リポート 若手の柔軟な発想生かす 根室局 再開後を見据えて(コロナウイルス関連 2020-05-20付)
【釧路発】教育局に今、何ができるのか―。新型コロナウイルス感染症によって教育を取り巻く環境が大きく変化する中、根室教育局が独自の取組を進めている。若手職員の柔軟な発想を生かし、ソーシャルディスタンシング啓発動画の配信、ビデオ会議システムZoomの活用実験を実施。学校再開後を見据え、様々な取組に挑戦している。
◆シュジーズ結成
学校の臨時休業がたびたび延長される中、根室局の吉光寺勝己社会教育指導班主査は焦りを感じていた。「例年ならPTAからの講演などの依頼が舞い込む時期。それが一切ない」。学校と子どもたちのつながりだけではなく、保護者同士がつながる機会が失われていることを実感した。
教育局として何かできないかと頭を悩ませていたが、「若手職員の柔軟な発想を生かせないだろうか」との思いに至る。局内3課の若手職員に声をかけると、全員が似たような思いを胸に秘めていた。
幹部職員のあと押しもあり、局内の若手職員10人全員によるプロジェクトチームが立ち上がった。吉光寺指導班主査はファシリテーターに。チーム名は「主事」をもじって「シュジーズ」。
4月22日に初会合を開いて、「ソーシャルディスタンシングのムーブメントを起こそう」という案が挙がった。その具体化に向けて、啓発動画配信と啓発ポスター制作が決定した。
ただちに内容を話し合い、23、24日の2日間で撮影。メンバー7人が手話を使いながら、適度な距離を取る大切さを訴えた75秒の作品に仕上げた。動画は局のホームページで公開中。
ポスターの制作も進んでいる。
メンバーの一人、青山桃子主事は「人とのつながりが途絶えてはいけない、との思いで取り組んでいる」と。吉光寺指導班主査は「“まずはやってみよう”と行動してくれた。若い職員が成長する場にもなっている」と目を細める。
◆実験成果が全道に
道教委は4月30日、テレビ会議システムを利用して全道市町村教委教育長会議を開催。新型コロナウイルス対応について協議した。
会議で根室局は、ある実験を実施。テレビ会議システムの映像を映したスクリーンを撮影し、Zoomで管内市町教委に配信した。
別海町教委事務室のモニターには、テレビ会議システムの分割画面が映った。各市町教委も、できる範囲で映像を視聴した。
きっかけは、井上規之次長と若手職員とのやり取り。
ことし4月に着任した井上次長は、管内の広さを実感。根室市と羅臼町を往復するのに5時間ほどかかることに驚いた。「市町教委とダイレクトにやり取りする方法はないか」と考えていたところ、ある若手職員が「Zoomならできる」と教えてくれた。
教育長会議は、Zoomを使う絶好のチャンスに。井上次長は、道教委教育政策課、知事部局の情報政策課と連携して、実験をお膳立て。吉光寺指導班主査は、市町教委との調整、機材の準備などを進め、当日を迎えた。
約1時間の会議を終え、成果と課題がみえてきた。別海町教委の根本渉指導参事は「画像ははっきり映ったが、音声は聞き取れなかった」と話す。プロジェクターの内蔵スピーカーから出る音を拾って配信していたからと考えられた。
ただ、映像を受け取った教委からは「情報をタイムラグなく把握できる」「場の空気感が伝わってくる」との声が上がる。羅臼町教委の和田宏一教育長も「ICTの展開を加速化させていく中で重要な一歩」と評価する。
この実験の結果は、報告書にまとめて本庁と共有。音声に関してはZoomを直接つなげば問題ないことを伝えた。
報告を受けた本庁は、有効性をあらためて認識し、各振興局にタブレット端末1台とWi―Fiルーターを新たに配布。セキュリティの強固な道庁のネットワークを介さないため、関係機関とビデオ会議を行うハードルは低くなる。
井上次長は「実験が全道的な動きにつながった」と喜ぶ。「今後もICTをうまく活用し、学力向上、情報共有を進めたい」。
◆まず、やってみる
