健康・安全第一に学びを 新春インタビュー 4種校長会長に聞く ②
(関係団体 2022-01-18付)

4種校長会インタビュー道中学校長会三浦会長
北海道中学校長会会長 三浦利章氏

―校長会としての新年の展望をお聞かせください。

 昨年を振り返ると、道内では2度の緊急事態宣言を引き起こした新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、教育、経済、医療などあらゆる分野において、コミュニケーションのオンライン化を進展させるなど、社会的な変化や人々の行動様式に大きく影響を与え、世界を一変させました。

 特に教育現場では影響も大きく、子どもの学びを保障するために、感染拡大のリスクを可能な限り低減させた上で、どう教育活動を進めていくかなど、長期的な戦略を持った学校経営が必要な状況となりました。

 感染症の収束が見込めず、感染拡大に伴う学校行事の中止、延期、変更、縮小や消毒作業など、教員の負担が大きくなり、学校は国が示す衛生管理マニュアル等を踏まえながら、教育活動を組織的かつ確実に実践するよう求められました。

 その渦中にあって、各学校では校長のリーダーシップのもと、感染防止と子どもの学びの保障に向けて教職員が一丸となって対応していただいたことに深く感謝申し上げます。各学校の校長先生方は毎日、薄氷を踏む思いでリーダーシップを発揮し、先生方、子どもたちを導いていたのではないでしょうか。

 オミクロン株の出現も見られ、今後どのような対応が求められるか油断できない状態ですが、学校では、感染症のリスクを抑え、健康・安全を第一にオンラインも利用し、子どもたちの学びを進めたいと思います。

 昨年の入学選抜の時期も新型コロナウイルス感染症の拡大が心配されましたが、無事に子どもたちは受験を乗り越えてくれました。ことしも高校とはもちろん、道教委、地教委等の関係機関をはじめ、保護者とも情報を共有して無事に受験生に希望の春を迎えさせたいと思います。そして、卒業式、入学式、修学旅行、中体連等の行事を少しでも感染前の状況で経験させ、子どもたちが笑顔あふれる学校生活を送るとともに、良い思い出をたくさん残してほしいと思います。

―校長会が抱える課題と対策をお願いします。

▼部活動の地域移行

 部活動が教員の長時間勤務の要因であること、指導経験のない教員にとって多大な負担となっていることから、5年度から休日の運動部活動の地域移行の実施と地域におけるスポーツ環境の整備を目的として、地域における受け皿の整備方策など段階的な地域移行が検討されています。スポーツ庁は、運動部活動の地域移行に関する検討会議で、「部活動は学校のもの」という従来の視点から脱却し、子ども第一の視点でスポーツ環境を整備する必要性が指摘されています。

 将来的には休日のみならず、平日を含めた部活動の地域移行を視野に入れ、検討を進めなければなりません。教員が過度に働き過ぎることのないよう、少人数学級の移行も見据えた教育環境の整備が必要です。「部活動はあくまで学校のもの」ととらえていると非常に限定的になります。子どもたちが本当にやりたいスポーツができる環境を整えることが大切であり、円滑な移行に向け関係機関に働きかけたいと思います。

▼全道・全国大会個人競技参加における引率規制緩和

 陸上競技、水泳、スキー、スケートなどの個人競技の多くの選手が、地域のクラブチームで活動しています。現在の決まりでは中体連大会への引率は当該学校の校長・教員・部活動指導員となっています。しかし、日常、学校の部活動として活動していない少数の生徒を引率するために、教員に引率を依頼することについては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大がより深刻になった前年度からは、大会引率の際の感染リスクや、大会期間中、大会終了後の学校での本来業務に支障を来す等の観点から、各学校でも大変厳しい状況となっています。

 外部指導者の大会引率や、一人の教員が地域の学校生徒をまとめて引率する地域合同引率が可能となれば、学校への負担軽減につながると考えられます。同時に、現在スピードスケートにおいて運用している代理監督制の適用の幅も広がれば、学校側の大会引率の負担もさらに軽減されると考えられます。

