【4種校長会長に聞く】 第2回 北海道中学校長会 新沼潔氏 重大な覚悟もち働き方改革(関係団体 2020-01-17付)
道中学校長会・新沼潔氏
―校長会としての新年展望をお聞かせください。
本年度は新しい組織体制となって2年目となり、定着の年でありました。これから、2月に開催される副会長研修会、専門部研修会、理事研修会をもって本年度の活動を締めくくることになります。
「覚悟をもち 新たな道へ進む 道中」というスローガンのもとで、「チーム道中」「オール北海道」の視点に立って活動を推進してまいりました。まず、本会の活動を熱心に支えていただいた全道の571人の会員の皆様に心より感謝を申し上げます。また、本会の活動に多大なご理解とご支援をいただいた関係機関、関係団体の皆様に厚くお礼を申し上げます。
さて、新年の展望ということですが、北海道中学校長会では文部科学省の中央教育審議会への諮問をうけて令和元年度の活動を、「覚悟をもち 新たな道へ進む 道中」というスローガンを掲げて進めてきたところです。
今、私たちは人生百年の時代を、さらに、第二の産業革命ともいわれるSociety5・0の社会を迎えようとしています。子どもたちにそんな大変革の時代を生きていくための基礎的な力を育んでいくためには、これからも私たち校長は重大な覚悟をもって取り組まなければならないと考えます。
まずは、全面実施を1年後に控えた新学習指導要領に関しては大きな課題であります。ことしは、各学校においては、特に総則を中心として、各教科でも研修に取り組まねばなりません。
すでに社会科では移行措置も始まり、「特別の教科 道徳」における考え、議論する道徳についても、具体的な実践を進めていく年となっております。
生徒だけでなく保護者や地域へも理解と協力を求めていく社会に開かれた教育課程の実現や、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善と授業力の向上、さらに、育成すべき資質・能力を培うことのできるカリキュラム・マネジメントの確立など、私たち校長がより強いリーダーシップを発揮しながら、次年度の全面実施をスムーズに行えるよう準備しなくてはなりません。
また、これまで本会が長い間、中心課題として取り組んできた学力の向上については、一定の成果がみられ、平均正答率はほぼ全国水準に近付いていますが、地区によってはまだまだ大きな課題が残っているところもあるようです。
体力の向上についても課題は残されています。これまで同様、各学校での学力・体力向上プランの一層の充実に努めなければならないと考えております。
このあと詳しくお話ししたいと思いますが、学校の働き方改革については、重大な覚悟をもって解決に向かわねばならない、まさに喫緊の課題と考えております。
―校長会の抱える課題と対策をお願いします。
まず、北海道の子どもたちは携帯、スマホ、ゲームなどのメディアに接する時間が全国トップクラスであり、家庭学習に取り組む時間が逆に全国を大きく下回っているとの結果が示されています。そのことが北海道の子どもたちの学力の定着に大きく影響しているものと思われます。
各学校においてはもちろん、メディアの危険性を学ぶ機会は設けています。また、各市町村においても教育委員会やPTA、校長会が連携して3つのルールなどの取組を進めています。さらに、道教委でも「どさんこアウトメディアプロジェクト」という取組を進めています。
これからは、メディアの危険性や弊害について学び、正しく付き合っていくことの大切さを特に保護者とともに考え、子どもたちにより良い生活習慣を身に付けさせねばならないと考えております。
道中では新しい時代を生き抜く子どもたちに確かな学力を身に付けさせていく教師の意識改革と子どもたちの教育環境整備に全力を尽くしていこうと考えています。
つぎに、働き方改革の推進について。
昨年諮問された「新しい時代の初等中等教育の在り方について」の冒頭、世界最高の水準にある日本の教育は教師の献身的な取組に支えられていることが明記されております。これからの新しい教育に真摯に取り組んでいくためには、学校の働き方改革を着実に実現していくことは必須であると考えます。
今、北海道では教員を目指す若者の減少が顕著となり、道教委の様々な取組にもかかわらず教員採用試験の受験者は減少しています。同時に、育児休業や病気休職に伴う期限付き教員の確保が非常に困難な状況になっています。北海道は過疎地に赴任することが多く、他都府県に比べても厳しい状況にあるともいえます。次年度に確実に教員を確保できるか大きな不安を抱えているところです。
