湧別町の巡回型通級指導 特別支援教育の充実へ成果 地域の拠点機能果たす湧別小(市町村 2020-11-30付)
【網走発】湧別町立湧別小学校(秋山康則校長)は、令和元年度から町内すべての小・中・義務教育学校8校を対象とした通級指導に取り組んでいる。同校が平成30年度に設置した通級指導教室「えじそん」の担当教諭3人が巡回し、自立活動や補充学習など児童生徒一人ひとりに応じた指導や支援に力を入れている。対象児童生徒は10月現在、37人。知能検査の実施、他校のニーズに応じた教員への指導や助言も行い、町内における特別支援教育の拠点としての役割を果たしている。
通常学級に在籍しながら、一部の時間で障がいに応じた特別な指導を受ける「通級による指導」。その対象となる児童生徒数は年々、増加している。
オホーツク地域においても、通級指導の児童生徒は増加。湧別小では、対象児童の増加に伴い、30年度に通級指導教室「えじそん」を設置。自立活動や補充学習などを通して、児童一人ひとりの特性に応じた指導や支援の充実を図ってきた。
一方で湧別小を除く町内の7校には、へき地・複式校もあり、児童生徒数が少なく、教員の数が限られるなど、困り感のある児童生徒に十分な支援が行き届かない現状も。湧別小に通う「他校通級」も行っていたが、送迎にかかる保護者の負担などが課題となっていた。
29年度に改正された「義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図るための公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」では、通級による指導のための教職員定数について、対象児童生徒13人につき教諭1人を措置するとした。
湧別小を除く町内の7校にとって、「児童生徒13人につき教諭1人」は大きな壁となっていた。
このため、町教委は令和元年度から湧別小を拠点校として、町内すべての学校を対象とする巡回型通級指導を開始。すべての小・中・義務教育学校に通級指導教室を設置し、特別支援教育の一層の充実に努めている。
導入に当たっては、当時、湧別小の校長を務めていた佐藤大湧別町教委指導室長が奔走。町教委や各校への説明に当たった。佐藤指導室長は「まず通級指導とは何かというところから理解してもらう必要があった」と当時を振り返る。通級指導の重要性、効果などを継続的に伝え、教員の加配や教室環境の整備にかかる予算措置を実現させた。
巡回型通級指導の初年度は2人体制だったが、2年目となる本年度は、井理聡昭教諭、鈴木雅文教諭、森田有香教諭による3人体制に。主に鈴木教諭と森田教諭が他校への巡回指導を行っており、町内全8校、対象児童生徒37人一人ひとりに応じた支援に取り組んでいる。
また、知能検査の実施等とともに、各校のニーズに応じた教員への指導や助言にも力を入れ、町内全域における特別支援教育の拠点としての機能を果たしている。
「えじそん」の設置当初から通級指導にかかわっている井理教諭は、「保護者や子どもたちの負担軽減につながっている」と成果を示す。また、児童生徒の状況について通常学級の担任との情報交換を重ねることで、「ほかの教員にも特別支援教育の視点で子どもたちをみるという意識がみられるようになった」と話す。
一方で、他校の通常学級担任との連携にはまだまだ課題があるとみている。1校当たりの滞在時間が限られているため、児童生徒の様子を把握したり、担任と話し合ったりする時間が確保しにくいことがその要因だ。「町内すべての子どもが十分な支援を受けられるよう、時間が確保できるようになれば」と課題解決の方策を探っている。
秋山校長は、人材育成の重要性を指摘する。「通級指導に精通している教員は多いわけではない。この仕組みが機能し続ける後継者づくりにも努めていきたい」と、校内研修や校内支援委員会の充実を図る考えを示す。
巡回型通級指導について、佐藤指導室長は「湧別小が中心となって各校の指導に当たることで、9年間で切れ目のない一貫した支援ができる」と、さらなる充実に期待を寄せている。
(市町村 2020-11-30付)
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