専門高校フューチャープロジェクト ハウス栽培 経済性検討 岩見沢農業高3年度実施計画(学校 2021-06-10付)
【岩見沢発】令和2年度から3年間、道教委の実践的職業教育推進事業「専門高校フューチャープロジェクト」の指定を受けている岩見沢農業高校(鎌田一宏校長)は、3年度実施計画書をまとめた。「ハウス周年利用における土壌の変化と植物体への影響」「ハウス周年栽培における経済性の検討」「冬期無加温・加湿栽培での葉菜類栽培試験」を中心に研究を推進。実践計画では、試験設計や先端技術講義、栽培管理および調査観察を進めることによって、生徒に専門的な知識技術および科学的視点を身に付けさせる。実施計画の概要はつぎのとおり。
【研究主題】
北海道におけるハウス構造とバイオマスエネルギー等を活用した野菜類周年利用技術の確立
【研究の内容等】
▼地域の現状と課題等
▽現状
空知管内は、全道の農耕地面積の約10%を有し、うち水稲が80%を占める地域である。気候は比較的温暖で昼夜の温度差があり、農業生産に向いている地域とされる一方、厳冬・積雪期間が長く、豪雪地帯として知られる。そのため、特に畑作・野菜栽培においては、施設や労働力の未利用状態が課題となっている。
また、夏場生産に使用するビニールハウス等の施設においても、冬は栽培作目がなく、雪害等の恐れから余剰状態となっている。
▽課題、高校に対するニーズ等
農業、マーケティングの多様化が進む中で、農閑期の余剰状態となっている労働力や施設を有効活用する方策が求められているが、そのためには豪雪に耐え得る施設構造の検討が必要である。
本校は道内の農業後継者も多く集まることから、課題に対する見方・考え方を養う学習の機会の保障、科学的視点や他産業との連携の在り方、さらに、それらに伴う研究の場が必要であると考える。
▼研究目的
▽試験研究を通して北海道産業の現状や課題を理解し、農業に関する先進的な取組にふれ、専門的な知識技術および科学的視点を身に付ける
▽北海道産業の方向性について、考える力、調査した内容を整理する力、課題解決に向けて創造する力、表現する力を身に付ける
▽工業高校との連携による実践を通して、多様性を尊重することや協働する力を身に付ける
▼研究目標
▽北海道における厳冬期において、0℃以上を維持する施設構造の確立
▽雪害に強いハウス構造の実証
▽ハウス周年栽培による農業生産・所得向上の実証
▼研究内容
▽耐雪構造ハウスの建設=単管パイプハウスの構造と耐久性の関連性を学習
▽ハウス建設と農業土木施工=よりよい農地基盤整備の在り方の学習
▽果菜類・葉菜類を組み合わせた周年栽培モデルの確立=春~秋の果菜類、冬期の葉菜類を組み合わせた輪作モデルの確立
▽バイオマスエネルギーの利用と保温・生育促進効果の検証=地域の未利用副産物等を用いた保温による低コスト化の在り方を検討
▼研究方法
先進的に研究を行っている農業試験場の指導を受け、実証研究からスタートする。探究的な学びを通して、実証研究から創造的な試験研究に発展させるとともに、試験設計の方法等について大学教授から学び、研究成果等を科学的・論理的にまとめる具体的な手法を身に付ける。
▼実践研究の規模
農業科学科、農業土木工学科の2学科と工業高校で連携し、試験研究を行う。今後の研究の進度によっては、当初計画の2学科にこだわらず、多くの学科・生徒もかかわることができるよう、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定時の経験を生かし、校内推進体制を構築していく。
▼研究成果の普及方法
研究は地域企業、専門機関、大学と密接に連携を図りながら行うものであり、企業を通した技術普及や学会へ参加・発表する。また、学校で行う視察受け入れや活動報告会を通して、研究成果の普及を図るとともに、メディアなども活用し、生徒の取組を発信していく。
▼3年間の研究計画
▽2年度
・周年栽培にかかる施設の検討と耐雪性や厳冬期における耐寒性の検討
・冬期無加温栽培に適する葉菜類の検討
▽3年度
・ハウス周年利用における土壌の変化と植物体への影響
・ハウス周年栽培における経済性の検討
・冬期無加温・加湿栽培での葉菜類栽培試験
▽4年度
・ハウス周年栽培における経済性の検討と輪作の在り方
・冬期無加温・加湿栽培での葉菜類栽培試験
・地域への技術普及
▼3年度の実践計画
▽4月
①試験設計「栽培試験設計にかかる調査および設計書作成」=科目「野菜」6時間
②試験ハウス準備、耕起、整地、施肥、マルチング、トマト播種、定植=科目「野菜」6時間、使用施設・耐雪構造試験ハウス2棟
▽5月
①先端技術講義「試験設計の実践と調査方法」=講師―酪農学園大・園田高広教授、科目「AGRI 探究=」「総合実習」「野菜」のいずれか2時間、農業科学科1・2年
②先端技術講義「プロジェクト計画の設計と実践に向けて」=講師―室蘭工業大・大石義彦助教、科目「課題研究」2時間、農業土木工学科2年
③先端技術講義「自然エネルギーの有効利用について」=講師―雪屋媚山商店・本間弘達社長、科目「課題研究」2時間、農業土木工学科2年
