重度・重複化、多様化してきており、個々のニーズに応じた質の高い教育の実現と社会環境の変化に対応した後期中等教育の在り方などが課題となっている。
このことから、肢体不自由教育専門性向上セミナーと肢体不自由教育研究協議会を通じて、授業の改善や摂食指導にかかる技能の習得、ICTや教材・教具の効果的な活用など教職員一人ひとりの実践的指導力の向上に取り組むとともに、各学校が医療的ケアやキャリア教育、生涯学習などの視点をもちながらカリキュラム・マネジメントによる教育課程の一層の改善・充実に取り組んでいる。
また、ICT技術を活用した体育大会の開催について検討を行う。
病弱教育では、医療技術の進歩に伴う入院期間の短縮化などによって、特別支援学校で学ぶ児童生徒数が減少している。
しかしながら、一人ひとりの病気・病状・障がいは多様であり、その教育的ニーズに対応していかなければならない。さらに、少人数化や学習の制限がある中で主体的・対話的で深い学びをどう実現していくかも課題である。
本年度は道病弱虚弱教育研究連盟研修会が八雲養護学校で開催される。来年度には八雲養護の移転を控え、今後さらに小・中学校の院内学級や特別支援学級の担当者、特別支援学校同士の連携も含めて専門性向上を図り、ネットワーク構築につなげていきたい。
―本年度の重点
1 「専門性の向上」「人材育成」「経費削減」「負担軽減」
道特長会の基本方針は、「特別支援学校の経営者としての資質の向上を図り、諸課題の解決に努めるとともに、関係機関・関係団体等と連携して特別支援教育の充実・推進を目指す」としている。
この広域な北海道の特別支援教育をより良くするため、専門性の向上、人材育成、経費削減、負担軽減の4つ、すべてが成り立つような展開が大切。
平成30年度から高校における通級指導が制度化され、これまでの適切な学びの場の選択から、適切な学習内容の選択へと変わりつつある。幼・小・中・高・特すべての校種が、自校において特別支援教育を考え、そのつながりがより一層求められている。
障がいの多様化やより一人ひとりのニーズに合った教育を保障していくためには、専門性の向上や人材育成に力を入れる必要がある。
本会としては、センター的機能の発揮に努めるとともに、各校種の校長会とも連携して、専門性向上や人材育成をより推進できるよう、地域・圏域の特別支援教育の推進に寄与したい。
2 ICTの効果的・効率的な活用
盲学校4校では、昨年から、教育局の遠隔TVシステムを借用して、授業や寄宿舎の舎友会活動、研究会や研修会など、2校、あるいは特別支援教育センターを含めて5ヵ所をつないだ取組をしている。
本年度は盲学校4校にシステムが導入され、本格的に取り組む。授業等はもちろん、会議などにも活用するため、専門性の向上、人材育成、経費削減、負担軽減の切り札的なアイテムとして、教職員一人ひとりがアイデアを出し合いながら、展開していきたい。
また、病弱のテレワークや肢体不自由でのICT活用の取組など、すでに成果を上げているところもある。効果的・効率的な事例を参考にしながら、さらに展開していきたい。
3 活動のスリム化
主な活動項目と活動内容の2点目に(4)を付加し、「業務や研究協議会のスリム化等を検討し、効果的・効率的な運営の在り方について見直しを進める」とした。
各支部や各障がい種での活動や役割との関係の中で、業務を整理し、少し余裕をもって取り組みたい。その都度必要な活動や役割はあったが、内容を精査することが必要である。
また、北海道の特別支援教育の発展に向けてのビジョンを語り、北海道の価値を高め、全国大会レベルの研究会を多く開催するなど、日本の中心的な拠点になるようにしたい。
様々な課題に効果的・効率的な方法で対応し、幼児児童生徒の夢や未来を語れる時代の変化に対応したバランスの良い校長会にしたい。
きむら・ひろき
昭和60年道教育大旭川分校卒。平成24年函館盲校長、26年旭川盲校長、28年道立特別支援教育センター所長、30年札幌視覚支援校長。
昭和36年2月21日生まれ、58歳。小樽市出身。
(関係団体 2019-07-16付)
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