釧路管内初の義務教育学校 白糠町庶路学園 1~6年生で50分授業 多くの成果 教員の資質向上
(学校 2020-07-21付)

表
白糠町庶路学園 教科担任制の実施状況(クリックすると拡大表示されます)

 【釧路発】釧路管内初の義務教育学校、白糠町立庶路学園(福原克洋校長)が開校3年目を迎えた。初年度から「レインボープラン」と称する7つの特色ある取組を進めているほか、2年目、3年目に前年度の課題を改善する様々な施策を導入。1~6年生の50分授業導入や、朝打廃止および夕打導入などを進めたことで多くの成果を挙げ、福原校長は「義務教育学校での経験が教員の資質向上につながっている」と話す。ここでは、同校の特色と、これまでの成果と課題などを紹介する。

◆開校1年目

【庶路学園の特色】

 「レインボープラン」と称する7つの特色ある取組を開校初年度となる平成30年度から行っている。

▼4―3―2制

 小学校6年間(前期課程)と中学校3年間(後期課程)の各学校期で取り組む教育活動を踏まえつつ、義務教育9年間を、初等部・中等部・高等部に区分。それぞれ4年間、3年間、2年間の学びの区分で小中一貫教育を行っている。

▽初等部1~4年生=第1の自立「基礎・基本の徹底」―学校生活への適応、学習規律の定着、基本的生活習慣の確立

▽中等部5~7年生=第2の自立「小から中への円滑な接続」―リーダー性の伸長、人間関係の醸成、自主的行動の拡張

▽高等部8~9年生=第3の自立「個性の伸長と進路指導の充実」―自治能力の伸長、自己抑制と主体的行動の伸長、キャリア教育の充実

▼白糠に誇りをもたせる「ふるさと教育」の推進

 白糠町の教育の基軸であるふるさと教育を推進するため、町内の様々な素材を教材に取り上げるとともに、地域の人材を有効活用しながら学習を進め、地域に誇りや愛着心、帰属感をもった児童生徒を育てる。

▼9年間の成長を見据えた一貫性のある指導

 学びのスタンダード、生活のスタンダードなどをもとに9年間、全教職員が共同歩調で一貫した指導を行い、実効性ある指導を行う。

▼保護者・地域とともにある学校づくり

 学校と保護者や地域の方々がともに知恵を出し合う学校運営協議会の設置を通して、協働しながら子どもたちの豊かな成長を支え、保護者・地域とともにある学校づくり(コミュニティ・スクール)を進める。

▼きめ細かく専門的な教科指導の充実

 初等部・中等部にも教科担任制を導入。年度ごとの教員の入れ替わりによって多少の修正はあるものの、原則的に図表どおりに授業を実施している。

▼世界での活躍を目指す外国語教育・情報教育の充実

 小学校1年生段階から英語・中国語を学ぶ「ECタイム」を実施。世界に通用するコミュニケーション能力の育成を目指す。

 子どもたちの理解を促すためにICT機器を取り入れた指導を積極的に行うとともに、情報活用能力の育成を図る。

 プログラミング教育を各教科、総合的な学習の時間を中心に実施し、情報教育を積極的に推進する。

▼異年齢集団との意図的・計画的な交流

 7歳から15歳までの児童生徒が1つの空間で学ぶことに加え、校舎には認定こども園が併設されていることから、園児との交流やブロック間交流、学年間交流など、異年齢集団で学ぶ場を意図的・計画的に設定し、体験を通してコミュニケーション能力を育成する。また、こども園教職員との連携によって作成したスタートカリキュラム、アプローチカリキュラムの実践を行う。

【成果】

▽教職員の資質向上

▽児童生徒の意識・学力向上

▽幼小連携

【課題】

▽4―3―2制を生かした教育活動

▽コミュニティ・スクールの活性化

▽学校としての評価の統一

◆開校2年目

【改善点】

▼4―3―2制を生かした教育活動

 日常の授業はもちろん、児童生徒会活動、清掃活動、運動会や学園祭といった学校行事など、様々な教育活動を通じて、意図的・計画的に児童生徒のリーダー性を育む工夫を行った。

 義務教育学校の課題とも言える児童生徒の固定化された人間関係の打破を図るため、各ブロック、各ブロックの区切りとなる学年(4・7・9年生)について、ブロック集会「飛翔の集会」の企画・運営を通して、目指す児童生徒像の検証を行う。

▼教科部会による研修の充実

 教員数が増えたことによって、前期(1~6年)・後期(7~9年)課程発令の別なく、複数人による教科部会が成立。小中経験者相互が授業改善を図るとともに、系統性を見据えながら研修を推進できた。

▼日課表の改定による乗り入れ授業の円滑化

 教員の小中相互の乗り入れ授業の円滑化を図るため、日課表を改定。前期課程、後期課程とも、50分単位の授業とした。前期課程の授業におけるまとめ、振り返り時間の確保も可能となった。

▼校務支援システムの本格運用による情報共有

 開校初年度より校務支援システムを活用した出席簿、指導要録、通知表、健康診断票等の作成を通して、業務の効率化を図っていたが、さらに掲示板の活用による情報の共有化、打ち合わせ時間の短縮化を図った。

 また、出退勤記録による客観的な勤務時間の記録を通して、超勤時間や働き方への意識が高まった。

【課題】

▽ブロック間の連携

▽9年間を見通した生活科・総合的な学習の時間の見直し

▽組織的な人材育成

◆開校3年目

【改善点】

▼夕打の導入

 校務支援システムによる情報共有を図ったことにより、前年度まで毎日行っていた朝打を原則廃止した。児童生徒の言語活用能力の基礎となる「読む力」を育むために朝読書の時間を確保した。

 また、毎週月曜日に夕打を導入。休憩時間の個別付与によって、最大限50分間を確保している。夕打によって児童生徒の情報交流を密に行うことが可能となり、各種特別委員会(サポート委員会、生徒指導委員会等)の定例化、メンター研修の実施も可能となった。

▼コミュニティ・スクールを核とする地域と連携した防災宿泊学習の実施

 10月30・31日に7年生対象の防災宿泊学習を実施する。初年度の課題となっていたコミュニティ・スクールの活性化に向けて、各関係機関、学校運営協議会と協働で実施するほか、地域の課題ともなっている災害時の防災拠点としての在り方を学習する。

 5・6・8・9年生で実施している宿泊行事の系統性を確保することもねらいの一つ。

▼ふるさとキャリア教育の推進

 町の教育基軸であるふるさと教育の推進はもとより、9年間の生活科、総合的な学習の時間のカリキュラムを見直す中で、社会を生き抜く力を育てるためのキャリア教育の要素を加味したふるさとキャリア教育を意識し、教育課程の編成、実践を図る。

▼プログラミング教育推進委員会(特別委員会)を核とした、ICTを活用した教育の推進

 開校2年目に設置したプログラミング教育推進委員会を核として、ウェブ会議システムZoomを活用したリモート学習や、チャットツールTeamsの授業での試行的活用を進めている。

 また、1人1台タブレット端末導入に向けた授業の充実、業務効率化を図るためのICT機器活用に向けた研修を推進する。

▼部活動にかかる活動方針の順守および外部指導者活用による負担軽減

 超勤時間の縮減に向けて、部活動における複数顧問の配置、外部指導者の活用による顧問の負担軽減、部活動の少年団化に向けての体制づくりを行う。

(学校 2020-07-21付)

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