少年の主張宗谷地区大会 なりたい自分になるために 礼文町立香深中2年・鈴木君(学校 2019-07-24付)
【稚内発】宗谷総合振興局は18日、稚内市立稚内南中学校で少年の主張宗谷地区大会を開いた。管内の中学生11人が日ごろの生活で感じたことなどを発表。審査の結果、「なりたい自分になるために」と題して発表した礼文町立香深中学校2年の鈴木佑君が最優秀賞を受賞。優秀賞には、稚内市立稚内南中学校3年の白幡翔八君、利尻富士町立鬼脇中学校2年の牧野海結さんが選ばれた。鈴木君は9月5日に札幌で開かれる全道大会に出場する。
鈴木君は、死が身近にあると感じて初めて「どんな自分でありたいか」を深く考えるようになった。出した答えは「優しい人、自分の身を守るだけではなく周りの人を助けることのできる人間」。
なりたい自分になるために、自分と向き合い弱さを受け入れ、何度でも悩み、悩めることに感謝して進んでいくと決意を述べた。
鈴木君の発表概要はつぎのとおり。
「もしも、あす地球がなくなるとしたら最後に何を食べたい」。
皆さんも一度はこのような話をしたことがあるのではないだろうか。僕も絶対にこんなことは起こらないと頭の中で確信しながら冗談のように話していた。
しかし、あの日、北朝鮮によるミサイルのサイレンで飛び起きた朝、初めて死ぬことへの恐怖を感じた。
そして、その後続いた大型の自然災害や異常気象などから、実際にいつ何が起きてもおかしくない現状だと実感した。
そんな中で、僕は困難に直面したときどんな自分でありたいかを考えてみた。そんなときこそ優しい人でありたい、自分の身を守るだけではなく周りの人を助けることのできる人間でありたいと強く思った。
しかし、昨年の冬休み、自分の情けなさを痛感させられる出来事があった。それは、家族とデパートのレストランへ食事にいったときのことだ。
僕はトイレに行くためにデパートのフロアに出た。そして、その帰り道、一人の杖を突いている女性が下りのエスカレーターに近づいていくのが目に入った。「コンコン」と床を叩きながらエスカレーターを確かめたそのとき、もともと閉じていた目をさらにギュッとかたく閉じ、不安な表情をしたのだ。僕は手伝ってあげなくちゃと思い足を止めた。
しかし、体は立ち止まったままで頭の中だけがグルグルと回った。
「かたくなに断られたらどうしよう、上手に補助できるのだろうか」。
自分でもあきれるほどマイナスの想像が頭の中を駆け巡った。はっ、とわれに返ったときには、その女性は他の方向へ歩いていってしまった。そして、僕は考えることをやめて家族のもとへと向かったのだ。
このことは、数日、僕の心をとらえ嫌な気持ちにさせた。困っている人を思いやる気持ちより、自分のことばかりを考えて体が動かなくなってしまった。なりたい自分とは、ほど遠い行動をしてしまった。
「何が助ける人になりたいだ」と自分が情けなく感じて、心から悔やんだ。
そんなとき、父が『君たちはどう生きるか』という本を買ってきた。
内容は、一人の少年が悩みながら成長していく話だった。その本を読み終えたとき、胸につかえていた何かがスーっと落ちていく感じがした。
この本の中に響いた文章がある。
それは、「過ちをつらく感じるということの中に、人間の立派さがある。正しい道に従って歩いていく力があるから、苦しむんだ」という文章だ。
この文章から、僕も正しい道に向かっているんだ、弱い自分をみつけられたことは感謝すべきことなんだと気付いた。
もしも、女性に声をかけられなかったことをすぐに忘れて嫌な気持ちを抱かなかったとしたら、この本を読んでも心に響くことはなかったと思う。弱く情けない自分をみつけることもなかったのだ。過ちを繰り返さないために人は悩むんだ、そして、自分自身の力で良い方向へ変えていけると身をもって学んだ。
この出来事によって、僕はなりたい自分に一歩近づくことができた。
一歩とは何か。それは、迷いがなくなったということだ。
声をかけるか、かけないかで悩む過程を僕は通りすぎた。困っている人がいれば、結果を恐れず、相手を思いやる気持ちを第一に行動に移そうと思っているからだ。
皆さんも、これから自分のやるべきことができずに悩んだり後悔することがあるかもしれない。
しかし、そんなときは、自分と向き合い弱さを受け入れ、何度でも何度でも悩もう。悩めることに感謝して。
なりたい自分になるために。
(学校 2019-07-24付)
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