評価の客観性高めて 全道代表高校長研で赤間局長(道・道教委 2020-02-14付)
赤間幸人局長
道教委が7日に道庁別館で開いた令和元年度第4回全道代表高校長研究協議会では、赤間幸人学校教育局長が「教育改革の方向性を踏まえた学校経営の推進~生徒の学びの質を飛躍的に高めること」と題して講話した。新学習指導要領の実施にかかわり、学校として育成を目指す資質・能力について、「学校運営協議会などを通じて地域と共有し、改善を図っていくことが大切」と呼びかけた。また、各学校で指導要録に観点別学習状況を記載する際、「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の評価の客観性を高めていく必要性を示した。講話の概要はつぎのとおり。
【新学習指導要領実施に向けての確認】
すでに、移行措置が始まっている中、新教育課程が始まるまでの2年間で、確認しておきたいことについてふれる。
各学校で明確にしている学校として育成を目指す資質・能力について。校内の目標とするだけでなく、地域の小・中学校の育成を目指す資質・能力との関連を図ったり、学校運営協議会などを通じて、地域と共有し、改善を図っていくことが大切である。
各教科・科目における資質・能力の3つの柱について。すでに移行措置の段階から、バランスよく育成することが求められており、特に、思考力・判断力・表現力等について、現行の各教科・科目と共通の内容には、新学習指導要領の内容に示された「思考力・判断力・表現力等」を読み込んで指導に当たることが望ましい。
その際、思考力・判断力・表現力等や学びに向かう力・人間性等を、知識・技能と切り離して指導するのではなく、関連付けながら一体的に育むよう、工夫を図ることが重要である。新学習指導要領の資質・能力は、単元の内容を理解する学びと、未来を切り拓く学びの2つの学びを同時に内蔵している仕組みであると言うことができる。
また、新教育課程で、観点別学習状況を指導要録に記載することとなる予定なので、各学校で、「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の評価の客観性を高めていくことが必要である。
新しい教科書については、昨年9月に示された検定基準に沿って検定作業が進められるが、ことし採択される中学校の教科書が、高校にも参考となる。
【主体的・対話的で深い学びの実現】
人工知能(AI)等の先端技術が飛躍的に進化する中、学校においてこそ、対話や協働、学び合いなどを通じて人間としての強みを発揮することが求められており、これからの教師には、高い専門性とともに、集団としての学びの質を高める力量が求められている。
主体的・対話的で深い学びの実現に向けては、一斉学習・個人学習と対話的学びのバランスに配慮することが大切である。
これまでわが国では、一斉学習・個人学習の比率が高い傾向にあったが、今後は、どのような資質・能力を育むかを意識化して、積極的に対話的学びを取り入れることが大切である。
今後、授業改善を通して、学びの質を高めていくことが求められるが、授業改善は、個々の教員の努力だけでなく、学校の教員全員の協働的・組織的な取組にすることが大切であり、そのためには校長のリーダーシップが重要な役割を果たすと考える。
学校の組織的な取組の好事例として、新ひだか町立静内第三中学校の実践を紹介する。
静内第三中では、質の高い学びづくりの3要素として「探究的な学び」「協同的な学び」「高いレベルの学び」を掲げ、授業づくりにおいて平等と安心を与え、学びの中での疎外感をなくして、生徒一人ひとりの学びを保障することを目指しており、高いレベルの学びに向けては、教員全員が教科の本質を探究することを基本としている。
校内研修では、録画した授業を全員で見ながら、生徒の学びの事実を中心に話し合いを進めるなど、全教員の協働的な取組が進められており、それを支える校長のリーダーシップが大きいと考えている。この取組が始まって4年ほどになるが、3年目のころから、学力が飛躍的に伸びてきている。何より、生徒が明るくなり、授業を楽しみにするようになったことが大きな変化である、と校長は言っている。ちなみに、職員室も明るくなったそうである。
OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2018では、読解力の順位が下がったことが報道等の話題となったが、課題と指摘されているのは、コンピューター画面上のテキストから情報を探し出す問題、テキストの質と信ぴょう性を評価する問題、矛盾を見つけて対処する問題などだった。
さらに、自分の考えを他者に伝わるように根拠を示して説明することが引き続きの課題と指摘されている。こうした読解力を高めるためにも、主体的・対話的で深い学びの実践が重要であると考える。
【学習指導と生徒指導】
