1定札幌市議会予算特別委員会 3月26日
(札幌市 2021-09-29付)

【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】

【質問者】

▼太田秀子委員(日本共産党)

▼うるしはら直子委員(民主市民連合)

▼前川隆史委員(公明党)

▼しのだ江里子委員(民主市民連合)

▼丸山秀樹委員(公明党)

【答弁者】

▼山本健晴子ども未来局児童相談所担当局長

▼山本真司子ども未来局子ども育成部長

▼竹田瑞恵子ども未来局子育て支援部長

=役職等は当時=

◆子どもの貧困対策

Q太田委員 子どもの貧困に対する市の認識、また、子どもの貧困は、貧困状態にある子どもや社会、市にどのような影響が及ぶと考えているのか伺う。

A山本子ども育成部長 まず、国における動きとしては、令和元年の国民生活基礎調査によって、全国の子どもの貧困率は13・5%と発表され、前回調査より若干の改善はみられたものの、依然として子どもの7人に1人が貧困状態にあり、事態が好転しているとは言い難い状況であると認識している。

 市においては、子どもの貧困を主に経済的な問題を要因として、心身の健康や周囲との人間関係、学習など、子どもが生まれ育つ環境に様々な困難が生じている状況ととらえている。

 こうした貧困の状態が続くことで、子どもの発達の諸段階において様々な不利や制約と結び付き、子どもの成長や将来的な自立に影響を及ぼし、結果として次世代への貧困の連鎖につながるなど、市も含めて、活力ある社会をつくっていく上でも、大きな影響を与えるものと考えている。

Q太田委員 平成28年から29年にかけて市が行った貧困対策計画策定にかかる実態調査の支援者ヒアリングでは、ひとり親家庭の保護者は、生活費を得るためにダブルワーク、トリプルワークをしているとある。

 令和2年、子ども・子育て会議児童福祉部会では、ダブルワークやトリプルワークをしても、ひとり親家庭の貧困率は50%を超えていると指摘されている。

 貧困対策計画の施策では、1番目に、困難を抱える子ども・世帯を早期に把握し、必要な支援につなげるとある。なぜ貧困がみえにくいと考えられるか、また、早期に把握し、支援する必要性についてどのように考えるのか伺う。

A山本子ども育成部長 困難を抱えている子どもや家庭ほど、相談相手がいない、あるいは、相談窓口を知らない傾向にあることや、困難の状況を自ら周囲にみせないことからも、普段の生活からは一見して貧困の深刻さがみえにくい傾向にあるものと認識している。

 このため、抱えている問題が深刻化する前に必要な支援につなげることが何よりも重要であることから、現在の計画では、困難を抱える子ども・世帯を早期に把握し、必要な支援につなげる取組を子どもの貧困対策を進める上での基礎となる、特に推進するべき施策と位置付けている。

Q太田委員 次期計画策定に向けて、3年度に実態調査を行うとのこと。昨年の決算特別委員会で、実態調査は国の相対的貧困率や子どもの貧困率に相当する数値を算出できるものにする必要があると質問し、今後議論していきたいとの答弁であった。その後の検討状況を伺う。

A山本子ども育成部長 国の子どもの貧困率は、戸別訪問によって可処分所得を細かく聞き取る国民生活基礎調査をもとに算出している。

 一方、市の実態調査は、回答者の負担を考慮したアンケート形式による調査であり、単純比較ができないことや、所得に関する設問の回答率が低くなることから、施策の判断基準となり得る全体の状況を正確に反映している数値を得ることは難しいものと考えている。また、市の計画では、子どもの貧困を、経済的な問題にとどまらず、健康面や学習環境面など様々な面で影響を及ぼしている状態ととらえており、所得だけでは表れない貧困の実態を把握することも重要と考えている。

 このため、3年度における実態調査の実施や分析、また、4年度における次期計画の検討の際に、有識者による会議などを通じて、どのような指標を用いて貧困の実態をより的確に把握していくべきか、議論していきたい。

