少年の主張十勝地区大会 普通 帯広第四中3年・吉田さん
(学校 2019-07-25付)

 【帯広発】十勝総合振興局主催の少年の主張十勝地区大会が7月上旬、十勝合同庁舎で開かれた。管内の中学生19人が日ごろの生活で感じた意見などを発表。最優秀賞には「普通」と題して発表した帯広市立帯広第四中学校3年の吉田千玲さんが選ばれた。

 吉田さんには、話すことや勉強、運動が苦手で、同じ学校の特別支援学級に通う妹がおり、「彼女ができないことをこちら側が理解し、接し方を変えれば“普通”だと思えることをみんなに知ってほしい」と強調。「一人ひとり違うのが当たり前であり、互いに認め合うことが大切」と説いた。

 吉田さんの発表概要はつぎのとおり。

 皆さんは「普通」ということについて考えたことはあるだろうか。

 私たちは普段、自分と違う行動をとる人のことを「普通じゃない」と言ってしまうことがある。

 しかし、「普通」とは何なのか。「普通」の基準は誰が決めたのか。そもそも「普通」なんてないのではと思う。きょうは、私なりの「普通」について考えてみたい。

 私には2歳下の妹がおり、母によると微笑む目元が可愛い赤ちゃんだったという。外出すると「かわいいわね」とよく声をかけられていた。

 しかし、彼女は「普通」ではない。彼女は皆さんと同じようには話せないし、はっきりと発音するのが難しく、漢字や計算を覚えるのにも私たちの何倍も時間がかかるし、運動も苦手だ。

 そうしたことができないのには理由がある。うまく話せないのは言葉を音にして組み立てるのが苦手だからで、本当は多くの言葉を知っている。名詞や動詞、形容詞はもちろん、「暴力反対」などの抽象的な言葉も知っている。

 ただ、相手のスピードに会話のタイミングを合わせられないのだ。だから、言葉を理解していないと思われがちになってしまう。伝えたい気持ちをたくさんもっているのに、言いたいことがうまく伝わらないのは本当に辛いことだと思うし、話す側が少し待ってあげればうまくいくこともある。

 また、運動が苦手なのは、体幹が弱いのと、協調運動がうまくできないからだ。縄跳びで縄を回しながらジャンプするなど、2つの動作を同時に別々の器官で行うのを協調運動と呼ぶ。これは日常生活でいつも無意識に行われていることだ。言葉の発音も、舌と口の協調運動によってはっきりと話すことができる。

 彼女には逆に素晴らしいところがある。家の中でスマートフォンや鍵がなくなると、ほぼ確実にみつけてくれるし、神経衰弱も得意なほど記憶力が良い。こんなに記憶力があるのに学習に時間がかかるのは不思議でならない。きっと物の見方や記憶の仕方が人とは違うのだと思う。

 今回、彼女のことを友人の前で話すかどうか迷いがあった。受け入れてくれる人もいれば、そうでない人もいると思ったからだ。

 しかし、私は12年間一緒に過ごしてきたからこそ、彼女ができないことをこちら側が理解し、接し方を変えれば「普通」だと思えることをみんなに知ってほしい。

 この春、妹は私と同じ中学校の特別支援学級に入った。私のクラスの授業を覗いていたり、全校集会で静かな場所で「ちあき」と私を呼びながら走ってきたりする。私に全校生徒の視線が集まり、恥ずかしいと感じることも多々ある。

 そんなとき、クラスのみんなが「お前、妹に優しくしてやれよ」と私に声をかけてくれた。みんなが普通に接してくれるので私はとても救われた。だから、みんなに話して良かったと思う。

 接し方にコツはいるが、私にとっては普通の妹だ。皆さんが「普通じゃない」と思う彼女を、私が「普通だ」と思えるように、感じ方は人それぞれなのだ。

 自分と違う人のことを「普通じゃない」と思うのか、「普通だ」と思うのかは、相手ではなく自分自身の問題だ。自分と全く同じ人は、この世には一人もいない。一人ひとり違うのが当たり前であり、互いに認め合うことが大切。

 まずは、相手の内面を知ろうと努力してみてください。そして、想像してください。きっとその人は皆さんと同じ感情を持っていることが分かる。自分と「違う」イコール「普通じゃない」と決めつけなければ、今までとは違う見え方になるはず。

 見方が変われば、感じ方も変わるだろう。

(学校 2019-07-25付)

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