教育大附属札幌小中ふじのめ学級 研究紀要⑥ 多面的に子ども理解を 中学校理科 空気の実在確認 (札幌市 2021-01-07付)
中学校実践例2 理科(中禰真介教諭)空気と水を調べよう
【題材について】
本グループは、中学3年生3人、中学2年生1人、中学1年生1人の5人で編制されている。どの生徒も既習の内容を口にするなど、理科の学習には意欲的に取り組んでいる。しかし、理科の用語を口にはできても、実際に科学的な見方で説明することが難しかったり、既習の内容と経験とがつながらず生活に広がらなかったりする姿がみられる。それはこれまでに本人が実感できるような体験や、経験を重ねることができていないからではないかと考えた。
そこで本題材では、単に実験を行う経験を積むのではなく、生徒本人の特性を踏まえた体験を大切にすることとした。
具体的には、目に見えない空気を目に見えるように示したり、生徒自ら観察や実験を行えるように演示したりすることで、課題を焦点化していくようにする。指導内容は、特別支援学校中学部理科2段階、小学校第3学年理科より選択した。
指導に当たっては、予想と結果を深く結び付けられるワークシートを用いること、授業中にいつでも仲間の意見を振り返ることができるように、生徒の考えを教師が要約しながら板書に表すようにする。
【題材の目標】
▼空気や水の性質についての理解を図り、観察、実験に関する基本的な技能を身に付ける
▼空気や水の性質について追及する中で、生活経験をもとに予想する力を養う
▼空気や水の性質について追及する中で、主体的に問題解決しようとする態度を養う
【指導計画5時間扱い(本時3/5)】
▼主な学習活動
▼空気って「空」なの?
空気は、実在の物質であることを実感する。空気砲で圧力を感じる実験をする。
空気は、実在の物質であることを実感する。水中で気泡を集める実験をする。
▼空気と水の特徴を調べよう
空気と水の体積変化について実験を基に考える。
空気と水の温度による体積変化について実験をもとに考える。
既習の実験を選んで、空気と水の違いを確かめる。また、日常生活のどの場面で用いられているかを考える。
【本時の目標】
▼閉じ込めた空気を押すと、体積は小さくなるが、押し返す力は大きくなることを理解できる
▼閉じ込めた空気は押し縮められるが、水は押し縮められないことを理解できる
▼空気や水の性質を追及する中で、生活経験をもとに、空気と水の体積や押す力との関係を予想し、発表することができる
【本時の展開】
▼学習内容
▽前時の復習
空気が実在の物質であると体感したことを振り返る。
▽問題・予想①
(閉じ込められた空気を押したら)空気の体積や押し返す力は(変わるのだろうか)?
実験①
・グループで注射器内に閉じ込められた空気を押して体積と手ごたえを調べ、体積の変化を観察する
考察①
・空気を押すと体積は小さくなるが、押し返す力は大きくなる
▽問題・予想②
(閉じ込められた水を押したら)水の体積や押し返す力は(変わるのだろうか)?
実験②
・グループで注射器に閉じ込められた水を押して体積と手ごたえを調べる
考察②
・水は、押しても体積は変わらない
▽目に見えない空気を想像するには
空気が目に見えないため、存在を十分に体感できるようにする。
▽空気の体積変化に気が付く
生活経験と関連させながら、予想したこと、感じたことを中心に聞き出す。実験の計画が立てられるように、教師が実演し課題を提示する。
▽実験の記録をとることができるよう、注射器のメモリに着目させる。
急な力の変化を与えないように伝える。
▽空気と水の体積変化の違いに気が付く
実験①の結果や生活経験から予想させて、体積の変化を意識した実験の計画が立てられるように、教師が実演し課題を提示する。
実験①と②で同じ注射器を使用することで、条件の違いは空気と水だけであることを意識した比較を行うことができる。
▽板書の視覚的構造化
ワークシートと構成を合わせる。
本人がイメージできるように、語句は平易なものにし、短い文章や単語を使う。
前時から継続して、生徒の発言をキーワードとして板書に表し、本人の言語表出のきっかけにする。
▽実験内容を理解するためのきっかけ(手がかり・プロンプト)
言語指示ではなく、教師がモデルを見せる。
▽いつも同じ手順(ルーティン)の活用
実験内容等を伝えるときは、いつも同じ手順で行う。
▽確認問題
高さ10㍍から花びんを落とす。エアマットとプールとでは、どちらに落としたら花びんは割れないだろう。考えを発表する。
▽確認問題を通して確かめる
実際的で、日常にかかわる確認問題を個々で解くことで、本時のねらいを振り返り、全員で確認する。
▽本人の得意な表出方法で振り返る
話し合いをさせるのではなく、確認問題を視聴覚機器で提示し、手元の紙面に記入、発表することで本時の振り返りを行う。
【考察と今後に向けて】
▼授業の成果と課題
本単元では、見えない空気が実在することを認識させ、空気も物質であることを確認することがポイントとなる単元だった。実際に体験的な実験を繰り返すことで、空気の存在が確かだと実感している姿がみられた。今後は、学んだ知識をより日常生活に生かすことができる、いわば般化につながる支援を意識して授業を構成していきたい。
▼研究の視点から振り返って
表出面に課題がある生徒に、どのようにすれば表出ができるのかを考えるのみならず、自分の得意な表出方法を生かすという視点も入れながら授業を構成した。障がいの保障と個性の尊重の両方から考えるなど、今後も多面的に子ども理解を進めたい。
(札幌市 2021-01-07付)
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