Q太田委員 現計画の指標は10項目、うち6項目は毎年調査しているが、区役所の相談窓口に子育てや生活について相談する方法を知らなかった世帯の割合、子どもがいる世帯のうち、家計がぎりぎり、または赤字の世帯の割合、ひとり親家庭の親の就業者に占める正規の職員の割合、今後の生活に不安があるひとり親家庭の割合、この4項目は、特に生活に直結する設問だが、5年に1度の調査となっている。

 5年ごとではなく、指標調査は少なくとも毎年行うべきと思うがいかがか、また、つぎの計画ではこれらの指標項目を見直すつもりか、伺う。

A山本子ども育成部長 現在の計画においては、基本施策ごとに指標を設定しているが、数値の変化を毎年把握することが可能なものと、5年ごとの実態調査によって把握しているものがある。

 指標の設定においては、計画の推進状況の把握だけではなく、施策の改善につながるなど、計画の実効性を高めていくためにも、しっかり検討していく必要があると認識している。

 したがって、子どもの貧困の実態について、より的確に把握するため、毎年把握が可能な指標の追加だとか、項目の見直しを含めて、計画の改定時に様々な議論をしていきたいと考えている。

Q太田委員 計画を推進するのは、子ども未来局、福祉や教育など、関係部局と財政局で構成する市子どもの権利総合推進本部である。推進本部としての会議は、28年の調査から29年の計画策定時に開いたと聞いている。

 計画策定後の会議はどのように開催されているのか伺う。

A山本子ども育成部長 現在の計画の策定後の子どもの貧困対策にかかる会議の開催については、まず、30年5月の会議で新たに立ち上げることとなった子どものくらし支援コーディネート事業について議論を行った。

 また、元年度および2年度については、前年度の取組状況の取りまとめと点検が議題であったことから、書面での開催に代えているが、子どもの貧困に関する課題認識だとか、必要な視点についても、共有を図った。

Q太田委員 日常的な会議を開催するものではないということであるが、それでは、貧困対策の推進は具体的にはどのように進めているのか伺う。

A山本子ども育成部長 子どもの貧困対策の推進に当たっては、子どものくらし支援担当課が相談支援体制の充実だとか、貧困への理解の促進に取り組むとともに、計画を統括する部署として、庁内の関係部局や様々な支援機関・団体との連携を図っている。

 また、計画全体の総合的な推進に関する議論については、全庁的な観点での検討が必要であることから、子どもの権利総合推進本部会議の中で議論し、さらに、有識者などによる会議において、施策の取組状況や効果などを検証する体制となっている。

 一方、個別の施策や取組の検討については、例えば、子どもコーディネーターや若者支援施設による相談支援事業の拡充、また、子ども食堂など、子どもの居場所づくり支援事業の立ち上げなど、具体的な支援について考える際には、保健福祉や教育など関係部局と、個々の状況に応じて協議をしながら進めている。

Q太田委員 次期計画は、子どもの貧困をいつまでにどこまで削減するのかを明記すべきと思うが、見解を伺う。また、喫緊の課題として、現金給付や現物給付など直接支援が必要であると思うがいかがか、伺う。

A山本子ども育成部長 子どもの貧困に関する指標や目標値については、3年度に実施する実態調査の結果から明らかになる課題なども踏まえ、計画改定時の有識者などによる会議において、どのような指標や目標値を設定していくべきか、議論しいきたいと考えている。

 現金給付や現物給付については、現在の計画においても、児童手当や児童扶養手当をはじめとした各種手当の支給のほか、就学援助や子ども医療費助成の拡充、また、第2子保育料無償化など様々な制度の充実に取り組んできた。全国的な制度の拡充については、今後も、国に対して、必要な財源措置を含め、要望していきたいと考えている。

