鹿追創生アカデミア構想 活動魅力化など4事業 人材育成等推進へ鹿追高
(学校 2020-03-09付)

 【帯広発】鹿追高校(俵谷俊彦校長)は、生徒たちを持続可能な社会づくりの主体者へと育てる「鹿追創生アカデミア」構想を開始する。総合的な探究の時間として、11分野からなる「鹿追創生プロジェクト」、部活動魅力化を果たす「岡田メソッド」など4事業で構成。道立高校長の庁内公募で4月以降も引き続き同校校長を務めることが内定した俵谷校長が5年の任期で取組を進める予定で、町発展に資する人材育成と地域への回帰を促した地方創生を推進する。

 道教委は1月下旬、令和2年度道立高校長の庁内公募内定者を発表。鹿追高には現校長の俵谷校長が内定し、改革のモデル校として高校の魅力化を進める予定となっている。

 鹿追町はこれまで、小中高一貫教育を推進。本年度は文部科学省の教育課程特例校制度の指定を受け、環境教育や英語教育を重点とした教育を進めている。

 町の支援のもと、鹿追高では1年生全員がカナダ短期留学派遣事業に参加。多様な背景をもつ人々と共生する学びを礎に、新年度から高校を地方創生の核とする「鹿追創生アカデミア」構想をスタートする。

 具体的には、総合的な探究の学習「鹿追創生プロジェクト」、部活動魅力化を目指す「NECメソッドプラットフォーム実証実験“岡田メソッド”」、「鹿追アスレティックデパートメント構想」「鹿高デジタル進路サポート」など、複数の事業展開を計画。

 子どもたちに新しい価値を創造する経験を与えるとともに、地域の大人たちに刺激や新しい学びを提供。主体的にまちづくりにかかわる人材を地域に増やすことで、鹿追町を創生し、町民の生活の質の向上を目指す。

 「鹿追創生アカデミア」構想の各事業詳細はつぎのとおり。

▼総合的な探究の学習「鹿追創生プロジェクト」

 新学習指導要領の実施によって必修化する総合的な探究の時間のテーマには、地域振興の可能性を探る鹿追創生プロジェクトを設定する。

 「観光」「看護・医療」「農業」「スポーツ」「行政」「起業」などからなる11の探究分野を設定。地域と連携したキャリア教育を進めるため、地域内外のプロフェッショナル人材によるボランティア集団「鹿追創生プロボノ・メンターズ」を組織し、探究活動をサポートする。

 内容として、地域振興の可能性を調査し、分析した上で、仮説を立てるプロジェクト・マネジメントの方式をとる。探究・行動の段階では、仮説に対して地域振興のアイデアを企画・立案し、行動化を促し、新しい価値の創造に挑戦させる。

 ねらいとして、探究活動で得た知識から国内国公立大学、海外の大学や専門学校への進学から町内外企業・団体への就職を促し、分野への知識を深めさせた上で鹿追町へ人材の還流を図り、地域の持続可能な社会づくりの主体者として育成する。

▼鹿高デジタル進路サポート

 進学塾のない山間地域や離島における手厚い進路支援のロールモデルとなる鹿高デジタル進学サポート体制の構築を目指す。

 鹿追創成プロジェクトの探究したテーマを「さらに知りたい、極めたい」「自分のキャリアにしたい」という生徒の自己実現の想いへと変容させ、進路サポートをWi―FiやICT機器を活用して強化する鹿高デジタル進学サポート体制を構築する。

 内容として、民間のデジタル教材や「Japan e―portfolio」の活用、生徒の自己実現を支援する校内体制を整備する。

 校内体制には従来教員が勤務時間外で提供していた進学特別講習に代わるサポートとして、個々の生徒の発達段階や興味・関心に応じたデジタルコンテンツを紹介し、長期的な見通しをもって継続的かつ効果的な活用を促す指導体制を目指す。

 また、学生が生徒の個別指導助言を行う「鹿高Wi―Fiニーネー」を公募し、大学生等によるビデオ会議システムを活用したメンタリングの体制を構築する。

 これらを通して進学塾がないという地域的ハンデを克服し、地域と連携したキャリア教育を行い、生徒の探究活動からキャリア実現への道を保証する。

▼NECメソッドプラットフォーム実証実験「岡田メソッド」

 日本電気㈱(NEC)東京オリンピック・パラリンピック推進本部が現在開発しているメソッドプラットフォームの実証実験に共同で取り組む。特に、FC今治オーナーで元サッカー日本代表監督の岡田武史氏の理論に基づくコーチング方法「岡田メソッド」をデジタルコンテンツ化し、サッカー部指導者に提供。生徒の発達段階やコンディションに応じたトレーニングを生徒に提供するシステムを構築する。

 これによって、限られた時間の中での適切で効率的なトレーニングを生み出し、部活動生徒のけが防止や拘束時間の削減および教員の働き方改革に寄与することを目的とする。

▼鹿追アスレティックデパートメント構想

 学校単位のアスリート育成から地域主導でのアスリート育成を目指す鹿追アスレチック・デパートメント(以降、鹿追AD)構想の立案・運営協力を行う。

 現在、鹿追町のスポーツ指導は各学校種で、それぞれ別々のやり方で、児童生徒を指導している現状にあり、ライセンスなどで裏付けされた指導法や発達段階に応じながら適切に町ぐるみで指導する環境が整っていない。

 また、高校においては専門外の部活動顧問が主に指導している現状にあることから、部活動顧問の超過勤務が突出しているなど、多くの課題がある。

 そこで町の鹿追ADによって、総合型地域スポーツクラブの立案から設立・運営に至るまで、全面的に協力し、課題の解決を図る。

 高校をはじめとした町内小・中学校の児童生徒が、放課後や休日に鹿追町内の一つのスポーツ施設に集合し、専門の指導者からの発達段階に応じた適切かつ効果的な指導のもと、児童生徒が複数の競技を楽しみながら、けがなく、アスリートとしての成長を促す。

 将来的には、指導者は各競技の指導ライセンスをもった上で鹿追ADから報酬を得る形で指導に当たるという持続可能なスポーツ振興体制をつくり、学校の教職員は基本的に部活動の勤務時間外の勤務から解放され、現在、日本が進める働き方改革のロールモデルを目指す。

(学校 2020-03-09付)

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