道小 第63回北見大会 誌上交流①
(学校 2021-01-20付)

 道小学校長会(神谷敦会長)は、第63回道小教育研究オホーツク・北見大会の誌上交流の成果を会報『教育北海道別冊 小学校教育57号』にまとめた。各地区校長会でまとめた13分科会の研究発表、会員の質問や回答を収録している。

 大会主題は「自ら未来を拓き ともに生きる豊かな社会を創る日本人の育成を目指す小学校教育の推進」、副主題として「ふるさとに誇りと愛着をもち ともに未来社会の創造に挑戦する子どもを育てる学校経営の推進」を掲げた。

 昨年9月に北見市民会館を会場に開催する予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、初の誌上交流として実施した。13分科会の発表には約160件の感想・質問が寄せられ、回答とともに収録した。

 分科会の内容を連載で紹介する。

◆第1分科会 経営ビジョン

【研究課題】

 創意と活力に満ちた学校経営ビジョンと校長の在り方

【研究発表】

次世代の学校を目指す、創造と活力ある学校経営の推進

発表者=今金町立種川小学校・本庄伯幸校長

 本研究課題は檜山校長会小学校部会が令和2年度から3年次計画で取り組むものであるが、「学校経営ビジョンの在り方」をテーマにすることから、アンケートなど中学校部会の参画も仰ぎ、檜山校長会全体で課題解決に取り組んでいる。

 研究の推進に当たっては、アンケートによる客観的データから課題や方策を明らかにし、それを実践的に検証していくという方法をとる。

▼令和2年度の取組

 経営ビジョンの策定・実現における課題について

▽課題①=次世代の学校を展望する経営ビジョンの在り方はどうか

▽課題②=次世代の経営ビジョンを推進する組織体制の在り方はどうか

▼令和2年度の課題と視点についての考察

 課題①のアンケートの結果、各校長が経営ビジョンを策定するに当たっては、まず、児童生徒の状況を十分に把握し、その上で、国や道・町の教育の情勢や動向を踏まえ、公教育機関として教育水準の維持向上と保護者、地域の願いの実現を両輪に経営ビジョンを策定しているととらえることができる。

 その一方で、経営ビジョンを策定する上で課題となるのが、「国や道・町の教育の情勢・動向や子ども・保護者・地域の実情を適切に把握するための情報収集である」としている。

 しかし、多くの校長が経営ビジョンを策定する上で最も課題と考えているのが、連携・協働して教育活動に向かう教職員、保護者、地域への理解促進である。そうした状況を打開するため、各校で経営ビジョンを可視化する取組が進められている。その方策として分かりやすいグランドデザインを作成することも重要である。

 課題②のアンケートの結果、経営ビジョンを進める中でより学校の組織的な推進力が重要となっている。そのためには、学校組織の活性化を支える教職員の資質・能力の向上が不可欠である。その一方で、学校のゆとりのなさ、教員の多忙化を危惧する声もあり、教職員の育成と学校の働き方改革をバランスよく推進することが、校長として重要な課題となっている。

 課題解決の鍵は、経営ビジョンの理解促進と教員の資質・能力の向上を含めた組織の強化にくくることができる。とりわけ、経営ビジョンの理解促進については、前年度に継続課題となった社会に開かれた教育課程の実現のため、学校経営ビジョンの策定に向けた保護者・地域社会との連携・協働の在り方を検証するための切り口となる。

 また、教員の資質・能力の向上と組織力の強化については、教員の働き方改革という課題の中で、いかに教員を育てていくシステムを構築するかが鍵である。

 教員の資質・能力の向上と組織力の強化と教員の働き方改革は二律背反的なものではない。前年度からの継続課題となった学校経営ビジョンの実現に向けた新たな課題への対応については、業務の集中と選択など、教職員の働き方改革を踏まえた業務の推進と校長のリーダーシップの在り方についての検証の一端となる。

