教育大附属札幌小中ふじのめ学級 教育大附属札幌小中ふじのめ学級 研究紀要⑦ 見取り行い教材教具工夫 中学校保健体育 生徒の内面とらえ(札幌市 2021-01-08付)
中学校実践例3 保健体育科(MT渡辺拓生教諭、T1菅原祐司教諭、T2非常勤講師)中距離走
【題材について】
中学1年生6人、中学2年生7人、中学3年生8人の計21人が在籍している。陸上競技の短距離走ではクラウチングスタートから中間疾走までの走り方に意識をもち、意欲的に取り組める生徒がいる。一方で中距離走になると、走っている途中の疲れから、目標に前向きに取り組む姿が少ない様子がみられた。
そのため本題材では自己の記録への意識を高め、自ら目標に向かう姿を引き出すために、記録の推移を折れ線グラフで示し、走るペースや走り方が記録に及ぼす影響を体験的に理解できるようにして、自分で工夫点を考えるといった思考の活動に重点を置くなどの工夫を行った。
陸上トラックではなく、大学に隣接するあいの里緑道沿いの縦に長い遊歩道で、スタートからゴールまでを視覚的にとらえ、折り返し地点を境にして往路の走者と復路の走者が交差する形をとることによって、互いに頑張って走る姿を見ることが励みとなり、より速く走ろうとする動機につながると考えた。
一人ひとりが中距離走に達成感をもち、目標に向かって取り組むためには、場の設定の工夫や、ワークシートを使った振り返りや記録をグラフにつけることで、客観的に取り組み方や結果を判断できるようにすることが必要であると考える。
【題材の目標】
▼走る運動の楽しさや喜びを味わい、その取り組み方を理解し、基本的な技能を身に付ける
▼走る運動についての自分の課題を見付け、その解決のために友達と考えたり、工夫したりしたことを他者に伝える
▼自分の記録の推移を知ることで、走り方の工夫などを考え、自己の力を発揮して走ることができる
【指導計画9時間扱い(本時6/9)】
▼主な学習活動
▽記録会
個々の走力に合わせて800㍍走グループと1200㍍走グループに分かれて走る。
自分の記録を聞き、前時との記録の差を確認する。
▽自分の記録の推移を知り、走り方を考えよう
自分のこれまでの記録を折れ線グラフで確認し、記録の推移を知る。
記録を上げるための走り方や工夫を考える。
▽新記録を目指そう
前時に使用したワークシートで振り返り、本時の目標記録と、走り方の工夫を確認する。
本時の目標記録と、走り方の工夫を意識しながら記録会に臨む。
本時の記録を知り、次時に生かせるように反省を行う。
【本時の目標】
▼前時に考えた走り方の工夫が、記録の向上につながったかを確認し、次時に生かす工夫を考えることができる
▼前時に考えた走り方の工夫を取り入れ、記録が更新できるように意欲的に記録会に臨むことができる
【本時の展開】
▼学習内容
▽本時の流れを確認する
▽準備運動をする
保体委員の演示に合わせてラジオ体操を行う。
▽前時の学習を確認する
折れ線グラフで自己記録の推移を確認する。
本時の目標記録を確認する。
本時に行う走り方の工夫を確認する。
▽外へ移動してウォーミングアップをする
1200㍍走グループは400㍍、800㍍走グループは黄色ビブスを着用して200㍍を走る。
▽記録会に臨む
1200㍍走↓800㍍走の順で記録会に臨む。
▽体育館へ移動してまとめを行う
記録を更新した人の発表を聞く。
記録を確認し、ワークシートに記入する。
ワークシートに記入し、本時の振り返りと、次時の目標を設定する。
▼教師のかかわり
▽スケジュールを示す
本時の流れをパワーポイントで示す。
▽前時の振り返りを行う
実態別2グループに分かれ、前時のワークシートの内容を確認する。
▽MTは伴走し、T1は折り返し地点の計時記録を伝える
▽記録を発表する
拡大した記録表の記録更新者の欄にシールを貼り、本時の記録を伝える。
▼支援
▽視覚支援の工夫
プレゼンテーションソフトで示すことで、視覚的な理解につなげ、活動に見通しをもつことができるようにする。
▽実態別の支援
実態に応じて目標を明確に意識しやすくする。実態別のA、Bの2グループに分けた活動を行い、さらに実態に応じた3種類のワークシートを用意する。
▽走っている間に記録や走り方を意識するためのかかわりの工夫
MTはペースメーカーの役割として伴走し、5分10秒前後のペースで走りきる。
Aグループの生徒には中間タイムを伝え、Bグループへは声かけを行い、走りへの意識を高められるようにする。
【考察と今後に向けて】
▼授業の成果と課題
本題材の活動を通して、ワークシートを使って前時と本時の記録を比較することや、記録を向上させるために走り方やペースなどについて毎回“作戦”を一人ひとりが立てることで、記録への影響や関連に気付くことができた。仲間の作戦も参考にしながら、自ら課題に向き合い、よりよくするためにはどうするかを考える姿がみられた。
中距離走の活動場所を陸上トラックに移した際に、今回の取組をどのように般化させていくかが課題である。
▼研究の視点から振り返って
本題材では、一人ひとりが“分かる”“できる”授業づくりをするために実態把握をする上で、特に障がい特性に焦点化して、見取りを行い、教材教具の工夫や、環境の設定を行った。
しかし、教科の目標の達成に重点を置いてしまい、生徒一人ひとりの自立活動の課題への支援を活動中に取り入れることが不十分であり、目標設定と支援の個別化を図る必要性を感じた。障がい特性だけに着目するのではなく、どのようなかかわり方をすると、気付きや動機につながるか、一人ひとりの生徒の内面の姿まで深くとらえて支援方法を考えた授業づくりを模索していきたい。
(札幌市 2021-01-08付)
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