新春インタビュー 道教委・小玉俊宏教育長に聞く
(道・道教委 2021-01-01付)

R3新年号P4A・小玉教育長(1)
道教委・小玉俊宏教育長―GIGAスクール構想などについて語った

 新年を迎え、道教委・小玉俊宏教育長に、児童生徒の学びの保障やGIGAスクール構想の実現に向けた取組、学校の働き方改革など、本道教育の展望を聞いた。

◆誰一人取り残さず学びを保障

―教育長は、4月の就任時から、新型コロナウイルス感染拡大の中、子どもたちの「学びを止めない、心が近づく環境」の整備を掲げ、学びの保障と心のケアのため、陣頭指揮を執ってこられました。一連の取組を振り返り、成果と課題を伺うとともに、予断の許さない状況が続く中、今後の取組についてお聞かせください。

 新型コロナウイルス感染症の影響がある中においても、学習指導要領の目指す学びを着実に実現することが求められており、児童生徒が他とかかわりながら、自分の考えを深め広げる「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を推進することが大切であると考えています。

 学校に対して一律の対策ではなく、実情に応じて地域の資源を生かすなど、様々な工夫を図りながら学びの保障をするようお願いしてきました。

 その甲斐もあり、長期間の臨時休業によって、指導できなかった内容を確実に指導することができるよう、年間指導計画を見直すとともに、地域や学校の実情などを踏まえ、時間割編成の工夫や長期休業期間の短縮、土曜授業の実施などを効果的に組み合わせることによって、授業時数を確保しているところです。

 子どもの学びの保障に向け、臨時休業期間中の子どもたちの学びの機会を確保するため、『リモート学習応急対応マニュアル』を作成し、ICTを活用した家庭学習が行われるよう働き掛けるとともに、学校再開後は、各学校が感染症対策を徹底した上で、グループワーク等を含めた効果的な指導が行われるよう、ICTの活用等による協働学習の工夫例などを取りまとめ、ウェブサイトへの掲載や各学校への指導助言などを通して、授業改善に資するよう支援を行ってきました。

 今後も、学校における感染リスクを低減する安全な活動事例についての情報提供や、臨時休業を行った学校へのきめ細かな指導助言などを通して、誰一人取り残すことのない学びの保障に力を注ぐとともに、感染に関する新たな知見が得られた場合には、感染対策を随時見直すなどして、子どもたちが安心して学び、学校生活を送ることができるよう、しっかりと取り組んでいきます。

 また、感染症対策に伴う生活環境の変化によって、子どもたちは誰にも相談できず様々な不安やストレスを抱えていることが考えられます。

 学校は、子ども一人ひとりを見守り、きめ細かな指導に努めるとともに、感染者等に対する偏見や差別につながる行為は、断じて許されないことから、感染症に関する適切な知識をもとに、発達の段階に応じた指導に努めることが大切です。

 道教委は心のケアに向け、24時間対応の子ども相談支援センターや、高校生を対象としたSNS相談、スクールカウンセラーの派遣など、教育相談体制づくりを進めています。

 また、昨年12月には児童生徒、教職員、保護者に対して、「教育長メッセージ」を発信しています。

 児童生徒に対しては、不安や悩みがあれば相談することを勧めています。もし、相談できないときは、頑張ることから逃げてもよいとしております。

 教育の立場から「逃げる」という言葉を使うことに違和感を感じるところですが、頑なに張り詰めた状態から解放されるという意味として受け止めていただき、本来の自分をより輝かせてほしいという思いがあります。

 教職員や保護者、地域の方々には、感染症に関する差別や偏見の防止へのご協力を強く呼びかけているところです。

 感染症の収束が見通せない中ではありますが、子どもたちや先生、保護者、地域の方々の温かい心をつないで、この難局を乗り越えていけるよう、力を尽くしていきたいと考えています。