 子どもの貧困対策を進めていくに当たっては、直接的支援だけではなく、困り事や悩みへの相談対応、自立や就労のための支援も含め、様々な制度を用いて対応していくことが重要と考えている。次期計画における支援の枠組みについても議論していきたい。

Q太田委員 平時でも貧困状態だったところに、コロナ禍によってさらに追い打ちがかかる深刻な状況である。

 つらい日々を送っている親子に、市はどのような支援をするのか伺う。

A山本子ども育成部長 市では、これまで、コロナ禍において、ひとり親世帯臨時特別給付金の迅速な支給だとか、学校休業中の子ども食堂などによる居場所での食事提供に代えて、弁当を提供する取組への緊急的支援、また、ひとり親家庭向けの求人案内ポータルサイトの開設など、困難や不安を抱える子育て世帯に対し、様々な支援を行ってきた。

 感染症による影響が長期化する中、現在、国において低所得の子育て世帯の生活を支援する特別給付金などの追加対策について準備が進められており、市としても、必要な支援が届くよう、速やかに対応していきたいと考えている。

 また、相談支援の現場においては、ストレス等による親子関係の悪化や生活の乱れなど、様々な問題が見受けられていることから、引き続き、一人ひとりの困り事に寄り添った丁寧な対応を行っていきたい。

D太田委員 子どもの貧困対策は、市の将来、経済にとって緊急の重要な課題である。コロナ禍であり、貧困になるスピードは速いと思われるが、市の貧困対策のスピードは遅いと言わざるを得ない。

 スピードを上げて、積極的な財政投入で貧困問題の解決に力を尽くしていただくよう強く求める。

◆男性の育休等

Qうるしはら委員 男性の育児参画については、その必要性が言われるようになって久しいが、男性の育児休業取得率については、昨年、政府が2025年には30%という高い目標を掲げている。しかしながら、昨年7月の国の雇用均等基本調査では、令和元年度の女性の育児休業取得率83・0%に対し、男性の育児休業取得率は7・48%にとどまっており、目標には、依然、程遠い結果となっている。

 男性が育児休業を取得しやすくし、ワーク・ライフ・バランスを一層推進していくため、2年度から制度の拡充を実施した育児休業等取得助成事業について、その成果となる直近の助成金交付状況について伺う。また、その結果をどのようにとらえているのか、併せて伺う。

A山本子ども育成部長 現時点での助成金の交付件数と交付金額は、35件、888万6000円となっており、元年度の16件、423万6000円に比べ、倍以上の増加となっている。

 そのうち、2年度新たに創設した2つの助成金のうち、男性の育児休業取得助成金が13件、250万円で、元年度までの制度であった男性の育児休暇取得助成金よりも、交付件数、交付金額ともに大きく増加している。

 その要因としては、男性の育児休業についての社会的関心が高まっていることや、ワーク・ライフ・バランスに取り組む企業が増えているためと認識している。

 その一方で、もう一つの子の看護休暇有給制度創設助成金については、3件、30万円にとどまっている。

 これについては、ほかの助成金に比べ交付件数が低調なため、また、制度創設1年目であることもあり、今後、企業へのさらなる制度周知に努める必要があるものと考えている。

Qうるしはら委員 庁内連携による制度の周知について、この間、どのような取組を行い、今後どのように進めていくのか伺う。

A山本子ども育成部長 2年度は、制度を広く知ってもらうため、経済観光局が発行している『経済情報さっぽろ』と、札幌商工会議所が発行している会員企業向け広報誌『さっぽろ経済』に、当該助成金制度についてと、助成金申請の要件となっているワーク・ライフ・バランスplus企業認証制度についての記事を掲載した。

 そのほか、厚生労働省と男女共同参画課が共催した企業向けオンラインセミナーにおいて企業認証制度について紹介したほか、札幌商工会議所のメールマガジンへの記事掲載など、関係部署と一体となり、ワーク・ライフ・バランスの取組と助成金制度の周知に努めている。

