情報交換密に高校魅力化 新春インタビュー 4種校長会長に聞く③
(関係団体 2022-01-19付)

4種校長会インタビュー廣田会長
北海道高等学校校長協会会長 廣田定憲 氏

―校長会としての新年の展望をお聞かせください。

 年が明けましたが、ことしも引き続き感染症拡大防止を大前提として、学校経営・協会運営を推進していかなければいけないと考えています。コロナ禍も2年の月日がたち、昨年11月には国において、感染状況を評価する新しい指標が策定されました。ワクチン接種も進み、感染防止と社会経済活動を両立させる方向にかじが切られています。

 昨年前期までは、緊急事態宣言の発出・まん延防止等重点措置の適用によって、修学旅行の実施の見合わせ、体育大会など感染リスクの高い行事の中止や延期を求められましたが、昨年10月に道教委から発出された「さぁチェック」を活用した行動観察の徹底によって、緊急事態宣言などいかなる状況であっても、平常の教育活動を止めないという考え方にシフトされました。昨年の分散登校や学級閉鎖時、オンライン学習による授業配信によって生徒の学びを保障しました。ことしはこの2年間で得た知見と経験を生かし、昨年以上に新型コロナウイルス感染防止対策と学びの保障を両立させ、本道高校教育の質の向上を図ることが大切であると考えます。

 昨年1月に中央教育審議会から「“令和の日本型学校教育”の構築を目指して」と題した答申が出されました。答申を受け、本道においては昨年9月に全ての道立高校でスクール・ミッションが再定義され、それを踏まえて各校において、育成を目指す資質・能力に関する方針、教育課程の編成・実施に関する方針、入学者受け入れに関する方針の3つのスクール・ポリシーが策定されているところです。

 スクール・ポリシーは策定して終わりではありません。ここがスタートであり、スクール・ポリシーを起点としたカリキュラム・マネジメントの推進が私たち校長に求められています。本協会調査研究部では、ここに焦点を当てて調査研究を進めており、今後も校長間の情報交換を密にして、本道高校の特色化・魅力化を推進していきたいと考えています。

 昨年7月、大学入試のあり方に関する検討会議の提言を受け、7年1月以降の大学入学共通テストにおける英語民間検定試験と記述式問題の導入の見送りが決定しました。一方、同検討会議では、総合的な英語力評価の重要性を踏まえ、各大学の個別試験において英語民間検定試験の活用を促す提言を行っています。

 今後、大学入学者選抜協議会の下にワーキンググループが設置され、低所得者への検定料の減免、オンライン受検システムの整備や高校会場の拡充など6つのテーマについて議論されていきます。英語民間検定試験の大学入試における利用については、高校における適切な教育の実施を阻害することのないよう、本協会として、現場の実情に基づいた率直な意見を述べていきたいと考えています。

 昨年3月、7年度大学入学共通テストの出題教科・科目が発表され、新科目「情報Ⅰ」が出題されることになりました。国立大学協会では、先送りされていた大学入学共通テストにおける「情報Ⅰ」の扱いについて、今月末に結論を出す予定です。各高校では既に4年度入学者教育課程は編成されているところで、各大学が利用する教科・科目の公表は4年度入学生が入学後となる見込みとなることから、その結果によっては、各高校の教育課程の実施や生徒の指導に少なからず影響が出てくるのではないかと懸念しています。

 高校においては、4年度入学生から年次進行で新学習指導要領が実施されます。新学習指導要領が目指す教育の目的は、一人ひとりの生徒が自他を尊重し、他者と協働し、様々な社会的変化の中で豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることです。

 私たち校長は、変化していく社会の姿を客観的なデータに基づき具体的に提示し、社会に開かれた教育課程、カリキュラム・マネジメント、主体的・対話的で深い学びなど、新学習指導要領の基本的な考え方を踏まえ、各学校や地域、生徒の実態に応じた教育を実践していくことが大切であると考えます。

―校長会の抱える課題と対策をお願いします。

 4年度教頭昇任受検者は、追加募集を含めても過去最低を更新しました。極めて憂慮すべき状況となっています。

 前年度、本協会から道教委、校長協会、教頭・副校長会の3者による協議会の開催と教職員の意識アンケートの実施について提案しました。道教委からはこの提案を前向きに受け止めていただき、昨年4月に道教委と校長協会、教頭・副校長会による未来の教頭応援プロジェクト会議が設置されました。管理職および一般職員へのアンケートも実施され、その結果を踏まえ、協議の上、高校における教頭候補者の育成に向けた行動指針が策定されました。

 行動指針には、道教委、各校長および校長協会における重点的な取組と基本的な取組が具体的に記載されています。本協会としては、この危機的な状況を真摯に受け止め、意欲と能力のある人材の管理職登用を促進するため、道教委と連携を密に図って、行動指針に基づいた取組を推進していきたいと考えています。

 行動指針には、各校長の重点的な取組の一つとして、「パワハラと受け取られるような行為の撲滅」があります。一般職員のアンケートからも校長のパワハラに関する記述が複数見られました。

 私たち校長は、安全かつ快適な職場環境の形成に努める責務があります。校長を支える副校長・教頭、そして、学校教育の直接の担い手である教職員の理解と協力がなければ、自分の思い描く学校経営を推進できるはずがありません。教職員をはじめ生徒・保護者・地域住民は校長の言動一つ一つに注目しています。パワー・ハラスメント根絶のため、まずは私たち校長が自らの言動についてパワー・ハラスメントに該当しないかどうかを客観的な視点で省みることが必要であると考えます。