実験後、根室局では、幹部職員がZoomを体験した。松田俊也局長は「画像も音声も思っていたよりいい。ICTは、まずはやってみることだと思った」と実感を込める。
新型コロナウイルスというピンチをチャンスに変える取組が続く。
(コロナウイルス関連 2020-05-20付)
その他の記事( コロナウイルス関連)
小5算数等で解説動画 臨休中の学習課題 札幌市教委
札幌市教委は19日、学習課題のサポート動画をホームページで公開した。小学5年生の算数「体積」と中学1、2、3年生の理科、中学3年生の数学を公開。学習課題の解決に向けて、算数と数学では段階を...(2020-05-21) 全て読む
富良野高 1年生対象に遠隔講習 普段の授業に近い形で 希望生徒は登校し受講
【旭川発】富良野高校(髙橋宏明校長)は、新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う臨時休業中の1年生136人を対象に、国語、数学、英語の3教科でオンライン会議システム「Zoom」を活用した遠隔講...(2020-05-21) 全て読む
小中高生対象にオンライン教室 20~22日にうらほろスタイルサポート
【帯広発】浦幌町の小中一貫コミュニティ・スクールを支援するうらほろスタイルサポートは、20日から22日にオンライン教室を開催する。本年度2回目の開催。町内在住または出身の小中高生が対象。大...(2020-05-21) 全て読む
豊頃中3年 オンライン授業 生徒の学びを保障 荒天時の臨休にも活用へ
【帯広発】豊頃町立豊頃中学校(服部和樹校長)は18日から、長期化する臨時休業を受けた生徒の学びを保障する取組として、3年生を対象にオンライン学習を展開している。同校のICT活用促進委員会と...(2020-05-21) 全て読む
新型コロナ対応 各地で取組加速 学習・進路など個人面談も 札幌北陵高 オンライン積極活用
札幌北陵高校(渋川誠人校長)は、スクールネットを臨時的に運用したビデオ会議アプリを活用し、同時双方向で生徒の学習を支援している。18日に実施した個人面談では、対面と同様の効果を実感する教諭...(2020-05-20) 全て読む
別海高 準備作業加速 動画配信による遠隔授業
【釧路発】別海高校(大関俊郎校長)は、動画配信による遠隔授業の実施を計画している。町内IT企業の協力を得て動画制作環境を整え、YouTubeで授業動画を配信する計画。臨時休業期間中に配信で...(2020-05-20) 全て読む
【解説】全連小 9月入学で意見書
全国連合小学校長会(喜名朝博会長)は14日、9月入学・始業にかかわる意見書を文部科学省に提出した。導入を検討する際の課題として、社会全体のコンセンサスの必要性など5事項を整理。十分に検討す...(2020-05-20) 全て読む
岩見沢市清園中 臨休中の学習 計画表で生徒自ら評価 学校全体で足並みそろえ
【岩見沢発】岩見沢市立清園中学校(小関文雄校長)は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う臨時休業中、学習計画表を配布して家庭学習の充実を図っている。1週間の分散登校日や学習計画のほか、タイム...(2020-05-20) 全て読む
岩見沢農業高と空知建設業協会 オンラインで連携授業 自宅の生徒と顔合わせ
【岩見沢発】岩見沢農業高校(鎌田一宏校長)は14日、空知建設業協会との1回目の連携授業を開いた。新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、Web会議アプリを活用してオンラインで実施。担当教諭...(2020-05-20) 全て読む
札幌市教委 全校にZoom導入 学習・健康状態を確認 29日まで 1校2回程度
札幌市教委は、各校で子どもの学習状況や健康状態の確認ができるよう、オンライン会議システムZoomを導入する。市立幼稚園、小・中・高校、特別支援学校、中等教育学校が対象。システムの活用期間は...(2020-05-20) 全て読む