 3年度も引き続き、関係各所と連携し、助成制度の周知に努め、ワーク・ライフ・バランスに取り組む企業を支援していきたいと考えている。

Dうるしはら委員 コロナ禍においては、在宅勤務が進み、家にいる時間が増えたことで、今までの働き方の見直しや、家庭内での育児や家事をどのように分担するのかという意識が高まっていることは、各報道でも取り上げられている。

 今が男性の育児休業取得や企業の制度改正を進めていく好機ではないか。市として、この機を逃がさず、関係各所が連携し、積極的な企業支援と各制度の周知に努めていただきたい。

 また、子育てと仕事を両立して働く女性の数がまだまだ少ない状況にある。女性人口の割合が高い札幌市の特性からも、女性が社会で活躍できてこそのワーク・ライフ・バランスであると思う。さらに支援を進めていただきたい。

◆子のくらし支援コーディネート

Qうるしはら委員 子どものくらし支援コーディネート事業について。子どもコーディネーターが、子どもの居場所への巡回活動をしてきた中で、具体的にどのような困難への気づきや発見があったのか伺う。

A山本子ども育成部長 子どもコーディネーターが居場所への巡回活動を通じて受ける相談の多くは、児童会館職員など日常的に子どもとかかわる大人から、子どもの様子を心配して相談が寄せられている。

 最も多い養育環境に関する相談については、親の傷病や養育能力、複雑な家庭環境が要因となって、子どもの生活面や食事、衛生面での問題が見受けられたり、保護者の精神的負担が大きくなっているケース、さらには、虐待が疑われるケースも存在している。

 また、子ども自身の行動面や発達面の相談については、保護者や居場所のスタッフがどうしてよいか分からず、悩みを抱え、適切な支援期間などにつながっていなかったといったケースも存在している。

 こうした困難の中には、複数の問題を同時に抱えていて、関係機関と連携しながら長期的にかかわっていくものも多い状況にある。

Qうるしはら委員 事業の実施区域については、当初は1人体制、2区10地区で試行的に開始されたものが、段階的に対象地区が拡大され、2年度は10区61地区で実施となった。さらに、3年度は市内全域に拡大するための経費が計上されている。

 市内全域での実施体制はどのようになるのか伺う。また、現在、子ども食堂との連携はどのような状況であるのか、併せて伺う。

A山本子ども育成部長 3年度は、子どもコーディネーターの巡回対象地区を市内全地区に拡大することとしており、そのための人員を現在の5人から7人に増員することを予定している。

 今回拡大となる地区については、これまでの活動で得られたノウハウをコーディネーターの間で共有して、まずは、児童会館をはじめとする子どもの居場所への巡回活動を通じて、着実に地域とのつながりをつくっていきたいと考えている。

 また、子ども食堂への巡回については、居場所で気になる子どもがいた際に円滑に相談につながるよう積極的に訪問しており、これまでに31ヵ所の子ども食堂を訪問し、顔の見える関係性を築いていこうとしている。

 その中で、実際に相談事例に至ったケースは、これまでに6件とそれほど多くはないが、事例の一つとして、発達面での悩みのある子どもについて、コーディネーターに相談した結果、自立に向けた支援にもつながって、「コーディネーターがかかわってくれてよかった」といった声もいただいている。

Qうるしはら委員 昨年、白石区と豊平区の子ども食堂と区の家庭児童相談室との間で意見交換会が開催された。対象児童の相談支援について検討がなされた例があり、こうした動きは、児童の支援はもとより、関係機関の相互理解や信頼関係の強化という効果をもたらすという意味で、大変意義ある取組と認識している。

 また、子ども食堂や子どもの居場所を運営する方々からは、長い時間子どもたちと過ごす中で、虐待かもしれないケースや、ヤングケアラーへの気づきがあるとの話も少なからず聞いている。

