【4種校長会長に聞く】 第1回 北海道小学校長会・大石幸志氏 実態伝え教育定数改善訴え
(関係団体 2020-01-16付)

道小・大石会長
道小学校校長会・大石幸志会長

―校長会としての新年の展望をお聞かせください。

 小学校教育においては、進行する教育改革への対応、いじめ・不登校問題をはじめとする児童の健全育成への取組など、解決すべき教育課題が山積しています。そのような中、4月から学習指導要領が全面実施されます。

 学習指導要領では、主体的・対話的で深い学びを視点とする授業改善、外国語科・外国語活動の授業時数の確保、プログラミング教育の指導の在り方、新たな観点における学習評価等についての工夫改善が求められています。

 そのため、各学校では、各教科等の研修やプログラミング教育の校内研究、指導計画や評価計画の作成など、全面実施に向けての準備を進めています。主体的・対話的で深い学びの具現が形式的な授業展開にならないように、そして、学力の確実な定着に結び付いていくようにしなければなりません。

 また、新たに教育課程を編成しても、それが個々の教室で実施されなければ「絵に描いた餅」になってしまいます。すべての教員がカリキュラム・マネジメントにかかわり、自校のカリキュラムを理解して主体的に教室で実施することで初めて、学校改善がなされ目指す子ども像に近づきます。学習指導要領の趣旨の理解と新年度の学校経営方針を、全教職員に浸透させることが重要なポイントです。

 また、今後の小学校教育に大きく影響するであろう、義務教育9年間を見通した児童生徒の発達の段階に応じた学級担任制と教科担任制の在り方についての議論が始まっています。

 報道によると、2022年度をめどに教科担任制を小学校5・6年生に導入すべきとの方針をまとめました。

 加配については、指導方法工夫改善定数で小学校のTTで活用することとしている6800人のうち、4000人を専科指導のための加配定数に発展的に見直し、来年度は2000人を振り替えます。

 国は、小学校高学年からの教科担任制の実施を、働き方改革を背景に本格的に導入しようとしています。道や札幌市では、3・4年生の35人以下学級の導入が計画されています。この点については、3・4年生の担任と専科指導教員の振り替えによって、小規模校に影響が出ないかということについて注視していかなくてはなりません。

 道小では、今後も各地区校長会と情報を共有し、現場の声と実態を行政側に伝え、より実効性のある加配措置の実現を目指していきたいと考えています。

―校長会の抱える課題と対策をお願いします。

 1つ目は、教員の定数改善についてです。

 学校における働き方改革は、各学校も創意工夫しながら取り組んでいますが、教員の過度な長時間勤務を改善し、子どもと向き合う時間を確保する点で、いまだ十分とは言えません。給特法の一部改正により1年単位の変形労働時間制の適用が可能となってきますが、業務量が同じでは、人材不足等の中で長時間勤務の改善に直接結び付くわけではありません。

 小学校教育の質を維持し、将来を担う子どもたちの教育を推進するためには、教員定数の改善は不可欠です。

 道小は昨年12月12日、2020年度の予算要望活動として、全連小の役員と私を含めた全国の常任理事が衆議院議員会館および参議院議員会館に出向き、小学校教育の充実・改善に関する要望書を提出してきました。

 「小学校教育の質を維持し、わが国の将来を担う子どもたちの教育を推進するためには、教員定数の改善は不可欠」と訴え、人的・物的措置の一層の充実と教育諸条件の整備に向けて要望しています。

 今後も、全連小との連携を深め、教育現場の実態について行政側に伝えながら、教員定数の改善について訴え続けていくことが重要であると考えます。

 2つ目は、教育条件における地域間格差の課題です。

 平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査によると、北海道において特に深刻な状況は、統合型校務支援システムの整備状況です。

 100%整備されている市町村と全くされていないゼロの市町村に二極化しています。北海道の平均整備率は52・6%で、全国平均値の57・2%を下回っています。通知表を指導要録へ流し込んだり、情報の共有化や在校時間を把握したり、長時間勤務を縮減する上で重要なアイテムの一つです。