新学習指導要領では「学習指導と関連付けながら、生徒指導の充実を図ること」と示されたが、学校教育の中心である授業は、単に知識を伝達するものではなく、生徒と教師、生徒同士のかかわり合いの中で学習する場であり、教師は、生徒一人ひとりを的確に把握して、教科指導と生徒指導とを密接に関連付けながら指導することが求められる。
また、現在、わが国の最も重要な生徒指導上の課題は自殺予防教育の充実であり、平成29年に自殺総合対策大綱が閣議決定されている。
学校では、「自殺予防」という表現を用いなくとも、日ごろから安心した人間関係を築くことを重視し、一人ひとりが認められる学校づくり・教室づくりを進めたり、困ったときに誰にどう助けを求めればよいかの実践的な方法を身に付けたりする教育を推進することが求められている。特に、コミュニケーション能力とストレス対処スキルを高める指導を進めることが重要である。
【地域との連携】
道教委としては、本道のどの地域においても、質の高い教育を提供することが大切であり、また、地域の発展を支える人材を育成することが求められていると考えている。
国においても、昨年12月、第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略が閣議決定され、高校において、地域課題の解決等を通じた探究的な学びを充実させることや、高校生一人ひとりが地域課題を見いだすことができるよう高校と地域との連携・協働でコンソーシアムを構築すること、高校と地域とをつなぐコーディネーターを配置・活用することなどが示された。
道教委では、平成30年度から3年間の計画で高校OPENプロジェクトを実施しているが、本プロジェクトで重要な役割を果たしている地域みらい連携会議は、国が示す地域との連携を進めるコンソーシアムの一つの形であると考えており、今後、本プロジェクトの研究指定校以外の高校も地域みらい連携会議のような連携組織を構築し、総合的な探究の時間等において、地域課題の解決等に取り組むことが望まれる。
【高大接続改革・高校入学者選抜改善】
高大接続改革については、大学入学共通テストの実施に向け、昨年末から各学校で予定外の対応が求められ、今後も未確定要素もあるが、来年度の大学入学者選抜に向けては、調査書の見直しが進められている。各学校においては、生徒の多様な学習や活動の状況等について、大学の検討状況を視野に入れながら、客観性をもった記載内容となるよう、十分検討することが求められる。
また、新学習指導要領の趣旨を踏まえ、道立高校入学者選抜の改善を行うこととし、すでに公表しているが、インフルエンザ罹患者等への追検査は令和3年度入学者選抜から実施する。
なお、本年度の入学者選抜における新型コロナウイルス感染症への対応については、通知や事務連絡によって連絡するので、適切に対応願う。
【学校教育の情報化推進】
現在、国では、文部科学大臣メッセージで、「これからの学校教育は劇的に変わる」と表現しているGIGAスクール構想が進められ、先月、約2300億円の本年度補正予算が成立し、今後、小・中学校では、1人1台コンピューターを使った授業が進められることになる。
道教委としても、本年度補正予算を編成し、道立高校における校内LAN整備を進める予定。今後、普通教室において、ICTを活用した学習活動を展開することができるようになる予定なので、各学校において、整備状況に応じ、ICTを積極的に活用していただきたい。
ただし、高校における1人1台コンピューターについて、国は予算化していないため、道教委としては、今後、その在り方の検討が必要であり、さらに、ICTを活用した学習活動については、道教委としても先進的な研究開発を進めていくことが必要であると考えており、校長協会や教職員と緊密に連携しながら、検討を進めていくこととしている。
また、来年度から、遠隔授業の配信機能の集中化を進めることとしており、校長協会とも連携して、具体的な方策について検討を進めることとしている。
ICTを活用することによって、生徒の学びの質を高めていくこと、特に、公正に個別最適化した学びの推進に資するよう取り組んでいくことが大切であると考える。
【国の教育改革の動向】
国では、教育再生実行会議第11次提言が出され、文科大臣から中央教育審議会に「新しい時代の初等中等教育の在り方について」諮問され、現在、様々な検討が進められている。
高校教育においても、普通科改革など学科の在り方、文系・理系の類型にかかわらず様々な科目をバランスよく学ぶこと、STEAM教育(科学、技術、ものづくり、芸術、数学を重視する教育)の推進、定時制・通信制課程の在り方など、多岐にわたる検討が進められている。
道教委としては、今後の検討状況を注視しながら情報を収集し、学校に情報提供するとともに、的確な対応を進めていくことができるよう努めていく。
(道・道教委 2020-02-14付)
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