 このように、引率の規制緩和は早急に変えていかなければならない課題と考えています。

―新年度の重点的取組を伺います。

▼教員の確保と働き方改革

 教員不足は全国的な課題となっています。人材の不足、勤務時間の長さのほか、道内では広域で小規模な学校が多いイメージがあるなど、様々な要因があると思います。受検者拡大に向け、道教委でも東京都内に選考検査1次検査の試験会場を設置、高校生の段階で教職への関心を持ってもらえるよう、高校生を対象とした教員養成セミナーの開催など、様々な取組をしています。

 しかし、何よりも、多くの人が教員を希望してもらえるよう、学校における働き方改革に真剣に取り組む必要があります。単に勤務時間を縮減するのではなく、子どもと向き合う時間や授業準備の時間を確保すること、そのための業務の整理・見直しが重要です。本年度策定した北海道アクション・プラン(第2期)で示す「個の“気づき”」「チームの“対話”」「地域との“協働”」を踏まえ、学校における働き方改革をさらに進めたいと思います。

 また、教職員の時間外在校等時間に関しては徐々に減少している一方、業務見直しの効果が実感できるよう取組を一層進める必要があります。そして、教職の魅力向上のため、教員がやりがいある仕事であることをPRしたいと思います。

▼命を大切にする教育

 昨年11月に道内において中学生による刃物での殺害事件、愛知県で校内において同級生を刃物で刺殺させる事件が連続して発生しました。

 このような悲しい事件もあり、新型コロナウイルス感染症への対応などとも関連し、生徒をきめ細かく見守り、小さなサインを敏感に受け止めるとともに、学級担任や養護教諭を中心とした教育相談やスクールカウンセラー等と連携した教育相談を実施するなど、学校での相談体制の一層の充実が求められました。

 また、生徒の心の不安や悩みなどに迅速かつ適切に対応できるよう、家庭はもとより、児童相談所や医療機関など関係機関と連携した支援体制の充実も求められました。

 学校の教育活動全体を通じて、自分の命、他の人の命それぞれの尊さを理解させるとともに、人を傷つけたり危害を加えたりすることは絶対に許されないと指導することは重要ですし、これらのことを再確認することはもちろん大切です。

 しかし、SNSや人間関係でのトラブルなど、精神的なケアを必要とする生徒が多い現状からすれば、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の勤務日数や学校滞在時間を増やすことも必要と考えていますので、要望としてさらに強く求めていきます。

▼第72回全日本中学校長会研究協議会北海道(札幌)大会

 4年度は、全日本中学校長会研究協議会が札幌で開催されます。研究基本主題「新たな時代を切り拓き、よりよい社会を形成していく日本人を育てる中学校教育」による4ヵ年継続研究は、全国各地区校長会の実践の交流と地区を越えた校長同士の交流を通して、北海道の中学校教育の振興に果たしてきました。本会の足跡・役割を再認識し、新しい時代の展望を内外に示す大会となるよう、平成26年の苫小牧大会以来、全国大会は8年ぶりとなりますので、総力を挙げて成功を目指したいと思います。

 大会では、多くの校長先生方と連帯が意識でき貴重な機会になることはもちろんですが、全国各地で頑張っている校長先生と各分科会での提案をもとに課題や悩みを交流することによって、校長同士の一体感が生まれ、また、力強い励ましや学校経営者としての仲間意識が芽生え、頑張る意欲や自信をもたらしてくれます。この貴重な大会を、全道の校長先生方と成功に導きたいと思います。

▼終わりに

 昨年、MLBロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手がMVPを取りました。私は彼が素晴らしいと思うのは、どんなことでも自分の糧にし、うまくいかないことがあっても、こんなことができると考えるところです。大谷選手とはいかなくともこのようなたくましい人間を育てることができれば、子どもたちはうまくいかないことがあっても、何とか自分の足で立って歩いてくれるのかなと思います。

 コロナ禍で虐待が増えたなどの話を聞くたびに、すごく残念な気持ちになります。子どもの笑顔が絶えない学校に向け、自分でできることは何だろうと考え、残された教職生活は短いですが、できることに努めたいと思います。

 また、連携、団結、協力などの言葉が、今まで以上に身に染みました。ぜひ、ことしも道中をよろしくお願いしたいと思いますので、会員各位・関係各位の理解と支援をよろしくお願いいたします。

(関係団体 2022-01-18付)

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