また、中学校において働き方改革を進める上で部活動については避けて通れない大きな課題です。道教委は平成30年3月、北海道アクション・プランを出し、平成31年3月、令和元年7月の2回の改定を行い学校の働き方改革について、強力に進めていただいております。
現在、部活動については週2日(土日どちらかを含む)、年間104日、学校閉庁日9日以上を基準としています。さらにタイムカード等を活用した勤務時間の管理や時間外の留守番電話等の活用についても示されています。これらの基準をクリアすることは働き方改革を進める第一歩と考え、そこに向けた環境整備と教員の意識改革を着実に進めていこうと考えているところです。
―新年度の重点的取組を伺います。
中学校の重点の一つ、部活動の部分でもう少しお話させていただきます。
道教委の示した北海道アクション・プランでは時間外の勤務について月45時間以内としています。部活動の活動時間を平日2時間、土日3時間とすると月44時間となり、ほぼ一致することになります。現在、各学校ではその実現に向けて取組を進めているところです。
令和元年度については移行期間であることから試行錯誤が続いていますが、先の国会で文部科学省の公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドラインが指針として告示されることとなり、今後、拘束力をもつこととなりそうです。
今はまさに待ったなしといった状況です。このことについては各市町村や各学校によって多少の温度差があり、取組の進捗状況に差がある現状でありますが、道教委がこのことを重点として取り組んでいただいていることからも、道中としてもリーダーシップを発揮しなければならないと考えております。
部活動改革を進める上でポイントとなるのは、まず、指導に当たる先生方の意識改革にあると思われます。
さらに、各競技団体との関係においても意識改革が必要と考えます。これまでも、協会主催のリーグ戦が中体連終了後も含めて、年間を通じて各週末に継続して行われてきた例があります。
そして現在、新たに一部競技団体において中体連終了後の3年生を含めたリーグ戦を立ち上げ、2月まで継続的に計画し、スタートさせていると聞きます。
東京オリンピックの盛り上がりをチャンスととらえ、3年生の後半も継続して競技力の向上を目指したいとする競技団体の意図は理解できます。しかし、これは今、学校が進めようとしている働き方改革に完全に逆行するものといえます。現場の指導者である先生方にそのことについて話を聞くと「協会の方針だから仕方がない」「日本協会の指示だから」と答えが返ってきます。
学校は各競技団体の下部組織ではありません。我々はあくまでアクション・プランにのっとった形を貫かねばなりません。
同時に、受験を控えた3年生の参加を積極的に認めるわけにはいきません。学校は、毅然とした姿勢と態度を示していかねばなりません。
各競技団体は、競技力向上策に学校の先生方を巻き込まず、自前で行ってほしいと強く要望していきたいと考えます。
私たちはこれまで「教員はお金のことは言ってはいけない」とか「子どもたちのために時間を気にしてはいけない」「同僚に迷惑をかけるから年休はなるべく避けるべきだ」といった風土の中で生きてきました。部活動についても「苦手でも引き受けなくてはいけない」「やる以上、家族も時間も犠牲するのが素晴らしい」といった間違った認識を早急に変えていかねばならないと考えています。
部活動改革は今、中学校長に課せられた最大の課題の一つであるととらえ、道中としての取組を進めていきたいと思います。
結びになりますが、これからの時代を生き抜く子どもたちに質の高い教育を保障するために、これまで以上に道教委との良きパートナーシップが図れるように努めるとともに、全日中とも緊密に連携していきたいと思っています。
これからも、本年度のスローガンである「覚悟をもち 新たな道へ進む 道中」の思いを胸に活動を推進させていきたいと思います。
にいぬま・きよし
昭和59年道教育大函館分校卒業後、熊石町立熊石第二中に赴任。平成12年壮瞥町立壮瞥中教頭、15年伊達市立達南中教頭、18年伊達市立伊達中教頭、20年むかわ町立穂別中校長、23年壮瞥町立壮瞥中校長、27年から登別市立緑陽中校長。
昭和34年5月6日生まれ、60歳。室蘭市出身。
(関係団体 2020-01-17付)
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