湧別町・北大教育学研究院連携事業 “見取る力”が必要 守屋教授 湧別中授業に助言
(道・道教委 2021-11-08付)

湧別中北大との連携事業研修会
大久保教諭が指導した3年生社会の特設授業

 【網走発】湧別町立湧別中学校(杉山英司校長)で10月28、29日の2日間、北海道大学大学院教育学研究院との連携による研修会が開かれた。研究院の守屋淳教授が来校し、3年生社会の特設授業などを参観。研修の在り方として「“どの子も学べているか”ということを見取る力が必要」などと助言した。

 湧別町は昨年1月、地域社会を支える人材の育成を目的に北大大学院教育学研究院と連携協定を締結。町教委は協定を活用し、本年度から守屋教授との連携事業を展開している。

 令和5年度に義務教育学校への移行を控える湧別小学校と湧別中を対象に、守屋教授が研究している「学びの共同体」の理念を取り入れた授業づくりなどについて研究を進めている。

 湧別小と湧別中では、学びの共同体の考え方を踏まえ、教員の指導技術をみる研修から、児童生徒一人ひとりの学びの様子(学べているか、どのように何を学んでいるか)を見取る研修への転換を図っている。

 守屋教授は、2日間で湧別中の教職員と懇談したほか、湧別小と湧別中の授業を参観した。

 2日目は、特設授業として湧別中3年A組社会「私たちの暮らしと経済 企業の生産のしくみと労働」(大久保悠也教諭、生徒数26人)が行われた。

 単元は8時間扱い。1~5時間目で生産の仕組み、企業の役割、社会の中で働く意義などを取り上げてきた。6(本時)~8時間目は、これまでの学習内容を踏まえ、「起業にチャレンジしてみよう」と題した活動を設定。経済の学習を将来に関係する身近な問題としてとらえさせることをねらった。

 また、グループでの話し合いを通して、多様な角度や視点から物事を考える力、自分の考えを具体的・論理的にまとめたり説明したりする力の向上などを目指した。

 本時の目標は「世界や日本の現状を把握し、社会のニーズに合った起業を行う」。

 大久保教諭は導入で、本時から3時間分の活動内容を説明。各グループで起業計画書を作成し、プレゼンテーションするというゴールを示し、見通しをもたせた。

 つぎに、既習事項を振り返りながら、新型コロナウイルス感染症、環境問題、少子高齢化、災害など、世界や日本が抱える様々な課題にふれた。

 それを踏まえ、「災害(地震、津波など)」「新型コロナウイルス感染症」の2つの課題を示し、「どちらかを選び、課題解決の方法を考えてもらう」と指示。同じ課題を選択した生徒同士、3~4人ずつのグループを構成し、「課題を経験した中で困ったこと」について考えさせた。

 グループ内で意見を交流させたあと、同じ課題を選択した他グループの生徒との交流場面を設定。各グループで出た多様な意見にふれさせた。

 そのあと、元のグループに戻り、他グループとの交流内容をもち寄って再び話し合いへ。様々な考え方を参考に、解決したいことを一つに定めさせた。

 その上で、「社会の課題を解決できる会社をつくろう」と課題を示し、各グループで課題を解決する財・サービス、企業理念を考えるよう指示した。

 生徒たちは、1人1台端末も活用しながら課題解決方法を調べ、会社の方針について活発に話し合った。

 授業後は、湧別中教職員が研究協議。大久保教諭の授業について話し合った。

 守屋教授は、研修や授業研究の在り方などについて助言。

 学びの共同体の理念の一つ「すべての子どもの学ぶ権利を保障する」を踏まえ、その実現のため、授業参観者には「どの子も学べているか、ということを見取る力が必要」と強調した。

 「自分から〝分からない”と言えず困っている子をしっかりと見取り、その子に働きかけていくことが大事」と話し、支援を通して「どの子も、分からなければ〝分からない”と言える関係性をつくってほしい」と呼びかけた。

 このあと、守屋教授が「学びの共同体の学校をつくる」と題して講演した。

(道・道教委 2021-11-08付)

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