札幌市緑丘小 コロナ禍でも学びを推進 校内研 分散し体育館で 授業を見て学ぶ実践重ねる(札幌市 2020-11-04付)
授業協力者などを招いて研究の事前説明も実施
新型コロナウイルスの影響によって市内各校で教育課程の見直しが進む中、札幌市立緑丘小学校(村元秀之校長)は児童の学びを止めない教育活動に力を入れている。研究部の教職員を中心に一丸となって授業実践を推進。感染症対策を踏まえ、助言者を招き、体育館で校内研究を行っている。9月上旬から12月上旬にかけて11教科における校内研究会を開催。来年度は第22回教育実践発表会を7、9、12月に開く。村元校長は「授業を見て意見を交わすことが授業改善につながる」と話すなど感染症対策を徹底した上で研究を推進していく考えだ。
新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う4月以降の臨時休業によって、市内各校は、教育課程の再編を余儀なくされた。各種行事の見直しなどを図り、教育実践発表会を中止としている学校も少なくない。
53人と市内最多の教職員数を抱える同校は、コロナ禍においても児童と教職員の学びを継続。前年度の教育実践研究会の課題をもとに、2ヵ年計画の初年度に当たる本年度は「自己内対話が深まる学び」を研究の重点に設定。研究部の教職員を中心に授業改善の継続に向けて、従来の形式にとらわれない研究を開始した。
感染症対策を踏まえた研究方法として、国語、社会、算数、理科、生活・総合的な学習の時間、音楽、図画工作、体育、道徳、外国語、特別支援の11部会による校内研究会を、9月上旬から12月上旬にかけて分散して開催。校長助言者と授業協力者は他校から1人ずつ招いて実施している。研究の概要は研究部長がプレゼンテーションソフトを活用し、別室で授業公開前に校長助言者と授業協力者に説明する場を設けた。
また、理科の授業においては、実験などで理科室を活用するため、事前に授業DVDを作成し、助言者に配布。研究討議は別日程で行った。
授業は、3密を避けるべく、体育館で実施。従来、教科や学年に制限がなかった部内研究については、今回は担当学年の教員および担当教科の教員のいずれかとした。
同校では国語など5教科の研究をすでに実施しており、2年目に当たる来年度は第22回教育実践発表会を7、9、12月の3回に分散して開催。
村元校長は「教職員の学びを止めないことが、子どもたちの学びの継続につながる」とし、「教員同士で授業を共に見て感じ、意見を交わすことが授業改善」と話しており、コロナ禍においても児童の学びを止めず、教職員の授業改善を続けていく考えだ。
◆3年生社会 「農家の仕事」 伝統野菜を守るためには 札幌での玉ネギ生産の歴史など
11部会のうち、9月下旬に実施した社会科部会の研究会では、3年1組(児童数38人)の土岐友哉教諭が「農家の仕事」の授業を実施した。札幌市内のタマネギ農家が生産が難しい「札幌黄」をつくり続けている理由を、伝統とおいしさの視点から児童に考えさせた上で、消費者として札幌黄を守り続けるためにはどうすればよいか考えさせる授業を展開した。
本時の目標は「農家が“札幌黄”をつくり続ける理由を考える活動を通して、その営みが消費者の願いに応え、札幌に住む自分たちも消費者の一人として守り続けていく一人だということを考える」と定めた。
研究の視点には、①個が思いをもつための見取りと手立て②個の思いが志に高まるための見取りと手立て―の2点を設定。
児童は前時までに、札幌黄とF1種の2種類のタマネギの生産方法、札幌市が日本で初めてタマネギづくりが始まった場所であることなどの歴史、出荷方法、種類などについて知識を深めてきた。
本時は、10時間扱いの8時間目。
現在ほとんど生産していない「札幌黄」を生産している農家が、札幌黄をつくり続ける理由について児童に考えさせた。
土岐教諭は、プレゼンテーションソフトを活用し、市内の農家における1㌶当たりのタマネギ生産量を、42年前から令和元年度までを順に紹介。42年前は札幌黄が100%だったものの、昭和45年代前半に品種改良してつくられたタマネギ「F1種」の生産によって、令和元年度は札幌黄の生産が10%まで減少したことを示し、札幌黄の生産の難しさや少量でもつくり続けている理由を考えさせた。
児童は、札幌黄の生産が減少した理由を「F1種の方が生産しやすいから」などと回答。土岐教諭は「札幌黄がつくりにくいのであれば、つくらなくてもいいのでは」と児童に尋ねた上で、「どうして札幌黄をつくり続けるのか」と投げかけた。
約半数の児童が「味がいいから」「人気だから」などと回答。
土岐教諭は児童の意見を踏まえ、「F1種も札幌黄同様、おいしいのでは」と質問。F1種は札幌黄を品種改良してつくられていること、市が初めてタマネギづくりが始まった場所という歴史的背景や、おいしいという消費者の人気から、札幌黄を守り続ける農家の思いに気づかせた。
土岐教諭は「みんな札幌黄がなくなったら本当に困るのか」とさらに質問を重ねると、児童は「伝統野菜だから」「札幌黄がないと、F1種もできなかった」などと答えた。
土岐教諭は「息子にも札幌黄をつくり続けてほしい」という農家の言葉を提示。「札幌黄の伝統を守りたい」という思いに気づかせた。
授業公開後の研究討議では、助言者が「3年生で地域性のある教材である札幌黄を取り扱った点が良かった」という一方で、「“おいしさ”と“伝統を受け継ぐ”の2つの視点は少し難しかったのではないか」「消費者と生産者の立場で分けた方が、社会科を学び始めた3年生にとって考えやすかったのではないか」などと講評した。
授業を行った土岐教諭は、「コロナ禍において体育館での実施は、児童にとって通常と違う環境だったため、様子を引き出しにくかった」とした上で、「給食で札幌黄を取り扱ったスープが出た際、“給食を食べることも札幌黄を支えることだね”と児童は話していた。授業を通して、札幌の野菜に対する見方・考え方が変容した瞬間かもしれない」と話していた。
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体育館での校内研授業
(札幌市 2020-11-04付)
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