【4種校長会長に聞く】 第4回 北海道特別支援学校長会 木村浩紀氏 ICT活用し実効性ある連携
(関係団体 2020-01-21付)

新春インタビュー道特長・木村浩紀会長
北海道特別支援学校長会・木村浩紀会長

―校長会としての新年展望をお聞かせください。

 道特別支援学校長会では「連携」を大切にしたいと考えています。

 道総合教育大綱では、輝きつづける北海道を目指し、その先の道を切り拓く北海道人を育てるために、学校・高等教育機関・家庭・地域・行政・産業界・各種団体等、北海道が総力を挙げて育むことが掲げられています。

 また、道教育推進計画では、特別支援教育の充実の中で、「切れ目のない一貫した指導や支援が行われるよう、各学校間はもとより、学校と家庭、地域、関係機関等が連携して取り組む体制の整備を進める」としています。

 特別支援教育に関する基本方針では、特別支援教育の充実に関する方策、一貫した支援に関する方策の中で、早期からの教育相談体制の構築や市町村特別支援連携協議会の充実が掲げられ、教育局や特別支援教育センター、市町村教委、保健福祉等の関係機関との連携を重視しています。

 今までも連携は重要なキーワードとして、押さえられていましたが、求められているのは実効性のある連携です。広域な北海道の教育、とりわけ特別支援教育の充実・発展のためには、各地域での取組が重要です。

 例えば、人口の少ない町であれば、数人の人材を育てるだけで十分対応できるはずです。自分のまちの子どもを自分で育てることができるよう、そして、北海道の子どもを、総力を挙げて育むことができるよう、今まで以上に協力していきたいと思います。

 すでに、特別支援教育センターでは、市町村と連携した取組を行っていますが、本会としても、研究会や研修会を開催し、特別支援教育の理解にとどまらず、教育相談など具体的に活躍できる人材育成を、関係機関と連携して行いたいと考えています。

―校長会の抱える課題と対策をお願いします。

 現在、道内の特別支援学校は、分校等を含め73校です。4月に函館高等支援学校が開校するなど、盲、聾学校等を除き、全体の在籍数は増え続けています。

 複数教頭の配置などもあり、管理職の数も増えています。管理職の大幅交代期を迎え、特別支援学校において、管理職候補やミドルリーダーの育成にも力を入れなければなりません。

 現在、幼児児童生徒の授業や寄宿舎の行事、研究会や研修会など、様々な活動にICTを活用しています。特に道内盲学校が活用している遠隔TVシステムは、人材育成や専門性の向上にも期待ができます。効果的・効率的な方法で、教職員の負担軽減も考えながら、取り組んでいきたいと思います。

―新年度の重点的取組を伺います。

 まず、視覚障がい教育についてですが、全道の盲学校、視覚支援学校の4校が、本道の視覚障がい教育のセンターとして、それぞれが管轄する圏域において、弱視特別支援学級、通級指導教室、眼科医等、関係機関と連携して、その役割を担っています。

 学習指導では、幼児児童生徒一人ひとりの見え方や発達段階に応じた拡大や触察等の教材・教具の作成や工夫、ICT機器の活用による指導など教職員の専門性の向上が求められています。特にICTの活用では、遠隔TVシステムを利用して、授業や寄宿舎の舎友会活動、研究会や研修会、会議、PTA活動など、幅広く行っています。

 具体的には、英語や自立活動の授業、寄宿舎のクリスマス会やのど自慢大会、PTA活動では茶話会、研究会では道視覚障害教育研究大会函館大会や道視覚障がい教育専門性向上研修会、会議では、研究会等の評議員会や管理職等合同研修会など様々な活用をしています。

 授業など幼児児童生徒の活動はもとより、専門性の向上や諸会議の効率化等、教職員の働き方改革にも役立っています。今後も効果的・効率的な取組を展開したいと考えています。

 聴覚障がい教育では、全道の聾学校7校がそれぞれの地区において教育相談等を行い聴覚障がい教育のセンター的機能を担っています。ゼロ歳児からの聴覚障がい乳幼児の療育の在り方が全国的に注目されてきており、令和元年6月に厚生労働省および文部科学省が連携して「難聴児の早期支援に向けた保健・医療・福祉・教育の連携プロジェクト報告」が出されました。

 この報告によって、今後ますます聴覚障がい乳幼児の早期支援に向けた取組の促進が求められ、聾学校もその役割を担うことになります。北海道では、聴覚障がい乳幼児療育事業として聾学校の乳幼児相談室がゼロ歳児からの療育を担ってきました。

