教育大附属札幌小中ふじのめ学級 研究紀要⑤ 自信につながる学習を 中学校自立活動 特性考慮し模索(札幌市 2021-01-06付)
中学校実践例1
自立活動(山田明夏教諭)ボードゲーム大会~相手の話を最後まで聞こう
【題材について】
自立活動(本校では「自分の時間」という名称)の時間のオリエンテーションにおいて、生徒自身に、「どんな活動をしたいか」「どんな力を付けたいか」というアンケートをとったところ、「仲間と仲良く遊びたい」「人前できちんと話せるようにしたい」と回答した生徒が多かった。
また、楽しく遊びたい気持ちがある一方で、具体的にどのように行動したら楽しく活動できるかということを、自分の課題としている生徒が多いことも分かった。
そこで、本題材では、生徒自身が好きな遊びの活動を通して、他者とのやりとりに必要なコミュニケーションを取り上げ、その場で実践し、振り返る活動を行う。
指導に当たっては、目標を一つに絞って分かりやすくすることで、「うまくコミュニケーションがとれた」という経験ができるようにする。
また、学習したコミュニケーションスキルをその場ですぐ試して振り返ることができるように、意図的な場面を設定し、より実生活に近い場面での成功体験につなげることができるようにする。
【題材の目標】
▼小集団で楽しく遊ぶ経験をすることができる
▼遊びを通して、言語によるやりとりの幅を広げることができる
【指導計画3時間扱い(本時3/3)】
▼主な学習活動
▽たくさんの仲間と遊ぼう
遊び活動全体のルールを確認する。
学級全体で楽しい雰囲気をつくることができるように、座ってできる全員でのゲームを楽しむ。
いくつかのボードゲームに分かれて遊び、感想を交流する。
時間を決めて、最初に遊んでいたものとは違うボードゲームも体験する。
遊んだ感想や仲間の様子などを振り返り、自分ノートに記録する。
▽ボードゲーム大会
全員で遊ぶ活動を行う。
ボードゲーム大会を行う上で気を付ける全体の目標を確認する。
ボードゲーム大会を行う。
自分ノートに記録し、振り返りを発表する。
【本時の目標】
▼仲間が話しているとき、最後まで聞くことができる
【本時の展開】
▼学習内容
▽全体のルール、きょうの予定確認
黒板の掲示を見て、きょう何をするのかを知る。
▽全員でのレクリエーション
「かんたん人狼」簡略化した人狼に取り組む。
▽目標の確認
きょうの小グループ活動で何を目標にするか、紙芝居で確認する。自分ノートに目標を記入する。
▽ボードゲーム大会①
小グループでボードゲームに取り組む。
▽ボードゲーム大会②
新しく入ってきたメンバーに、最初にゲームのやり方を伝える。移動した生徒は、仲間の説明を聞いてから一緒に遊ぶ。
▽振り返り・まとめ
きょうの振り返りを記入する。感想や目標の達成度を発表する。
▼教師のかかわり
▽きょうの予定と、遊び活動全体のルールを掲示物で確認する生徒を指名し、音読してもらうことで、全体に周知する
▽ゲームの進行をする
生徒の発言やルールを守る姿を見付けたら、その場で伝えて評価する。
▽きょうの目標を提示する
自分ノートに記入させる。テレビにプレゼンテーションソフトを利用して紙芝居を提示し、どうしてその目標が大切になるかについて確認する。
▽最初の小グループを提示し、生徒の活動の手助けをする
生徒が目標を意識できている場面ではその場で声をかけて評価する。生徒同士で解決が難しい場面があれば介入する。
▽グループのメンバー変更を伝え、目標の再確認をする
新しく自分のグループに来たメンバーに、ボードゲームのルールを説明するように伝える。話を最後まで聞くのが苦手な生徒につく。
▽生徒を指名し、目標の達成度を評価してもらう
生徒の感想や、目標の達成度などの発言を拾うようにする。うまくいかなかったことがあれば、その場で解決策について考える。
▼支援
▽ルールを絞り、いつも同じものを提示する
生徒を指名し、音読してもらうことで、全体に周知する。
▽その日の目標を明確にし、目標を達成しやすくする
かかわり方の目標を一つに絞ることで明確にし、目標となる行動を意識すれば達成できるようにする。
本時の目標は「相手の話を最後まで聞こう」。
▽意図的な場面をつくる
学んだかかわり方が生かせるような場面をあえて設定することで、その授業内で実際にかかわり方を実践できるようにする。
▽自己の課題やその達成を記録し、後で振り返ることができるようにする
うまくいった経験を記録し、自信がもてるようにする。
【考察と今後に向けて】
▼授業の成果と課題
本題材を通して、生徒たちは楽しく遊ぶ活動の中で、それぞれのコミュニケーション上の課題と向き合うことができたと考えられる。生徒たちの振り返りからも、「楽しかった」「ルール(目標)を守ることができた」という前向きな言葉を聞くことができた。
しかし、設定していた場面以外で、学習したかかわり方を実践することは難しい様子だった。学習したことを授業場面だけではなく、それ以外の場面にどう般化させていくかが課題となる。
▼研究の視点から振り返って
本題材では、知的障がいと、自閉的傾向を併せもつ生徒に対して、一人ひとりの特性を考慮し、学習展開、支援方法を模索した。
目標とした「相手の話を最後まで聞く」が最も課題となる生徒は、本時の目標が明確となればなるほど、対象となる場面に焦点化して自分の行動を調整していた。
自閉的傾向をもつ子どもは、学習したことと他の事象との共通点や関連性を自ら探すことが難しいため、学習したことの般化ができるような、さらなる学習展開の工夫が必要だと考えた。
今後は、学習したかかわり方を授業の中で何度も実践することができ、本人の自信につながるような学習活動を、さらに模索していきたい。
(札幌市 2021-01-06付)
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