教育大附属札幌小中ふじのめ学級 研究紀要 ④ 体全体の感覚を使って 小学校図工 制作楽しむ姿を
(札幌市 2020-12-28付)

◆小学校実践例4

図画工作科(MT万城目徹、T1小田有佳里)へんしん!だんボール!!

【題材について】

 本学級の児童は、図画工作科に対する意欲がとても高く、楽しんで活動に取り組むことができる。

 一方で、発想を広げたり、工夫を凝らしたりすることが難しく、自分なりの表現範囲で終始してしまうことが多い。

 そこで、材料の特徴を生かした新しい技法に挑戦したり、友達の作品づくりを真似したりすることで様々な表現方法を経験させたいと考えた。本題材では、段ボールを素材として取り扱う。段ボールは、児童にとって身近な素材であると同時に、様々な形に切ったり、組み立てたり、ガムテープで容易に接着したりすることができる。

 また、「段ボールを変身させよう」というテーマを与えることで、自由な発想がみられると考えた。道具を上手に活用できないと、活動への意欲が極端に下がる傾向があるため、作品づくりの前にガムテープを貼る、組み立てる、切るといった基本的技能と手順を重点的に学ぶ機会を2時間設定した。そこで培った技能と自分の思いを合わせることで発想を生かした作品づくりを目指していきたい。

【題材の目標】

▼段ボールカッターやガムテープの取り扱いに慣れるとともに、体全体の感覚を使って活動する

▼段ボール箱を見て、思い付いたものを楽しくつくろうとする

【指導計画5時間扱い(本時3/5)】

▼主な学習活動

▽段ボールを使って、お風呂をつくろう

 段ボールを組み立てたり、折ったりして立体的に組み立てる。

 ガムテープを使って、段ボール同士をつなげる。

▽段ボールで、顔をつくろう

 段ボールカッターの安全な使い方を知る。

 段ボールカッターで段ボールに穴を開けたり、模様をくり抜いたりする。

▽段ボールを、変身させよう

 段ボールを切ったり、つないだりして自分のつくりたいものをつくる。

 友達の作品を見たり、作品の中に入ったりして、それぞれの作品のよさを感じる。

【本時の目標】

▼段ボールの形や大きさを基に、造形的な活動を思い付き、どのような作品をつくるかを考える

▼段ボール箱を見て、つくりたいものを楽しくつくろうとする

【本時の展開】

▼学習内容

▽道具や材料、注意事項について知る

▽活動内容について知る

 段ボール、ガムテープ、段ボールカッターなどを使って、作品をつくることを確認する。

▽段ボールを変身させる

 段ボールを組み合わせたり、つなげたり、ガムテープで貼ったりして、自分なりの作品を完成させる。

▽友達の作品を見たり、中に入ったりして、お互いの作品のよさを感じる

▽まとめ

▼教師のかかわり

▽注意事項を明確にさせる

▽活動の見通しをもたせる

▽どこにどのような材料が置いてあるのかを伝える

▽お互いの作品を紹介する

▼支援

▽イメージを膨らませる支援

 つなげてある段ボールや組み立ててある段ボールなど、様々な段ボールを用意しておく。それらの段ボールから発想を広げて制作できるようにする。

▽活動を持続させるための支援

 活動が止まっている、もしくは、何をしてよいかわからないような様子がある場合は、友達の作品に入らせてもらったり、友達の工夫を具体的に教えたりして、参考にするよう声をかける。

▽終わりのきっかけを示す支援

 授業終了の時間になったら、それぞれの作品に「完成シール」を貼ることを伝える。シールを貼ることを、「終わり」のきっかけとする。

【考察と今後に向けて】

▼授業の成果と課題

 前時までに培った段ボールカッターやガムテープの技能を生かして、楽しんで制作する姿がみられた。また、様々な形状の段ボールを用意したことで、自分のイメージに合う段ボールを選んで作品づくりができたと考える。

 しかし、前時までの「お風呂づくり」「顔づくり」と違って、「へんしん」という大きなテーマを与えたことで、つくりたいもののイメージが浮かばないまま作品づくりに取り組んだ児童が多くいた。つくるものを事前に確認したり、イメージをもたせたりする支援が必要であったと考える。

 また、作品の幅を広げるために新たに板段ボールを用意したが、板段ボールを使うことで、立体的な段ボールの形からかけ離れた作品をつくる児童がでてしまったため、今後は材料の吟味をより慎重に行っていきたい。

▼研究の視点から振り返って

 普段の児童の姿や行動について話し合うことを通して、①学習を終えられない(切り替えが難しい)②何をしてよいか分からず活動の手が止まってしまう―という状況が予想された。

 そこで、①に対しては、活動終了になったとき、完成シールを貼ることで、終わりのきっかけを示すという支援を行った。この支援によって、切り替えが苦手な児童も納得して学習を終えることができた。

 また、②については、友達の作品に入らせてもらったり、友達の工夫を伝えたりするという支援を考えた。予想した通り、活動になかなか取り組めない児童がいたが、友達の作品を参考にしたり、見本の作品を発展させたりすることで、自分なりの思いをもって活動に取り組むことができた。

=次回からは中学校の研究掲載=

(札幌市 2020-12-28付)

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