▼課題解決のための方策

▽経営ビジョンの理解促進

 各校長の経営ビジョンを可視化したグランドデザインを通して、教職員をはじめ保護者や地域にも分かりやすい経営ビジョンの在り方を示す。

 各校のコミュニティ・スクールの実践を集約し、経営ビジョンの策定に向けた保護者・地域社会との連携・協働を図る校長の在り方を示す。

▽教員の資質・能力の向上と組織力の強化

 各校の教員の資質・能力の向上と組織力の強化のための実践を通して、経営ビジョンを具現化する効果的な学校の組織体制づくりの在り方を示す。

 各校の業務改善に向けた実践を通して、教職員の働き方改革を踏まえた経営ビジョンの推進を図る。

 北海道における教員育成指標や、檜山管内独自に作成している管内教職員キャリア形成プランを活用し、それぞれの教職員のライフステージに応じた計画的な人材育成を推進する。

 3年度は「経営ビジョンを実現する方策についての実践的検証」、4年度は「次世代の学校を創出する経営ビジョンの策定と実現の方策」について研究を進めていく。

【感想や意見】

▽提言のまとめで挙げられている成果の具体的な内容をもう少し詳しく紹介してもらうと、学校経営推進の観点だけでなく、具体的な実践内容を参考にしながら、自校の次世代の学校経営のビジョンの構築と推進に生かしていくことができると思う

▽急速な過疎化や地域コミュニティの衰退が地域における大きな課題となっているが、子どもたちの未来を切り拓く資質・能力を育成するためには、学校を核とした地域コミュニティの未来図を地域総ぐるみで描いていく必要があると感じている。この未来図の核となるべきものが次世代の学校を創る経営ビジョンであり、その推進を担う組織が学校運営協議会だと思う

▽教職員の育成と学校の働き方改革については、教職員のやりがいと意識改革の必要性を感じた

▽経営ビジョンは、教職員・保護者・地域住民など、たくさんの人と共有できるかが鍵になると考えている。そのための方策として、経営計画、グランドデザイン、学校基本ガイドなどの作成、ホームページの活用などがあると思う

▽経営ビジョンの浸透に向けた教職員の資質向上と働き方改革を一体的にとらえて、改善と充実を図る必要性を実感できた

▽地域創生の核となり得る学校を目指し、中学校も含めた檜山校長会全体で組織的・計画的に課題解決に取り組んでおり、素晴らしい取組だと感じた

▽社会情勢の動向や保護者・地域の願いなどを総合的に考えた上で校長としてどんな学校を創りたいのかを明確に示す必要があると感じた

▽校長のビジョンも大事だが、教職員個々が抱いているビジョンを束ねることも大事にしている。思いを形にするにはシステムが鍵になる

▽独自の檜山管内教職員キャリア形成プランの具体について関心をもった

▽解決策を念頭に置きながら経営ビジョン策定の推進に当たっており、エビデンスに基づくことで教職員や地域への信頼も高まると思った

▽校長の示す経営計画も長期的なビジョンに立って作成することが求められる

▽校長が明確な経営ビジョンを策定することの重要性はますます高まっている。願わくば各校長先生のグランドデザインを実際に見て参考とし、経営ビジョンを発信するスキルを高めていきたかった

【質問(Q)・回答(A)】

Q 次世代の学校を創る経営ビジョンであり、その推進を担う組織が学校運営協議会だと思う。それらの具体的な実践や資料があれば、ぜひ参考にしたい。

 保護者・地域との協働やコミュニティ・スクールの活性化には、熟議が有効と考えるが、今後の取組予定を伺いたい。

A 次世代の学校を見据える上で、学校運営協議会は核となる組織である。小中30校のうち20校が学校運営協議会を設置し、残りの学校においても設置することとなっている。学校運営協議会の理解やありようは町によって、学校によって差異がみられる。しかし、どの町においても学校運営協議会の意義である、学校・家庭・地域が目指す子どもの姿を共有し、校長の経営方針を承認し、学校を支援するという目的は同じである。

