自ら気づき考える授業を 札幌市 小学校英語の苦手意識克服
(札幌市 2021-12-17付)

 「小学校での外国語の必修化に伴い、小学生段階でつまずき、英語力に自信がなくなった子どもは、その後もずっと英語嫌いになってしまう」―。外国語科の教科化に伴う“リスク”が一部の学校現場でささやかれている。

 新学習指導要領で小学5・6年生の外国語科は「教科型学習」として国語や算数など他教科の授業と同様に位置づけられている。①聞くこと②読むこと③話すこと(やり取り)④話すこと(発表)⑤書くこと―の5つの領域の言語活動を通して、コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を育成することを目指している。

 札幌市内小学校の授業では、主に学級担任のほか、専科教諭を積極的に活用。市教委が昨年作成した札幌Can DOスタンダードを効果的に活用し、児童たちに実践的なコミュニケーションスキルを身につけさせている。

 また、「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能を総合的に活用した基本的な英語能力を身につけさせることで、中学校におけるより高度な学習につなげられるカリキュラムを編成している。

◆教科化で学習の素地

中学英語に抵抗感減

 「ことしの1年生は、例年に比べ、英語に抵抗を感じない生徒が多い」と札幌市内の中学校で英語を指導する教諭は話す。「小学校段階で英語にふれた経験のおかげで中学校入学時から学習の素地ができている。特に聞く力や話す力が身についている」と教科化による利点を語る。

 小学6年生の教科書と中学1年生の教科書をみると、互いに関連する内容が目につく。小学校段階ですでに中学1年生レベルの学習にふれていることも、中学校で学ぶ英語のハードルが低くなっている要因の一つとみられる。

 一方で、「小学生に教科として外国語を指導する」という初めての経験に戸惑う教諭も少なくない。現場からは「小学校外国語科の授業は、使う言葉や表現が難しく、教科書の難易度も高い。ともするとその分、子どもにとっても過剰負担になる」「英語が難しい、楽しくないと感じたまま中学生に上がってしまった子どもは、中学生でもその気持ちが増幅してしまう」と心配する声が漏れる。

 何らかの補助的な学習がなければ、児童にとって英語が苦手科目として位置付けられるとの懸念もある。

◆友達と楽しく活動

指導改善の効果も

 札幌市内の各小学校現場では、各担当教諭が創意工夫を凝らして児童の学びの定着に向けた授業づくりを進めている。

 ある小学校での5・6年生の授業では、導入で身近なことについて会話する活動「Small Talk」を展開。児童一人ひとりがこれまで学習した言語を活用しながら積極的にコミュニケーションを図っている。

 ペーパーテストのほか、「聞く」「話す」を実践する「パフォーマンス」における児童のかかわり方などをもとに評価。授業では常に、児童自ら積極的に友だちと英語でかかわる場面を設定するよう心がけている。

 専科教諭は「最初は小学生に英語のテストをするのは難しいと思っていたが、実際にやってみると児童自身から“できた”という気持ちが高まっている。できなかったときも課題をみつけ改善しようとする姿がみられる」と話す。

 また、指導者の視点でも「各テストの児童の出来具合をみて、授業の中で使う言語や活動を選定できるなど、自身の指導の改善にもつながっている」と、実践的活動の効果を口にする。

 この小学校では、児童同士が楽しく友達とかかわる活動を通して、定着しつつある学習内容を教員が引き出し、定着するまで繰り返し学ばせている。専科教諭は「学校ではじっくり聞いたり考えたりする活動を特に大事にしている。今後も、そのような経験を通して、児童たちに教科としての外国語を定着させたい」と展望する。

◆小学校の段階から

自分で考え学び定着

 学校関係者は「小学生のうちから英語の苦手意識をもたせないためには、日々の授業の中で児童が自身で課題に気づき、自ら考えることが重要」と口をそろえる。

 こうした授業を展開することで小学校段階から外国語の基礎・基本が浸透し、定着まで結びつき、児童の英語への苦手意識を克服する一つの手立てとなる。

(札幌市 2021-12-17付)

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