札幌市教委研究開発事業 中の島中でがん教育公開授業 検診受診率の向上策は
(学校 2019-11-05付)

がん教育中の島中学校
生徒に自分ができることは何かを考えさせた

 札幌市教委は10月29日、中の島中学校(秀島起也校長)で研究開発事業「がん教育」にかかる公開授業を行った。同校の3年生を対象に、保健体育の授業内でがん検診受診率向上に向けた方策を考えさせるなど、検診の重要性を伝える授業を展開した。

 市教委は前年度から、がん教育の在り方に対する研究を開始。がんに関する正しい知識や命の大切さに対する理解を深化させ、予防や早期発見につながる生活習慣に資する指導について研究を進めている。

 公開授業は、同校の白川敦教諭が3年1組(生徒数35人)の保健体育「健康的な生活と疾病の予防」を指導。本時の目標を「がんの予防についての課題を理解し、習得した知識を活用して、がん検診受診率を高める方策を考え選択し、それらを伝え合うことができるようにする」とした。9時間扱いの9時間目。

 冒頭、白川教諭は既習事項を確認。がんは生活習慣のほか、感染・遺伝でも発症する可能性があることや早期発見で90%の患者が治る可能性があることを振り返り、早期発見・早期治療の重要性を再認識させた。

 がん検診の重要性を理解させるため、全国がん検診受診率のポスターを提示。白川教諭は「ポスターを見ると北海道は検診率が低いことが分かるね」とし、「なぜ低いのか、どうしてがん検診に行かないのか考えてみよう」と提案。生徒は「(検診が)痛いなどの恐怖心があるから」「検診に行く時間もなく、病気になるという危機感もないから」などと発表した。生徒たちの意見を踏まえた上で白川教諭は、がん検診受診率向上に向けた施策をグループで考えさせた。

 交流後、生徒は「検診に参加した人には抽選で旅行券をプレゼントする」「がん検診を義務化する法律をつくる」などと施策を発表。自由な発想を踏まえた上で、白川教諭は日本で実際に行われている取組を紹介した。

 中には、生徒たちが考えた施策に近いものがあることを確認させた上で「提出した施策案はどんな取組が多いか」と尋ねた。

 生徒は「国や社会が決めるものに近い」などと回答。白川教諭は「今、本当にみんなにできることは何だろう」と再び質問し、考えの矛盾点に気付かせることで、今の自分に本当にできることは何かを思考させた。

 「身の回りの家族や友達に学んだことを伝えることが今の自分にできること」と発表した生徒の意見を取り上げ、授業のまとめとして他者にがん検診の重要性を伝えるにはどのような声かけをすればよいのかワークシートに記入させた。

 白川教諭は「例え今は健康でも、細菌や遺伝でがんになる恐れもある。身の回りの人が心配するから検診に行ってほしい」と記入した生徒の意見を紹介。既習事項を活用し、根拠に基づいて他者にがん検診の重要性を伝えることが大切であることを認識させた。

 授業公開後は研究協議。「既習の積み重ねの成果が子どもたちの活発な授業態度に表れていた」「家族にがん予防で伝えたいことを実際に生徒が家族に伝えたことで、その後どのような動きにつながるか伺いたい」などの意見や質問が出た。

(学校 2019-11-05付)

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