 今後、各町・各学校における学校運営協議会の実態や課題を明らかにし、その在り方について提言できるよう研究を進めたい。

Q 経営ビジョンを見える化したグランドデザインを分析した際の分析の観点および分析したことで見いだした経営ビジョンの理解促進に向けた分かりやすい示し方の切り口の具体について伺いたい。

A グランドデザインは、教員・地域・保護者に経営ビジョンを示すためにある。各校長は経営ビジョンを誰にでも分かりやすく伝えるため、作成に腐心している。示し方は千差万別であるが、多くの実践を集めることで、共通点や効果的な切り口が見えるのではないかと考え、客観的な分析の観点として、グランドデザインが「何を」「どのように」伝えようとしているのかをみた。

Q グランドデザインの分析で見いだした経営ビジョンの分かりやすい示し方の切り口の具体を伺いたい。

具体例①

 グランドデザインは伝える対象が様々であることから、つぎのような具体的な切り口を見いだした。

▽現状とゴール(目指す子ども像)が明示されている

▽ゴールに向かう組織的な経営方策が明示されている

▽学校経営のPDCAが構造的に示されている

▽今日的な課題との関連が示されている

▽経営方策を実現するための人的・物的な関連(いつ、誰が、何を活用して)が明示されている

▽平易で分かりやすい言葉で簡潔に示されている

具体例②

 域内の小中の校長が、グランドデザインに示す学校経営の観点をそろえて作成している町もあり、小小や小中の統一感のある取組でより地域全体に分かりやすく伝える工夫をしている例もある。

【まとめ】

 本分科会では、檜山校長会小学校プロジェクト部会を中心として、管内すべての小・中学校長が連携しながら経営ビジョンにかかわってアンケート調査を実施した。その後、結果を分析・考察しながら課題解決のための方策を考え、具体的実践に取り組むまでを誌上発表した。成果と課題をつぎのように確認する。

【成果】

▼視点1・学校経営ビジョンの策定

 プロジェクト部会では、経営ビジョンに関して小学校会員だけでなく中学校会員からもアンケート調査に協力いただきながら分析・考察を進めた。その結果、校種を問わず校長の経営理念を比較・検討することで多面的に経営ビジョンの策定についてとらえることができた。

 檜山管内すべての小・中学校において、グランドデザインが作成されている。グランドデザインを伝える対象は、教職員はじめ保護者、地域住民などであった。グランドデザインの作成は、経営ビジョンを可視化する一つのツールとして、校長の経営ビジョンの理解促進に向けて有効な手法である。

▼視点2・創造的な学校経営の推進

 創造的な学校経営の推進に向け、チームとしての学校づくりを図るため、各校のコミュニティ・スクールの現状交流は有効な方法である。また、町単位で域内複数校の校長が知恵を出し合い、学校経営の観点をそろえて地域全体に経営ビジョンを伝える取組は効果的な一つの方策である。

 各校におけるミドルリーダー育成のための北海道における教員育成指標や檜山管内教職員キャリア形成プランの活用は、人材を維持・確保し安定した学校経営を行う上で有効である。

【課題】

▼視点1・学校経営ビジョンの策定

 教職員をはじめ保護者や地域と共に協働して経営ビジョンを策定・具現化するためには、社会に開かれた教育課程の一層の充実と、それを基盤としたコミュニティ・スクールの活性化が今後の課題となった。

▼視点2・創造的な学校経営の推進

 教員の資質・能力の向上と組織力の強化を図るためには、教職員の経営参画意識の醸成や効果的な業務改善および教職員の働き方改革の一層の推進に向けて、校長自身がより具体的な方向を示すなど強いリーダーシップを発揮する必要がある。