◆ICT環境 円滑に整備 授業モデル等示し学習指導支援

―新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、GIGAスクール構想が加速化されています。1人1台端末などハード面、ソフト面の整備が進められていますが、道内の取組状況、今後の方針について伺います。

 GIGAスクール構想の実現に向けた道内のICT環境整備については、8月に文部科学省が全国を対象に行った小・中学校の1人1台端末の整備に関する調査によりますと、道内の自治体のうち、約3割の52市町村が、年内に調達を完了する予定であり、その他の市町村も、年度内に整備を終える予定となっています。

 道教委としては、各学校において、ICT環境が円滑に整備されるよう、引き続き、市町村に対する情報提供や助言をするなどして、本道のすべての学校においてICTを活用した学習活動の充実が図られ、子どもたち一人ひとりの学びの質を高めていくことができるよう、市町村教委や学校への支援に取り組んでまいります。

 新学習指導要領では、情報活用能力が学習の基盤となる資質・能力に位置付けられるとともに、子どもたち一人ひとりの教育的ニーズや理解度に応じたきめ細かな指導に向けた授業改善を推進する観点から、ICTを適切に活用した学習活動の充実を図ることが求められており、各学校においては、コンピューターや情報通信ネットワークなどの情報手段を積極的に活用することが重要です。

 道教委は、昨年8月にICT活用授業指針を策定し、ICTを活用した授業の目指す姿と、その実現に向けた具体的方策を示すとともに、その普及に努め、これからの時代のスタンダードとして、授業におけるICTの適切な活用が確実に実施されるよう取り組んでいくこととしています。

 ICTを活用した授業では、その利点を生かした学習活動の充実による「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善が求められており、具体的な活用例としては、1人1台の端末で、一人ひとりの学びを即時に把握しながら双方向的に授業を進める一斉学習や、デジタル教材を活用するなどして、一人ひとりの学習状況に応じた個別学習、クラウドを活用した共同編集などによって、リアルタイムで考えを共有しながら学び合う協働学習などが可能となります。

 すべての教員が端末等を活用した授業を円滑に実施できるよう、教員等のための研修の実施や、道教委のポータルサイトにおいて、授業で活用できる「授業モデルTips編」を掲載するなどの取組を行っております。

 今後は、引き続き、研修等の充実を図るとともに、学年や教科の特性に応じた1単位時間の授業全体を示す「授業デザイン編」を掲載するなど、授業モデルを作成・普及するなどして、教員一人ひとりの学習指導を支援し、本道のすべての学校において、子どもたちの学びの質を高めていくことができるよう取り組んでいきます。

◆より実効性の高い働き方改革展開

―教員の働き方改革について、道教委の今後の方向性を伺います。

 働き方改革については昨年、道立学校全校に出退勤管理システムを導入し、在校等時間の結果について定期的に公表するとともに、学校における働き方改革手引(Road)を作成し、学校事情に合わせた業務改善を促すほか、教育職員の在校等時間の上限等に関する方針の策定、1年単位の変形労働時間制の導入にかかる条例改正など、働き方改革の推進に努めてきました。

 教育職員の時間外勤務等にかかる実態調査や出退勤管理システムの集計結果では、長時間勤務解消に向け改善傾向はみられるものの、時間外在校等時間を月45時間以内とする目標に約6割が到達していない状況であり、こうしたことから、道教委では今後、手引の活用と併せ、新たな働き方改革のモデル事業を展開するとともに、取組期間が本年度までとなっているアクション・プランについて、これまでの取組の進ちょく状況を把握・分析しながら、今後も継続する方向で検討し、より実効性の高い働き方改革を積極的に進めていきたいと考えています。

◆道外の学生も受け入れ 教員確保へ やりがい伝え

―教員の養成・確保が全国的に課題となっています。道教委として、本道の状況をどのようにとらえ、今後、どのように取り組んでいくのか伺います。

 近年、本道の教員は、定年退職者の増加等に伴い、新採用者数が増加している反面、少子化による新卒者の減少や学生の進路選択の多様化などから、志願者が減少傾向にあり、大きな課題と認識しています。