 6月に公布・施行された学校教育の情報化の推進に関する法律では、地方公共団体も計画を策定(努力義務)するとされていますが、各自治体が深く受け止めていないという実態があったり、地財措置をしていますが3人に1台配備という目標に比べ5・4人に1台にとどまっていたりと、自治体任せでは地域間格差の解消には至らない現状があります。2019年度の補正予算案が閣議決定され、小・中学校1人1台のパソコンを整備していくことが盛り込まれましたが、ICT環境における地域間格差が解消されるよう今後の要望活動等に、さらに反映していきたいと考えています。

 また、北海道の教員のICT活用指導力については、全国平均値69・7%を上回り74・8%となっています。

 学校では現段階でそろっている機材を使いこなし、子どもたちの意欲を高める授業を日常的に行っているエビデンスを積み上げることが大切です。

 3つ目は、働き方改革についてです。

 教員の超過勤務時間の上限を1ヵ月45時間以内、1年間で360時間以内とする指針が示され、学校における働き方改革「北海道アクション・プラン」も昨年の7月に改正されました。それに基づき各市町村教委では、ICT機器の整備、校務支援システムによる業務軽減、給食費の公会計化、客観的勤務時間管理、留守番電話の設置等の取組を推進するように促されています。また、各学校においては、働き方改革を主体的に推進し、勤務時間を意識するよう職員に意識改革を促進するよう求められています。

 学校における働き方改革に関する総合的な方策パッケージ工程表によると、ことしの4月までに校務支援システムや留守番電話の導入等の取組がなされ、2020年度までには給食費の公会計化を実施することになっています。工程表と現状を比べると、取組がなかなか思うようには進んでいません。

 また、学校では、教員不足のため、教員の未配置校の問題が生じており、各校に深刻な影響が出ています。特に、産休・育休・病休等の年度途中の人材確保に苦慮している状況です。欠員が生じた学校では、学校全体でその分の業務を負うことになり、教育活動の充実と働き方改革の推進の面で大きな影響が出ています。

 道小では、このような課題の改善に向けて、毎年春に要望書および提言書を道教委に提出しています。特に、北海道文教施策・予算策定に関する要望書については、各地区からいただいた要望をまとめ、次年度に向け、道中学校長会、道公立学校教頭会とともに、道教委に要望しています。7月末に行われる文教施策懇談会・各課懇談会にも活用されるものなので、すでに各地区への働きかけを行っているところです。

 働き方改革が前進するように、実態や調査結果をエビデンスとした要望をしていきたいと考えています。また、教員の未配置問題では、前年度の要望書で期限付教諭の確保等や退職教員の積極的活用をお願いしました。

 その結果、60歳を超えた退職者を時間講師として活用することが認識されるようになり、欠員に対する期限付教諭不足への対応策として、60歳を超えた退職者が、活用されるようになりました。

 4つ目は、組織の健全化についてです。

 企画研修委員会(旧組織の在り方検討委員会)では、道小の組織力の充実・向上を目指すための組織改革と学校数および会員数の減少による課題への対応について検討してきました。新年度は、会員数が1000人を下回る状況です。総支出が総収入を超過しないように、多面的に創意工夫を図っています。今後も現状を把握し、道小の大会、理事研修会や地区研など、道小の根幹となっている活動を維持しつつ、組織の健全化について検討し改善を図っていきます。

―新年度の重点的取組を伺います。

 ここ数年、「チーム北海道」として、道小の活動を進めてきました。ことしも、道中学校長会、道公立学校教頭会はもちろん、道教委や各市町村教委等の教育関係諸機関とも連携を図りながら、様々な教育課題の解決に向けて取り組んでいきたいと考えています。

 また、9月11、12日に第63回オホーツク・北見大会が開催されます。北見市での開催は20年ぶりとなります。新大会主題、新副主題のもとでの初めての大会です。実り多い大会となるよう、オホーツク管内校長会を中心に道小の会員全員の力を結集していきたいと思います。

 おおいし・こうじ

 昭和59年道教育大札幌分校卒。59年の斜里町立斜里中を振り出しに、60年滝上町立濁川小、63年札幌市立鴻城小、平成6年札幌市立太平小、12年札幌市立新琴似小、21年札幌市立藻岩小教頭、24年札幌市立石山小教頭、25年札幌市立苗穂小校長、30年から現職の札幌市立豊平小校長。

 昭和34年12月14日生まれ、60歳。斜里町出身。

(関係団体 2020-01-16付)

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