 経営ビジョンを実現させるためには、無駄を省き、効率的・効果的に業務が推進できるよう、既存の校務分掌にとらわれることなく、ビジョン達成に向けた柔軟で大胆な校務分掌の再編成を行うことも一つの方策である。

◆第2分科会 組織・運営

【研究課題】

 学校経営ビジョンの実現と活力ある組織づくりにおける校長の在り方

【研究発表】

学校経営ビジョンの実現を図るための組織づくりにおける校長の役割と指導性

発表者=小樽市立幸小学校・岡田貴幸校長

 小樽市校長会では、本年度、全市的な視点から学校運営の強化を重点とし、組織力の強化や人材の育成を目指すべく、学校経営ビジョンの実現のための活力ある組織づくりに関する研究を進めている。

 本年度から3年次計画とし、実態調査、実態を踏まえた実践・改善・充実および実践交流、まとめと研究の流れを設定し、つぎの2つの視点から主題に迫った。

▽視点1=学校経営ビジョンの実現に向けた運営組織の構築と組織的な取組の推進

▽視点2=活力ある運営を実現するための組織活性化に向けた取組の推進

 その上で、つぎの3つの取組を推進し、校長の果たすべき役割と指導性の発揮はどうあるべきかについて検証している。

▽研究実践1=見やすく分かりやすいグランドデザインの作成

▽研究実践2=学校経営ビジョンの実現に向けた運営組織の構築と組織活性化への具体的実践・検証

▽研究実践3=次代を担う人材育成の取組の推進

 実態調査では、つぎのことが明らかになった。

・学校経営ビジョンを示すグランドデザインについて、「見やすく分かりやすいものを示す」という点で課題がみられた

・経営ビジョンの公表と理解では、「保護者や地域住民に理解されている」という回答が多かった

・学校運営組織については、経営ビジョンを具体化するための仕組みづくりや組織的な取組に課題がみられた

・組織の機能化・活性化の方策では、ミドルリーダーの育成、課題解決型の組織体制の構築と組織運営、ICT等の活用による業務のスリム化と平準化、校長の指導性と教職員の協働意識の醸成の4点についての実践があった

▽人材育成は校長の指導性を発揮するという面で各校共通の課題であり、市全体の取組が必要である

▼具体例1=グランドデザインの焦点化と浸透を図るための小樽市小学校長会の取組

▽共通実践

 教職員、保護者、地域等の3者が互いの立場を踏まえて協働する体制の確立を目指し、つぎの点を盛り込み、より分かりやすいグランドデザインの作成を目指した。

・学校の教育目標

・年度の重点目標

・教育活動の重点的取組

・育てたい資質・能力

・家庭の取組

・地域の取組

・小中一貫の取組

・数値目標

 また、各校のグランドデザインを集約・交流することで自校のグランドデザインの改善を図った。

 今後は、①感染症対策や学校の新しい生活様式など年度途中での見直しや付加への対応②理解の促進を図るための手立て③提示の仕方―など、その役割を果たすための適切な活用方法を検証していく。

▼具体例2=運営組織の構築と活性化を図る取組

▽共通実践

 学校経営ビジョンを実現するための組織運営の構築にかかる課題への取組として、小樽市学校管理規則に基づいた校務規定を市内全校で策定するために、実態把握とその検証を進めた。

 目指す校務規定の内容は、①校務分掌や各役職の配置および職責について②企画委員会や特別委員会の職責について③職員会議等、各種会議の扱いについて―である。

▽各学校の実践=ワークショップを活用した焦点化

 A小学校では、全教職員で学校評価(児童および保護者アンケート・自己評価)を踏まえたワークショップを行い、次年度の経営計画や重点目標、分掌計画へ生かしている。

 B小学校では、働き方改革の実現のため、現在行っている業務の精査をワークショップ型で行った。特に、重点目標(目指す姿)の達成に向け、各分掌業務の意義(重要度)と緊急度を考えながら整理し、業務効率化に向けて削減や統合、再構築の方向性について協議した。