 一方で、一部の子ども食堂からは、気づきや相談があった際に、どこにつないでよいか分からない、どの範囲までかかわってよいのか悩む声も聞かれる。

 また、昨年は新型コロナウイルスの影響で活動を休止した団体もあったが、少しでも子どもに食事の支援をと新たに始めた団体などもあって、その活動手法も目的も本当に多様化してきている。

 子どもコーディネーターと子ども食堂など、子どもの居場所との連携を強化すべきと考えるが、どのように認識しているのか伺う。

A山本子ども育成部長 子どもの居場所におけるスタッフが、子どもの様子を心配と感じながらも、つなぎ先が分からない、あるいは、どう対応してよいか分からない、といったケースもあるものと認識している。

 豊富な相談経験をもつ子どもコーディネーターが支援などに関する情報を集約し、子ども食堂など、子どもの居場所とかかわっていくことで、困難の早期発見と解決につながっていくものと考えている。

 コーディネーターのこれまでの約2年半の活動から、個別ケースへの対応の積み重ねによって各団体から信頼を得て、顔が見える関係性ができてきている地域もある。

 関係性の構築は時間がかかることではあるが、地道な取組を積み重ね、子ども食堂など地域の団体と積極的につながりを深めていきたいと考えている。

Dうるしはら委員 今後さらに、コーディネーターの活動を周知していくことと併せて、今の体制や人数については、区域を広げ、全区で実施したあとには、あらためてこの活動を総括し、また新たな活動への展開を検討していくことを要望する。

 また、ヤングケアラーに関して、現在、市では、支援につなぐため、保健福祉局、子ども未来局、そして教育委員会が連携を図り、国の調査を参考にした独自の調査の実施と今後の政策について検討を進めている。国が先日ヤングケアラー検討委員会を立ち上げ、潜在化していた諸課題が顕在化し、必要な支援なども明らかになってきている。

 今後も、子どもコーディネーターが巡回を拡大する中では、子どもの貧困対策に限らない、多岐にわたる相談を受けることが増えていくことと思う。家庭児童相談室や相談機関、また、地域とも連携して、早期に的確な子どもの支援につなげていくことが必要となる。

 今後もさらに、各部局間での連携を強めて、市の包括的な子どもの総合支援体制をしっかり整備することを強く要望する。

◆児童相談体制

Q前川委員 子育てデータ管理プラットフォームについて、その後、どのような検討を行って、どこまで構築作業が進んでいるのか、現時点での進ちょく状況について伺う。併せて、今後のシステム稼働開始までの見通しについて伺う。

A山本児童相談所担当局長 令和2年11月にプロポーザル方式によって受託業者を決定したあと、母子保健、児童相談の関連職員を交えた会議を合計8回実施している。仕様に定めた業務要件の確認、画面レイアウトや管理項目などを検討し、基本設計を完了した。また、周辺機器については、入札・契約も終え、3月末までには調達が完了する見込み。

 今後のシステム稼働開始までの見通しは、5月まで受託業者によるシステム開発が行われ、6月には、データ連携、各種テスト、操作研修を実施して、当初の予定どおり7月の稼働開始を見込んでいる。

Q前川委員 このプラットフォームでは、現行の児童相談、家庭児童相談、母子保健の3つのシステムの支援対象者情報を統合して、乳幼児健診の受診状況や各種支援の状況などを画面に一覧表示することで、基本的な情報共有の迅速化を図る、さらに、3つのシステム情報からリスク評価を行い、リスク度が高い場合に警報を鳴らすアラート表示機能を取り入れるとのこと。

 これまでの検討、構築過程で、さらに機能の詳細が明らかになっているのではないかと思う。これらの機能の詳細と、その機能によってどういった効果が期待されるのか伺う。

A山本児童相談所担当局長 これまでの検討の結果、表示項目やレイアウトなどが確定したところであり、特に、ほかの部署が子どもや世帯にかかわったことを表示して知らせる機能を設けることから、より円滑な連携が期待される。また、虐待通告、特定妊婦の出産、乳幼児健診未受診や、健診結果に何らかの所見があるといった情報を各システムから検知して通知し、早期の対策を促すほか、転居、転出、世帯員変動、氏名変更といった情報も、変更の通知がされる予定である。