④栽培管理および調査観察の実践「生育調査、肥培管理、観察」=科目「野菜」6時間、使用施設・耐雪構造試験ハウス2棟
⑤第1回専門高校NEXT人材育成協議会
⑥第1回指定校連絡調整会議
▽6月
①先端技術講義「野菜類周年栽培の可能性」=講師―花・野菜技術センター・地子立研究員、科目「AGRI 探究=」「総合実習」「野菜」のいずれか2時間、農業科学科1~3年
②先端技術講義「流体工学と農業」=講師―室蘭工業大・大石義彦助教、科目「課題研究」2時間、農業土木工学科2年
③先端技術講義「雪冷熱利用と農業」=講師―雪屋媚山商店・本間弘達社長、科目「課題研究」2時間、農業土木工学科2年
④栽培管理および調査観察の実践「生育調査、肥培管理、観察」=科目「野菜」6時間、使用施設・耐雪構造試験ハウス2棟
▽7月
①先端技術講義「持続可能なエネルギー利用」=講師―北海道電力=、科目「AGRI 探究=」「課題研究」のいずれか2時間、農業科学科1・2年、農業土木工学科2年
②先端技術講義「野菜栽培と病理」=講師―酪農学園大・園田高広教授、科目「AGRI 探究=」「総合実習」「野菜」のいずれか2時間、農業科学科1~3年
③先端技術講義「沼田町の雪冷熱の取組について」=講師―沼田町利雪技術開発センター・伊藤勲センター長、科目「課題研究」2時間、農業土木工学科2年
④先端技術講義「沼田町の雪と町おこしについて」=講師―沼田町利雪技術開発センター・伊藤勲センター長、科目「課題研究」2時間、農業土木工学科2年
⑤栽培管理および調査観察の実践「生育調査、肥培管理、観察」=科目「野菜」6時間、使用施設・耐雪構造試験ハウス2棟
⑥視察研修「蔬菜園芸作物栽培の基礎」=酪農学園大、科目「課題研究」6時間、農業科学科2・3年10人程度
⑦視察研修「美唄市自然エネルギー関連施設」=ハイテクノロジー工業団地内関連施設、科目「課題研究」6時間、農業土木工学科2年
⑧栽培管理および調査観察の実践「生育調査、肥培管理、観察」=科目「野菜」6時間、使用施設・耐雪構造試験ハウス2棟
▽8月
①先端技術講義「野菜の栽培環境と生育」=講師―北海道大・実山豊講師、科目「AGRI 探究=」「総合実習」「野菜」のいずれか2時間、農業科学科1~3年
②視察研修「沼田町雪冷熱関連施設見学」=沼田町内雪中米施設、シャクヤク栽培施設等、科目「課題研究」6時間、農業土木工学科2年
③栽培管理および調査観察の実践「生育調査、肥培管理、観察」=科目「野菜」6時間、使用施設・耐雪構造試験ハウス2棟
▽9月
①先端技術講義「冬期野菜栽培について」=講師―花・野菜技術センター・地子立研究員、科目「AGRI 探究=」「総合実習」「野菜」のいずれか2時間、農業科学科1~3年
②先端技術講義「持続可能性について」=講師―室蘭工業大・大石義彦助教、科目「課題研究」2時間、農業土木工学科2年
③栽培管理および調査観察の実践「生育調査、肥培管理、観察」=科目「野菜」6時間、使用施設・耐雪構造試験ハウス2棟
▽10月
①先端技術講義「これからの蔬菜栽培の在り方と品種」=講師―ベジョージャパン=・熊野貴弘氏、科目「AGRI 探究=」2時間、農業科学科1、2年
②栽培管理および調査観察の実践「生育調査、肥培管理、観察」=科目「野菜」6時間、使用施設・耐雪構造試験ハウス2棟
③第2回指定校連絡調整会議
▽11月
①視察研修「室蘭工業大学の見学」=室蘭工業大、科目「課題研究」6時間、農業土木工学科2年
②栽培管理および調査観察の実践「生育調査、肥培管理、観察」=科目「野菜」6時間、使用施設・耐雪構造試験ハウス2棟
▽12月
①先端技術講義「冬期野菜栽培における生育調査」=
講師―花・野菜技術センター・地子立研究員、科目「AGRI 探究=」「総合実習」「野菜」のいずれか2時間、農業科学科1~3年
②視察研修「冬期葉菜類栽培にかかわる視察」=上川農業試験場、科目「AGRI 探究=」「課題研究」のいずれか6時間、農業科学科1~3年、農業土木工学科2年
③視察研修「自然エネルギー関連施設の見学」=美唄市、沼田町、科目「課題研究」6時間、農業土木工学科2年
④栽培管理および調査観察の実践「生育調査、肥培管理、観察」=科目「野菜」6時間、使用施設・耐雪構造試験ハウス2棟
▽4年1月
①栽培管理および調査観察の実践「生育調査、肥培管理、観察」=科目「野菜」6時間、使用施設・耐雪構造試験ハウス2棟
②視察研修「バイオマスエネルギー利用と園芸作物栽培」=北海道大、科目「課題研究」6時間、農業科学科2・3年、農業土木工学科2年
③視察研修「利雪研究と自然エネルギー活用」=弘前大学、青森県利雪関係施設、科目「AGRI 探究=」「総合実習」「野菜」のいずれか18時間、農業科学科・農業土木工学科10人
▽4年2月
①第3回指定校連絡調整会議
②第2回専門高校NEXT人材育成協議
(学校 2021-06-10付)
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