▼具体例3=次代を担う人材を育成するための小樽市校長会の取組

▽共通実践

 小樽市校長会では、平成29年度から人材育成研究推進委員会を組織し、多様な研修会を実施している。

 まず、若手教員を講師として実践発表を行い、各校のミドルリーダーが意見交流を行う。そこでは、校長・教頭が、個人の実践と学校運営とのかかわりについての視点を踏まえた助言を行い、学校運営参画意識の醸成を図っている。また、管理職の代表が各職能向上についての講義を行い、職種別のグループ討議を通して、学校運営の具体を共有し、自校における学校運営の改善を図っている。

 管理職やスクールリーダー層が教育情勢、新学習指導要領全面実施等の今日的な課題にかかわって意見交流を行うことで、各職・各層に求められる先見性やリーダーシップ、マネジメント力等の資質・能力について研鑚を積んでいる。

【視点1「学校経営ビジョンの実現に向けた運営組織の構築」にかかわる感想、意見等の内容について】

▽グランドデザインの焦点化

 経営ビジョンを教職員、保護者、地域等へ浸透させるための手立てとして、小中一貫の視点を盛り込み、小樽市全体でグランドデザインの焦点化を図ろうとしている。この取組は、9年間の育ちが地域住民にも理解され、社会全体で子どもたちを育む意識につながり、地域の教育力を向上するために大変有効である。

 しかし、グランドデザインの焦点化は、あくまでも経営ビジョンを浸透させるための手立てであって、目的ではないことを確認する必要がある。

 学校によって規模も違えば、課題も様々である。そのため、グランドデザインが網羅的なものになって、どの学校のグランドデザインも同じようなものになる必要はない。それぞれの学校の特色を生かし、どんな学校経営・運営をするのかがはっきり分かるもの、限られた時間の中で、実現可能なものになるとよいのではないか。

 また、一般の人など誰が見ても分かりやすい文言や内容にすることにも配慮しなければならない。グランドデザインが絵にかいた餅にならないよう、それを実現するための組織づくりにも並行して取り組んでいかなければならない。

【視点2「活力ある運営を実現するための組織の活性化」にかかわる感想、意見等の内容について】

▽校務規定の策定

 学校運営の拠り所となるものとして、また、教職員に働き方を明確に示すものとして、校務規定は大変有効である。しかし、肝心なところは何でも管理職に委ねている雰囲気のある学校も少なくない。

 このような現状を考えると、新たな校務規定をどのようなプロセスで策定するのか、策定した校務規定を教職員にどのように浸透させていくのかということが、組織的な学校経営を推進していく上で重要なことである。

▽経営参画意識の醸成

 ワークショップで教職員の意見を集約して、教職員の思いや願いを学校経営計画や重点目標に反映させることは、教職員の学校経営参画意識を向上させる手立てとして有効である。その際、校長が考えている方向性と教職員の考えが一致するよう、あらかじめ校長の経営方針を示しておく必要がある。また、ワークショップを行うための時間的な保証も重要な視点である。

▽働き方改革の推進

 会議の効率化、特別委員会の見直し、行事の精選等、働き方改革については、まず、何のためのものなのかを教職員に理解させることが重要である。中には働き方改革の意味を取り違えている教職員も散見されるため、ただ単に業務を減らすことが目的ではなく、教育の質の向上や、子どもと向き合う時間の確保が目的であるということを理解させる必要がある。そして、働き方改革の取組が、保護者や地域に理解してもらえるように、校長が取組の趣旨を丁寧に説明することが重要である。

 さらに、今後は学校の新しい生活様式を踏まえた、より教育効果を高める経営の在り方についても検証していかなければならない。

▽人材の育成

 人材の育成は、どの地域においても大きなテーマになっている。次代を担うミドルリーダーの育成を地区校長会で取り組んでいくことは必要なことである。管内の規模によっては、関係者が一堂に会することが難しいと思うが、コロナ禍でリモート会議が行われるようになってきている現状を考えると、どの管内でもこのような取組が可能になっていくのではないか。