 つぎに、期待される効果について。児童相談と母子保健、それぞれのリスク要因をカウントする機能を取り入れることで、担当者間や関係部署間で統一されたリスク情報の共有が図られ、より一体的に支援が行えるものと考えている。

 また、リスク要因をさらに踏み込んで分析し、将来的な虐待につながらないかといった危険性を予測する機能も取り入れる。

 この予測機能は、3つのシステムから蓄積されるデータを繰り返し分析することで精度の向上が図られるものであり、虐待の予防、早期発見の一助となることを期待している。

D前川委員 3年度、市として、新しい局であるデジタル推進担当局もスタートする。

 市役所総体として、デジタル化を進めようとしているが、まさに先取りした取組とも言えるのではないかと思う。

 このプラットフォームの構築については、組織間の情報共有や情報伝達が改善されて、また、早期のリスク検知が可能になるなど、児童虐待防止の大きな効果が期待できる。

 3年度途中、7月からの稼働になるが、実際に使用する職員がより効果的に活用できるように、さらなる検討を深めていただいて、システム構築を進めていただきたい。

 リスク評価の機能、予測機能の精度の向上のためには、データの質が、集積の量も含めて非常に重要になってくると思う。

 プラットフォームの運用に当たっては、運用ルールの確立、それに伴うマニュアルの整備や研修などについても、システムの整備と人材の育成と併せて着実に進めていただきたい。

◆ひとり親支援

Qしのだ委員 市のひとり親家庭等養育費確保支援事業については、養育費確保に向けた補助対象として、大きく3つの特徴があると聞いている。

 具体的にどのような方法で支援をするのか、また、いつから事業を開始するのか伺う。

A竹田子育て支援部長 養育費の取り決めは、強制執行を可能とする書面で行うことが重要であり、双方の協議を経て、公正証書を作成することが基本となることから、これに要する費用を補助することを第一に考えている。

 また、双方の協議が調わない場合には、家事調停や審判といった家庭裁判所での手続を通じて強制執行を可能とすることができることから、その場合に要する費用も補助対象とする考えである。

 また、裁判外紛争解決手続、いわゆる民間ADRの活用や、保証会社との養育費保証契約の締結がされる場合についても、補助を通じて負担軽減を図ることで、養育費の確保を支援していきたい。

 予算議決後、補助要綱の作成を進めるとともに、広報や窓口での相談対応の準備を整えて、7月ころから補助申請の受付を開始することを目指している。

Qしのだ委員 養育費の取り決めに向けた協議において民間ADRを活用することのメリットはどのようなところにあるのか伺う。

A竹田子育て支援部長 民間ADRは、弁護士や法務大臣の認証を受けた機関などの調停者が公正・中立の立場から、当事者双方の主張を聞き、話し合いを支援するものである。

 この制度が活用されるのは養育費の協議の段階においてであり、専門的知識を有する第三者が関与することで、当事者のみで協議する場合に比べて早期の合意が促進されるものと考えている。

 中には、オンラインによる調停を実施している機関もあり、当事者同士が遠隔地にいる場合のほか、感情のもつれや新型コロナウイルスの状況などから、直接会うことに抵抗がある場合などに利便性が発揮されるものと考えている。

Qしのだ委員 今後、民間ADRも含めた養育費確保のための方法の周知をしていかなければならないと考える。どのように実施されるのか伺う。

A竹田子育て支援部長 養育費確保の方法については、ひとり親家庭支援センターで弁護士や養育費専門相談員が相談に応じているほか、各区の保健センターでの相談対応の中でも案内している。

 また、離婚届の受付窓口などで配布している、ひとり親家庭向けの支援制度をまとめた小冊子にも、養育費確保について掲載しているが、令和3年度版の作成に当たっては、民間ADRの活用という選択肢も含めて記載したい。