 質の高い教員の確保は大変重要であるため、道教委では、SNSを活用した広報活動や道外受検会場の設置等のほか、幅広い世代に教員という職のやりがいや北海道で教職に就く魅力を伝えるなど、教員確保に向けた取組を強化しています。

 とりわけ、本年度から実施した「草の根教育実習システム」は、へき地・小規模校での実習や体験活動に参加した学生に多様な学校教育活動によって得られる成功体験等によって、教員を志願する思いを強めてもらうことをねらいとしており、関係人口づくりに取り組む市町村にもご協力いただきながら学生と地域のマッチングを行っております。

 本年度は約70人の希望者がおりますが、現在は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、予定を見合わせながら実施している状況であります。

 また、本年度から全道的に実施した「小・中学校における高校生インターンシップ」は、より早い段階から教員の仕事や子どもとふれ合う楽しさなどについて理解を深め、教職に魅力を感じ、教員になりたいという意志をもって進学につなげてもらうことをねらいとしており、参加した高校生からは「授業体験を通して児童たちと交流できたことが楽しく、教員の仕事にさらに魅力を感じた」などの感想が寄せられています。

 今後は、道内だけではなく、道外からも教員を目指す大学生を受け入れていきたいと思います。

 これらの取組に加え、学校における働き方改革を着実に推進して、すべての教員が働きやすい環境を整備するなど、全国の教員を目指す大学生にとって北海道で教員として働くことが魅力的なものとなるよう取り組んでいきます。

◆夢追い続ける意欲醸成 逆境越えた経験と絆を糧に

―新年に当たり、道内の教育関係者や子どもたち、保護者に対するメッセージをお願いします。

 昨年は、新型コロナウイルス感染症の猛威によって、長期間にわたる全国一斉臨時休業という前例のない事態への対応に追われました。

 学校再開後も、学校関係者の皆さんにおかれては、子どもたちの学びの充実と感染症対策の両立に大変なご尽力をいただいていること、また、保護者や地域の皆さんにおかれましては、学校での子どもたちの健康・安全と学びを確保する取組にご理解とご協力をいただいていることに、心から感謝申し上げます。

 本年においても、依然、コロナ禍の影響は大きなものがありますが、子どもたちの安全を守りながら、「学びを止めない」「心をつなぐ」活動を全力で進めていきます。

 こうした中、ウィズコロナ、ポストコロナを見据え、本道の子どもたちが持続可能な地域の創り手としての資質・能力を身に付け、幸福な人生を歩むことができるようにするため、教育の果たす役割は、これまで以上に重要です。

 道教委では、学校と地域等による協働体制の構築などによって、「魅力ある高校づくり」や「地域創生を担う人づくり」に取り組むとともに、ICT環境整備に努めてきているところです。

 また、来年度から、道立高校へ遠隔授業を配信する拠点を設置し、地域の小規模校に対し、幅広い教科・科目の授業を届けるなど、広域分散型の本道で、どの地域でも質の高い教育を受けられるよう、各種教育施策を充実していきます。

 児童生徒の学力・体力向上、いじめ対策や不登校対策など、本道教育が抱える様々な課題解決に当たっては、学校・家庭・地域・行政が一体となって子どもたちの成長を共に支えていくことが重要であると考えております。

 引き続き、逆境を乗り越えた経験と絆を糧に、若者たちの夢を追い続ける意欲を醸成・継承し、地域のだれもがいつまでも挑み、親しみ、支える共生社会の実現を目指して取り組んでいきたいと思います。

 今後とも、皆さんと緊密な連携を図りながら、本道教育の充実・発展に向けて全力で取り組んでいきますので、変わらぬご理解とご協力をお願い申し上げます。

―ありがとうございました。

(道・道教委 2021-01-01付)

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