 校長・教頭・主幹教諭の代表が、各職能向上についての講義を行ったり、グループごとに様々なテーマに基づいて討議を行ったりすることは、それぞれの職に対する理解が深まるとともに、新たな視点での職務遂行が可能になる。組織を活性化するためには、教職員の資質・能力の向上が必須であり、ミドルリーダーの育成が重要である。そのためには、校長自らがリーダーとしての資質を磨いていかなければならない。

【質問(Q)・回答(A)】

Q グランドデザインの作成の仕方の統一化を図る上で、学校経営方針の形式は自由でよいのだろうか。このやり方ではグランドデザインが優先され、学校経営方針の形式を変えるようになるのではないか。

A 小樽市では、小樽市教育推進計画が策定されており、それに基づき、各校の特性を踏まえた学校経営方針が独自の内容・形式で作成している。また、グランドデザインについても教育推進計画に沿った観点としており、分かりやすく経営ビジョンを示すことで、学校・家庭・地域がよりよく協働する体制の確立を目指している。

Q ワークショップを活用した重点教育目標の策定は、年間のPDCAサイクルの中のどこの時期に位置付けられているのか。

A 学校評価を踏まえたワークショップを2月、それを受けた学校経営計画・重点目標・分掌計画までを3月中、4月当初に重点目標を軸にした学校評価計画(アンケート項目)を整えている。

【まとめ】

▼視点1について

 小樽市小学校長会の研究では、アンケート調査による実態把握や実践交流を通して、グランドデザインの目的や方向性を確認するとともに、その実現に向けた方法や道筋を全体で共有することができた。誌上交流では、市全体としてシンプルでインパクトある分かりやすいグランドデザインを目指した小樽市の取組を評価する声が多かったが、学校規模や学校課題など、置かれている状況が違うがゆえの悩みについての意見も寄せられた。

 小樽市小学校長会が課題に挙げたように、新型コロナウイルス感染症と共存する時代を生き抜くためには、学校の新しい生活様式のもと、社会に開かれた教育課程を編成し、その実現に向けた明確な学校経営ビジョンを策定し、それらを保護者や地域と共有し、共に育む体制をつくる校長のリーダーシップが求められる。

 今後は、グランドデザインの焦点化という視点を生かしつつ、多様性を受け入れ、柔軟かつ個性的なグランドデザインの策定を進めながら、その活用状況の検証を行い、経営ビジョンの具現化につなげていくことが望まれる。また、小中一貫教育の視点から、9年間の学びを見通した取組を経営ビジョンとして示し、小中一貫教育の具体的な活動として具現化していくことが望まれる。

▼視点2について

 活力ある運営を実現するための組織の活性化に向けた取組事例として、校務規程の策定、ワークショップを活用した重点目標の策定や働き方改革の推進、校長会が主体となる人材育成の取組が示された。組織の活性化を推進するアプローチの仕方は各学校や地域の実態によって異なるが、校長会全体で校務規程の策定や人材育成に取り組む小樽市校長会の取組は、一定の成果を上げているといえる。

 誌上交流でも、ワークショップを活用して経営参画意識を高める取組や、校長会が主体となって取り組むミドルリーダーの育成などに関心が寄せられた。

▼今後の課題

▽学校の新しい生活様式やGIGAスクール構想など、新たな時代を見据えた学校経営ビジョンの実現に向けた実効性のある組織づくりと校長のリーダーシップについて

▽小学校高学年教科担任制、働き方改革に向けた組織の再編や活力ある運営を実現する方策について

▽初任段階、中堅段階、ベテラン段階などのキャリアステージに応じた組織的な人材育成に向けて校長が果たすべき役割と指導性について

(学校 2021-01-20付)

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