教職員との信頼関係を 道高校長協会後期研 廣田会長
(関係団体 2022-01-17付)

高校長協会廣田会長
廣田定憲会長

 道高校長協会が11日に開催した3年度後期研究協議会・全国高校長協会北海道ブロック研究協議会(13日付1面既報)における廣田定憲会長のあいさつ概要はつぎのとおり。

 会長に就任してすぐの2年5月、6月1日からの学校再開後の学校行事の在り方について道教委と協議する機会があり、9月末まで学校行事を自粛する旨の事務連絡があった。会長所信で「攻めの姿勢で建設的な経営を行う」と言っておきながら、私は守りの姿勢で、各学校で対応が割れることを恐れ、校長協会に火の粉が飛んでこないことを願い、9月末までの学校行事自粛に同意した。

 あとから、生徒たちが感染防止に工夫して学校祭を企画していた学校があったことを知った。そのような生徒たちがいることになぜ思いをはせることができなかったのか、自分が恥ずかしくなった。それから、「できない」ではなく「どうしたらできるのか」という発想に立って生徒たちの教育活動の機会を確保するために、会長として発言していこうと決意した。

 感染拡大の兆しがみえてきた昨年4月、道教委に対して、緊急事態宣言が出されたとしても休校はしないこと、部活動の大会参加は認めることを要望した。

 6月の緊急事態宣言時は、分散登校・午後4時完全下校・部活動の制限が1ヵ月に及び、生徒・教職員が疲弊していることを伝えた。

 8月の第5波では、分散登校は回避してほしいことも要望した。道教委では、現場の声を真摯に受け止め、教育活動を止めないという思いを共有して対応していただいたことに感謝申し上げる。

 10月には、「さぁチェック」を活用した行動観察の徹底によって、緊急事態宣言などいかなる状況であっても、平常の教育活動を止めないという考え方にシフトした。

 昨年卒業していった生徒たちは、目標としていた大会やコンクールも中止、楽しみにしていた学校行事も中止となるなど、つらく悔しい思いを抱えたまま高校生活を終えた。こんな思いはもうさせたくない。

 「私たちの青春はコロナになんか渡さない」。これは、Keep on shiningの宣誓での本校生徒の言葉である。二度と来ない高校生活を思う存分満喫してもらうためにも、感染防止策を徹底し、教育活動を継続させることが私たち校長の責務であると考える。

 昨年4月に未来の教頭応援プロジェクト会議が設置され、高校における教頭候補者の育成に向けた行動指針が策定された。

 指針には、各校長の重点的取組の一つとして、「パワハラと受け取られるような行為の撲滅」がある。一般職員のアンケートからは、校長のパワハラに関する記述が30近くに上っている。全てが現在の校長の実態を表わしているものではないが、教頭になりたいと思わない理由が校長のパワハラにあると考えている教員がいることは、このアンケートから疑いようがない事実である。

 校長は、安全かつ快適な職場環境の形成に努める責務がある。校長を支える副校長、教頭、そして学校教育の直接の担い手である教職員の理解・協力がなければ、自分の思い描く学校経営を推進できるはずがない。

 教職員をはじめ、生徒・保護者・地域住民は校長の言動一つ一つに注目している。指針にある「パワハラと受け取られるような行為の撲滅」のため、私たち校長が自らの言動について客観的な視点で顧みることが必要と考える。

 先日の箱根駅伝を見ていると、校長の職務と重なる。学校にかかわってきた多くの人々の思いがタスキに込められて、そのタスキを前任の校長から引き継ぐ。引き継いだ校長は、その時々の課題解決に努め、さらに前へ進めてつぎの校長にタスキを渡す。そんなイメージを持っている。

 本年度も残り2ヵ月余り。退職・異動される校長は、後任にタスキをどのように渡すかが非常に大切であると考える。退職・異動するとしても、4年度の学校経営方針・シラバスは提示すべきである。

 私は過去に、新年度からの学校経営方針・シラバスが提示されないまま引き継いだ経験がある。大本の学校経営方針が提示されずに各分掌・学年・教科の計画が立てられるはずがない。前任の校長が3月に提示し、後任の校長は赴任して自分の目で確かめて、自分の思いを加えたり修正したりすることになる。

 どの学校でも引き継ぐ課題は必ずある。一方、本年度中に解決しておくべき課題もある。残り期間は短いが、後任の校長が困らないように、解決すべき課題は解決してタスキを渡してほしい。

 コロナ禍の2年間、私たち校長は新型コロナウイルス感染症に対応した教育活動について、難しく厳しい決断を何度も行ってきた。その決断に至るまでの苦悩は、経験した者にしか分からない想像を絶するものだった。

 何が正しいか分からないことに対しても、校長は責任を持って決断しなければならない。あとから振り返り、「本当にこれでよかったのか」と自問自答する場面もあった。

 校長の判断に疑問を抱いた教職員もいたと思う。それでも、各学校がこの未曽有の事態を乗り越えている要因は何か。この校長が言うのであればついていくという、校長と教職員との信頼関係が構築されていることが一番の要因ではないかと思う。

 この2年間、コロナ対応に追われ、思い描いていた学校経営を推進できず、悔しい思いをした先生も多いと思うが、私たち校長の頑張り、踏ん張りがなければ今のコロナ禍における本道の高校の姿はあり得ない。

 まだ光が見えてきているとは言えないが、必ず光が見えてくるときは来るはずである。そのときは「あのときの校長の決断、頑張り、踏ん張りがあったからこそ今がある」と評価されるに違いない。

 今はまだつらいときではあるが、これまでの私たち校長の頑張りが必ず報われ、つぎの時代につながっていくことを信じて難局を乗り切っていこう。

(関係団体 2022-01-17付)

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