 また、平成30年から始まった保健福祉部の難聴児等支援事業によって、全道の聴覚障がい乳幼児への支援体制構築も進められています。

 この事業にも聾学校の乳幼児相談室が役割を担っています。幼児児童生徒の言語力・学力の向上については多様なコミュニケーション手段を基盤に据え、その上で幼稚園、小学校、中学校で行われている教育実践をできる限り取り入れ、子どもたち一人ひとりの力を効果的・効率的に育てています。

 そのため、毎年の道聴覚障害教育研究大会で授業研究や研究協議を行い、本道の聴覚障がい教育の発展、充実に努めています。

 知的障がい教育はここ数年来、新しい高等部の在り方について検討を重ね、令和2年度には、各圏域の職業学科高等部校に普通科が設置完了するとともに、新たな入学者選考システムによる選考検査が開始されます。

 新たな高等部は、障がいの程度により選択する高等部の在り方から、“学ぶ内容により選択する高等部”へと改変されることになり、受検生にとっても大きな変化となります。

 今後は、職業学科、普通科等、高等部教育の成果と課題について関係者で共有しながら、各学校・学科の教育活動の充実を図っていかなければなりません。新たな入学者選考システムについても、改善点や課題等、きめ細かな検証を行い、常に改善を図っていくことが必要となるでしょう。

 新しい学習指導要領が公示されていますが、今期学習指導要領では、学校が広く社会と協働して社会に開かれた教育課程を実現することを求めています。

 各校は、この理念達成を念頭に、将来の社会状況の予測をもとに学習指導要領を踏まえた教育課程の改善に取り組んでいます。主体的・対話的で深い学びの実現をテーマとした実践研究が各校で行われていますが、学習指導要領が求める授業改善の方向性やカリキュラム・マネジメントの重要性について研修や研究の充実が図られています。

 各校の教育研究をはじめ特色ある教育活動を進めるため、教育環境の整備も今後一層充実させていかなければならない課題です。

 教育環境面の課題としては、本年度から令和3年度に向け開設される新設校の教育環境の整備・充実が挙げられます。また、児童生徒の増加傾向に伴い狭あい化が進む学校では、教室不足の問題や、給食提供・スクールバス運行等にかかる問題など、様々な課題が深刻化しています。地域や学校のニーズに応じた、より良い教育環境の整備が喫緊の課題です。

 肢体不自由教育は、2つの研修会を核に学校力と教員個々の実践力の向上に努めています。

 道肢体不自由教育研究大会は、校内研究の成果や課題等をポスター発表や分科会協議を通じて学び合い、講演会は新学習指導要領に基づく教育課程改善・充実の視点や授業改善について理解を深めています。次年度は札幌市立豊成養護学校を会場に開催します。

 肢体不自由教育専門性向上セミナーは、障がいの重い子どもの実態把握と目標設定の仕方等、授業づくりや授業改善をテーマに講演と演習を行い、教科指導や摂食指導、教材・教具など、6分科会を設けて教員の実践的授業力の向上を目指しています。

 また、校長、副校長、教頭による合同研究では、今後の肢体不自由教育・病弱教育を展望し、本道の肢体不自由教育・病弱教育ビジョンの策定を行いました。今後の管理職の大幅交代期を迎えても、目指すべき方向をしっかりと見据えて取り組んでまいります。

 各校からの大会参加が難しくなっている肢体不自由養護学校体育大会は、民間の力も借りてICTによる遠隔システムを活用し本年度試行しました。次年度は参加校を増やし、中身も充実させて実施の予定です。高度な医療的ケア等に対応した実践については成果、課題を明らかにし、さらに深めてまいります。

 今後、医療的ケアを担うであろう学校看護師の裾野を広げるために、本年度、道央圏の学校を中心に看護師養成機関の看護実習の受入も行いました。次年度も継続する予定です。

 結びに幼児児童生徒の教育活動はもちろんですが、人材育成や専門性の向上を、ICTを活用しながら積極的に展開するとともに、広域な北海道の、さらに全国の特別支援教育の充実・発展のために、関係機関とより具体的な、実効性のある連携をして、取り組んでいきたいと思います。

きむら・ひろき

 昭和60年道教育大旭川分校卒業。平成24年函館盲校長、26年旭川盲校長、28年道立特別支援教育センター所長を経て、30年札幌視覚支援校長。

 昭和36年2月21日生まれ、58歳。小樽市出身。

(シリーズ終わり)

(関係団体 2020-01-21付)

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