 このほかにも、多様な媒体を活用して周知を図るほか、国の養育費相談支援センターとも連携しながら、相談員の知識向上を図り、適切な支援に結び付けていきたい。

◆児童相談体制の強化

Q丸山委員 第2児童相談所開設に向け、業務や運営に関して年次計画を立てるなど、早急に取り組んでいく必要があると考えるが、見通しについて伺う。

A山本児童相談所担当局長 第2児童相談所の開設に向けて取り組んでいかなければならない事項は多くある。例えば、担当者が業務に用いているマニュアルなども複数あるが、現行の1所体制を前提として流れが組み立てられていることから、今後の業務の流れを再度整理しつつ、事前に改定しておかなければならない。

 このため、現在、施設整備によって解決できるもの、業務システムなどの見直しが必要なもの、マニュアル改定など、運営面で準備すべきものの切り分けを行っている。

 令和3年度、基本設計を開始して、施設面の整理を行うのと並行して、開設時期から逆算して、各年度に行う必要のある事項を振り分け、計画的に今後の準備に当たっていく。

Q丸山委員 要保護児童対策地域協議会のネットワークは、児童虐待に関してといったイメージが強いものではあるが、それ以外の相談もさらに寄せられるよう、児童相談所や区家庭児童相談室には、子どもや家庭に困り事が発生した際、広く相談が寄せられる関係機関とのネットワークを強化してほしいと考える。今後どのように展開していくのか伺う。

A山本児童相談所担当局長 児童相談所や各区の家庭児童相談室は、自ら相談に応じることはもちろん、相談内容によって、療育機関や医療機関、教育委員会、警察などが設置する相談機関と連携協力しながら、問題の解決を図っている。

 要保護児童対策地域協議会は、児童虐待以外の問題の解決のためにも有効なネットワークである。関係機関おのおのの特徴や専門性を生かしながら、協働による支援を着実に積み重ね、連携体制を強化していく。また、児童相談所の2所体制化は、より地域と密接に連携していく機会だととらえている。

 身近な相談支援機関として頼られるよう、一層の体制強化と、市民をはじめ、各関係機関への周知にも、引き続き取り組んでいく。

Q丸山委員 3年度の定数・機構編成に関する市長記者会見の中で、施設入所や里親委託等の措置を行った子どもや家庭に対する支援を促進するために、児童相談所に家庭支援課を設置する旨の発表があった。

 家庭支援課設置のねらいと、今後の業務の展開についてどう考えるか伺う。

A山本児童相談所担当局長 児童養護施設などに入所している子どもの里親養育への移行や家庭復帰への支援を推進していくことは児童相談所の重要な役割である。特に、家庭復帰後は、学校や保育所、民生委員・児童委員など、地域の関係機関による見守りなどの支援が欠かせない。その要となる各区の家庭児童相談室に対して、児童相談所から助言などを行う機能の充実も必要になってくる。

 このような取組を強化するため、児童相談所に3年度から新たに家庭支援課を設置し、施設と連携して家庭復帰支援や地域支援を専任で行う係も新設する。

 さらに、里親支援、一時保護、発達に心配のある子の療育支援を行う各係をこの家庭支援課に移管する。

 これによって、施設や里親、一時保護所などの状況を一元的に把握して、保護先の円滑な確保に努め、生活指導や行動観察、療育支援の知見も活用することで、関係機関との協力関係のもと、家庭復帰に向けた支援を充実させていく。

D丸山委員 施設入所などによって家庭を離れることになった子どもへの支援を手厚くし、家庭復帰を目指す取組は、強化していくべき支援である。一時保護したときから、将来を見据えて、その子に合った長期的な支援をしていくことが、その子どもにとっての未来を開くことにもつながる。新設された家庭支援課は、こうした点をしっかりと踏まえ、取り組んでいただきたい。

(札幌市 2021-09-29付)

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