少年の主張胆振地区大会 “命をいただく”ということ 登別明日中等教育3回生・小路さん(学校 2019-07-26付)
【室蘭発】令和元年度少年の主張胆振地区大会が19日、むろらん広域センタービルで開催された。管内11市町代表の中学生が、それぞれの思いを発表。最優秀賞には「“命をいただく”ということ」をテーマに発表した登別明日中等教育学校3回生の小路藍花さんが選出された。優秀賞には洞爺湖町立洞爺中学校3年の髙橋佑輔君、白老町立白老中学校3年の前田陽さんが選ばれた。
家が有機農業を営み、無添加食品しか食べないという環境で育ってきた小路さんは、「私たちの命は多くの命で成り立っている」と主張。また、食品ロスなどの問題を取り上げ、平気で食べ物を残したり、簡単に捨ててしまったりしないよう呼びかけている。
最後に、小路さんは「人間は自然と共に生きており、多くの命に支えられて新しい命を育んでいる」と結んでいる。
小路さんの発表概容はつぎのとおり。
私が今まで育ってきた環境は、科学技術が発達している今の時代では珍しいかもしれない。
有機農業を営んでいること。無添加の食品しか食べないこと。そして「肉」は飼育している鶏や父が山で捕った鹿を解体して食べること。食卓に並ぶものはすべて自分たちで育てた有機のもので、それが私にとっては当たり前で普通のことだった。
だから、小学校の遠足のおやつはみんながもってくるようなカラフルで交換し合えるようなものではなく、当時の私は戸惑うこともあった。
しかし、そこには両親の強い願いが込められていたのだ。「環境と体にできるだけ負荷をかけない暮らしをしたい」「未来の子どものために、自分の体も遺伝子も傷つけないようにしたい」。そんな願いをもって両親は私を育ててくれた。
この環境で育ってきた私だからこそ、強い思いをもって主張したいことがある。それは、私たちの命は多くの命で成り立っているということだ。
私が初めて鶏の解体をしたのは小学生のころだった。両親や兄が解体するのを見てきたし、私も羽むしりなどを手伝ってきた。食べるために命をいただくこの光景は当たり前だと思っていた。
しかし、鶏を実際に自分の手で殺し、解体するのは命の重さを直接に感じるものだった。首に包丁を当て、切ったときに硬直する鶏の筋肉。流れる真っ赤な血。死ぬ直前に必死でもがく姿。このすべてが私に命の重さを突き付けてくる。5分前まで生きていた鶏が私の手によって、私の手の中で死んでいく。命の重さは計り知れない。
だからこそ、私たちはその命を少しも無駄にはしない。私には分かるのだ。命はつながっているということが。
肉となった鶏は私が食べることで血や肉になり、私という命を支えている。この経験が私に、つながっていく命の重さ、食と命の密接なつながりに気付かせてくれた。
だから、みんなにも気付いてほしい。命の重さ、食とのつながりに。
さて、コンビニエンスストアやファストフード、24時間営業のスーパーやレストラン。食べたいときに、食べたいものが手に入る。
そんな豊かさの一方で食品ロスの問題は深刻だ。今、日本全国で約632㌧もの命が無駄になっている。その約半数は家庭から出たものだ。つまり、私たち一人ひとりが意識し合って生活できれば、捨てられるだけの命を減らすことができるのだ。
その意識をもつために、忘れてはならないことがある。
それは、私たち人間が自然と共に生きているということだ。豊かさの中で、このことはつい忘れがちだ。だから、平気で食べ物を残したり、おいしくない、食べたくないと言って簡単に捨ててしまう。もし、食卓に生きている鶏をそのまま出されたら、きっと誰もが食べるのを躊躇するだろう。そして、きっと誰もが簡単には捨てられない。なぜなら、生きているからだ。
しかし、想像してほしい。普段食べている肉も魚も、命あるものだったのだ。形を変えただけで、その命の重さは変わらない。生きていたという事実は変わらないのだ。
誰かが命を育て、そしてその命を奪うという行程の上に私たちの命は成り立っている。それを理解してほしい。大切にしてほしい。
だから、私は「いただきます」「ごちそうさま」を欠かさずに言う。命をいただいているという立場で命を大切にしたいから。命に感謝したいから。
私は忘れない。私たち人間が自然と共に生きているということを。
私は忘れない。私たちは多くの命に支えられ、新しい命を育んでいく存在なのだということを。
(学校 2019-07-26付)
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