全国学力・学習調査結果へ見解―道教組と道高教組 人間的成長ゆがめる 見直し・廃止を求める(関係団体 2019-08-09付)
道教組(川村安浩執行委員長)、道高教組(尾張聡中央執行委員長)は6日、全国学力・学習状況調査結果の公表に対して、「グローバル人材育成、競争主義、“学力テスト”の弊害を改め、子どもたちの豊かな成長・発達を保障する教育を大切に」などと呼びかける「見解」を発表した。「“全国一斉学力テスト”体制は、子どもたちを息苦しい競争へと追い込み、本来人間的成長の場である学校をゆがめている」などと批判。長時間過密労働で授業準備の時間が取れない教員や子どもたちの楽しい授業のために、学力テストの見直し・廃止を求めている。見解の内容はつぎのとおり。
1 全国一斉学力テスト体制は、子どもたちを息苦しい競争へと追い込み、本来人間的成長の場である学校をゆがめている
文部科学省は7月31日、全国の小学校6年生と中学校3年生を対象に実施した全国学力・学習状況調査(全国学テ)の都道府県・政令指定都市ごとの結果を公表した。
道教委も、結果を受け、「本道の状況は、全国との差が小学校で最大2・1ポイント、中学校で最大1・8ポイントであり、すべての教科で全国平均に届いていない」「調査結果の全体的な傾向としては、全国との平均正答率の差は、これまでと同様であり、学校以外で勉強する時間についても、全国と比べて依然として短いなど、十分に改善されていない」との教育長コメントを発表した。
そもそも、学テを実施する目的は「教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図るとともに、学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる」と文科省も言っているように、互いに競わせることにはない。
道教委は「すべての教科で全国平均以上となるよう目標の実現に向けて取り組む」という方針を掲げているが、このことは、自らの教育施策の検証を学テの全国平均との比較という非常に一面的で、偏った学力観のみを根拠にし、子どもや教員ばかりでなく、家庭までも過度な点数競争に巻き込み、追い込み、学校という空間を息苦しい競争の場にゆがめていると言わざるを得ない。
2 ことしの全国学テでは、英語の4技能のうち「話す」で混乱を起こし、全国で502校が実施せず。混乱を招いた文科省の責任は重大である
中3で初めて実施した英語は、4技能のうち「聞く」「読む」「書く」について実施したが、「話す」については、学校のパソコンに仕様の制約があったため、準備が間に合わず実施しなかった中学校が全国で502校にも及んだ。
英語の「話す」調査は、昨年5月に全国136校を抽出し、予備調査を行っている。全日本教職員組合(=全教)が行ったアンケート調査によると、「スピーキングの答えが聞こえてしまい、まねして答える生徒がいた」「PC準備が放課後からしか開始できず、テスト後のデータ取り出しも4人で午後6時までかかった」など、公正に実施できない可能性が明らかになるとともに、準備やデータ処理のため大きな負担がかかることが報告されていた。
文科省は、昨年の予備調査から「話す」調査についての問題点を把握していたにもかかわらず、解決を図らないまま本年度実施を強行し、昨年同様の問題点が浮き彫りになった。英語の全国学テを準備不足のまま実施し、学校現場に混乱や過重負担を強いたことを文科省は認識していたはずで責任は重大である。
3 長時間過密労働で授業準備の時間がとれない教員のためにも、子どもたちの楽しい授業のためにも、学力テストの見直し・廃止を求める
文科省・道教委による学力テスト競争は年々苛烈になり、全道でチャレンジテストによる反復練習や過去問対策が常態化しており、生徒の知的好奇心を刺激する楽しい授業が、全国学テ対策に追われ、人間的かかわりを紡ぐ、生きいきとした学校生活にゆがみが生じている。
全教が平成30年に実施した学力テストアンケートでも「4割を超える学校で、事前の特別な指導を行っている。そのうち、7割を超える学校で、過去問題の指導を行っている」「独自採点・集計・分析など教職員に大きな負担となっている」など、全国学テや自治体独自学テが教育に大きなゆがみをもたらしていることが明らかになった。
このように、長時間過密労働で授業準備の時間さえ取れない教員のためにも、子どもたちの知的好奇心を刺激する楽しい授業のためにも全国学テの見直し・廃止を求める。
4 グローバル人材育成、競争主義、「学力テスト」の弊害を改め、子どもたちの豊かな成長・発達を保障する教育を大切に
文科省は、全国学テは学力や学習状況を把握・分析するための調査だと説明している。
しかし、全国学テは経済財政諮問会議(平成16年)で中山成彬文科大臣(当時)が示した競争意識かん養による学力向上という考えから始まっている。
