洞爺湖町教委 公設学習塾で遠隔授業 地方の教育環境充実へ 現役東大生 リアルタイム講義
(市町村 2021-12-23付)

リポート写真
学習意欲向上に大きく寄与

 【室蘭発】洞爺湖町教委は、本年度から公設学習塾においてICTを活用した遠隔教育事業を展開している。民間企業による東大NETアカデミーと連携して実施しているもので、現役東大生が講師となり、高校受験を控える中学3年生を対象にオンラインによる双方向で授業を展開。苦手な単元の解消や、学習意欲向上に大きく寄与するなど、生徒たちからも好評だ。町教委は、生徒たちの進路実現に向けた学習意識の向上、地方における教育環境の充実を目指している。

 町教委は平成25年度、全国学力・学習状況調査の結果などを踏まえ、基礎的・基本的な学力の定着、自ら学ぶ意欲等に課題があると分析。学力向上等や喫緊の教育課題へ抜本的な対策を講じるべく、教育改善推進委員会を立ち上げた。「学力向上」「特色ある教育」「家庭・地域との連携」の3つの視点を設定し、それぞれの課題解決に向けた部会を設立した。

 家庭・地域との連携部会では、学校・家庭・地域が相互補完的に教育を高める取組を推進するため、行政と地域が一体となって「独自の学舎」を提供。27年度には、長期休業期間中、洞爺総合センターなどで公設学習塾「地域未来塾」を開始。28年度からは、社会教育施設・母と子の館で放課後の教育支援事業として毎週行う体制を整えた。

 事業を推進していく中、本年度、町内にアイヌ民族共生拠点施設ウトゥラノが完成。ICT設備が充実した地域コミュニティの場としての側面をもつことから、町教委は、施設活用の幅を広げるため、教育活動の場として利用することを企画。公設塾として道内では珍しいICT遠隔型の授業を取り入れたICT遠隔教育事業地域未来塾を提供。

 授業の実施に当たっては、民間企業による東大NETアカデミーと連携。東大NETアカデミーは、現役東大生がライブ授業で、各教科を指導するオンライン学習システム。双方向による交流が可能で、実際の授業とそん色ない教育支援が可能となっている。

 町教委の加賀谷真由美教育指導専門員は、「普段接する機会がほとんどない現役東大生とふれあうことで、今後の自分の将来設計を幅広く考える機会になれば」と期待する。

 東大NETアカデミーによると、本年度は、全国7自治体と連携しており、道内では洞爺湖町が唯一。運営会社の松川來仁社長は「東大生は首都圏からの出身者が多い。オンライン双方向授業によって地方の子どもたちとふれることで、地域の教育活動を知ることができ、学生自身の知見も広がる」とメリットを口にする。

 本年度、高校受験を控える町内の中学3年生を対象に授業を展開。10月から来年2月までの毎週火曜日と木曜日の2回、午後4時から1時間30分、英語と数学の授業を行っている。現在22人が参加。授業では、公立高校入試の過去問題を軸に、東大生講師が問題のポイント解説や解き方を指導。配信形式とは違い、大学生が生徒たちの反応をリアルタイムで確認できるため、生徒の理解度に合わせた授業展開が可能となっている。

 受講のきっかけについて、生徒は「数学が苦手意識のある教科なので勉強しようと思った」「成績が思うように伸びず、未来塾に入ることで何か変わるかもしれないと思った」「東大生の授業を受けてみたい」などと明かす。

 受講生へのアンケートでは、「とても参考になった」「まあまあ参考になった」と回答した生徒が9割以上にのぼる。「解説が分かりやすく、発展的な内容も教えてもらえる」「学校で教わったことに加えて、自分が苦手なところを取り上げてもらえた」など、学習意欲の向上に大きく寄与している。実際に、学力テストの点数が上がるなど、手ごたえを感じている生徒も多いという。

 虻田中学校の瀧澤義守校長は、ICT遠隔教育事業について「高校受験が迫る大切な時期に、このような取組は大変ありがたい」と話している。

 加賀谷教育指導専門員は「地方では、都市部に比べて学校外で学習する環境が限られている。公設塾でオンライン授業を導入することによって、学びの選択肢が広がれば」と述べ、進路実現に向けた学習意識の向上、地方における教育環境の充実に資することを期待する。

(市町村 2021-12-23付)

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