政府は、グローバル人材を求める財界の根強い要請に従い、世界で一番企業が活躍しやすい国を目指し、競争主義社会を勝ち抜いた一部のエリートを中心とした社会、弱者冷遇の新自由主義的社会の固定化を目指し躍起になっている。こうした社会だからこそ学力テストは、学校と教員を点数偏重主義に一層駆り立てるシステムとなり、早期にエリートを選別するために機能していると言える。
こうした過度な競争主義によって、子どもたちの学ぶ意欲ばかりか個性や発達にまでゆがみが生じてきていることは、多々指摘されているとおりである。
国連子どもの権利委員会がことし、子どもの権利条約の実施状況についての日本政府の定期報告を審査し、総括所見を発表した。問題点として、「社会の競争的な性質によって子ども時代および発達を害されることなく子ども時代を享受できることを確保するための措置を取ること」「あまりにも競争的な制度を含むストレスフルな学校環境から子どもを解放することを目的とする措置を強化すること」など、以前よりも強く社会全体の競争化が指摘され、具体的な改善措置を求める勧告が出されている。
文科省・道教委には、子どもと教員、保護者に過度のストレスをかける政策から、子どもたちの豊かな成長・発達を保障する教育という憲法や子どもの権利条約の基本に立ち返って、その競争主義的な教育政策を根本的に転換することを求める。
(関係団体 2019-08-09付)
その他の記事( 関係団体)
胆振管内教頭会が夏季研究大会 人間性と創造性の育成を 講話や分科会で職能向上
【室蘭発】胆振管内教頭会(後藤敏彦会長)は6日、苫小牧市民会館で本年度夏季研究大会を開いた。会員、来賓合わせて約120人が参加。研究主題「豊かな人間性と創造性を育み未来を拓く学校教育~豊か...(2019-08-16) 全て読む
宗谷校長会が学校経営研究大会等 新しい社会切り拓く力育成 連携深め管内教育充実
【稚内発】宗谷校長会(大島朗会長)は7月下旬の2日間、稚内総合文化センターで管内学校経営研究大会および宗谷地区教育研究会・法制研究会を開いた。研修主題は「ふるさとを愛し、志を持って新しい社...(2019-08-16) 全て読む
中標津高生徒ら現場見学会参加 建設業の役割を理解 講話通じ新3Kに理解
【釧路発】中標津町内の高校生らが3日、中標津建設業協会(三宅正浩会長)主催の巨大酪農施設見学会に参加した。施工中の壮大な工事現場を見て回ったほか、講話を聴講するなどして、建設業が果たす役割...(2019-08-16) 全て読む
道相研が第48回研究札幌大会 真の連携目指す教育相談 150人参加 講演と研修講座
道学校教育相談研究会(=道相研、岡田知之会長)は5日、札幌サンプラザで第48回道学校教育相談研究大会札幌大会を開いた。約150人が参加し、大会主題「真の連携を目指す学校教育相談~互いを尊重...(2019-08-16) 全て読む
多様な学び支える筋道考察 旭川で道情緒障害教育研究大会
【旭川発】第46回道情緒障害教育研究会上川・旭川大会が1日から2日間、旭川市大雪クリスタルホールを主会場に開かれた。道情緒障害教育研究会(渡辺聡会長)主催、大会実行委員会(村田昌俊実行委員...(2019-08-09) 全て読む
社会生き抜く力を育成 函館で全国特別活動研究協議大会
【函館発】全国特別活動研究会(村上昭夫会長)は6日から2日間、函館アリーナで第63回全国特別活動研究協議大会北海道・函館大会兼第47回北海道特別活動研究会函館・渡島大会を開催した。全国各地...(2019-08-08) 全て読む
東日本建築教育研究会が総会等 製図コンクール実施へ 文科省・持田調査官講演も
東日本建築教育研究会は1日から2日間、ホテルライフォート札幌で第69回総会・研究協議会を開いた。北海道での開催は21年ぶり。総会では、第38回全国高校生建築製図コンクールの実施などを盛り込...(2019-08-08) 全て読む
十勝小・中校長会が教育研究大会 未来創り出す子を育成 3分科会で提言・研究協議
【帯広発】十勝小・中校長会(小澤一記会長)は1日、幕別町内の十勝教育研修センターで第51回教育研究大会を開いた。会員96人が参加。研究主題「“夢大陸とかち”から、新たな知を拓き、志高く未来...(2019-08-08) 全て読む
実社会とのかかわり意識 帯広で全国新聞教育研究大会
【帯広発】全国新聞教育研究協議会(菅野茂男会長)・道十勝新聞教育研究会(野上泰宏会長)は7月30日から2日間、帯広市内とかちプラザほかで第62回全国新聞教育研究大会・全国学校新聞指導者講習...(2019-08-08) 全て読む
道学組連合会第56回定期大会 事務主任未配置解消など 2019年度運動方針決定
道公立学校職員組合連合会(=道学組連合会、武田明会長)は3日、札幌市内の北農健保会館で第56回定期大会を開いた。各種手当の改善、弾力的な定数改善、事務主任の未配置や事務職員の欠員の解消など...(2019-08-07) 全て読む