 昨年3月に学校における働き方改革「北海道アクション・プラン(第2期)」が策定されました。アクション・プラン(第2期)では「個の“気づき”」「チームの“対話”」「地域との“協働”」の3つの視点を重視して、重点的に実施する6つの取組が示されています。

 時間外在校等時間を1ヵ月45時間以内、1年間で360時間以内とすることを目標としていますが、月45時間を超え、さらには過労死ラインと言われている月80時間を超える教職員も見られる状況にあります。生徒のためと昼夜、休日を問わず仕事をして、心身の健康を損ない仕事ができなくなってしまう、過労死に至ってしまう。このような悲劇だけは絶対避けなければいけないと考えます。

 教員が健康で生き生きとやりがいを持って勤務しながら、学校教育の質を高められる環境を構築すること。簡単ではないかもしれませんが、私たち校長にできない、やらないという選択肢はありません。働き方改革推進校をはじめとする各校の効果的な取組を本協会として広く共有して自校の実践に取り入れていくとともに、道教委とも学校現場の実情を踏まえた協議を進め、課題解決策を探っていきたいと考えています。

―新年度の重点的取組を伺います。

 4年度入学生からの1人1台端末の実現に向け、機種の選定、購入方法、中学生・保護者への周知など本協会として情報を共有しながら、各校において準備を進めてきました。新年度は1人1台端末をどのように生徒に使わせるかが大きな課題となってきます。

 道教委のICTポータルサイトも充実してきました。この1年間で各校の実践例も積み重なってきました。実施していく中で様々な課題は出てくるかと思いますが、本協会としては、情報交換を密にして、公立私立問わずICTを効果的に活用した先進的な取組を行っている学校の実践例を幅広く共有し、1人1台端末を活用した教育を推進していきたいと考えます。

 新たな時代の学校経営を担う後継者の育成は本協会の使命であると考えています。3月には、本協会主催で採用校長のための事前研修会および昇任教頭のための事前研修会を実施し、採用校長、昇任教頭として4月から不安なく職務を遂行できるように支援していきたいと考えています。各支部・ブロックにおいても教頭・副校長研修の充実・拡充を図るなど、管理職の資質・能力の一層の向上と管理職間のネットワークの構築を進めていきます。

 現在、道教委主催で代表校長研究協議会が年4回、全道高校教育改善研究協議会がオンラインの形で年2回開催されています。本協会では、各支部長を通して、会員校長から道教委の施策についての質問・意見・要望・提言等を集約し、事前に道教委に提出して回答を得た上で研究協議に臨んでいます。広域にわたる本道高校の学校経営上の課題や学校現場の困り感を伝え、実態や状況を踏まえた適切な対応・対策を進めてもらうために、新年度もこの形は継承して実効性のある研究協議会としていきたいと考えています。

北海道高等学校校長協会会長 廣田定憲 氏

 昭和59年北海道大卒。平成16年奥尻高教頭、18年美瑛高教頭、21年札幌東高副校長、24年知内高校長、26年静内高校長、28年北広島西高校長、29年札幌北陵高校長を経て、31年から札幌南高校長。

 昭和36年7月30日生まれ、60歳。虻田町(現洞爺湖町)出身。

(関係団体 2022-01-19付)

その他の記事( 関係団体)

北社研が社会科教育冬季セミナー 小池会長 成長の礎築く一年に 社会に参画する資質・能力育成

道社会教育研究会冬季セミナー  道社会科教育研究会(=北社研、小池千秋会長)は15日、ホテルライフォート札幌で第15回社会科教育冬季セミナーを開いた。小・中学校の教員など約40人が参加。実践発表や講演を通し、社会科教育に...

(2022-01-21)  全て読む

網走市学校経営研修会開く 3つのサイクルで改善 網走小・吉田校長が実践発表

網走市学校経営研修会  【網走発】網走市校長会(木野村寧会長)と網走市小中学校教頭会(三村文弥会長)は13日、市内のオホーツク文化交流センターで本年度学校経営研修会を開いた。網走小学校の吉田昌広校長が実践発表し、...

(2022-01-21)  全て読む

真の共生社会実現に向け 新春インタビュー 4種校長会に聞く④

4種校長会インタビュー特別支援学校長協会友善会長 ―校長会としての新年の展望をお聞かせください。  一昨年実施の予定がコロナ禍において異例の延期となり、昨年、緊急事態宣言下に実施されたオリンピック・パラリンピック。様々な意見が行き交う中で...

(2022-01-20)  全て読む

「公共の扉」の扉を開く 高教研研究大会でシンポジウム 学力観・授業観の転換を

 道高校教育研究会(=高教研、林恵子会長)が12・13日にオンラインで開いた第59回教育研究大会(17日付1面既報)では、2日目に教科別集会で14の部会を開催した。このうち地歴・公民科部会(...

(2022-01-20)  全て読む

道特長 ICT機器調査研究 端末の授業活用 84% 人材確保・クラウド接続等課題

GIGAスクール構想推進の課題表  道特別支援学校長会(友善学会長)は、調査研究「GIGAスクール構想に基づくICT機器活用の現状と課題~特別支援教育におけるICT機器の効果的な活用の在り方」をまとめた。ICT機器を授業で活...

(2022-01-19)  全て読む

高相研が第50回記念研究大会開催 子の実情知り寄り添って 講演やシンポジウムで研鑚

高相研会長あいさつ  道高校教育相談研究会(=高相研、上田智史会長)は14日、「変化の激しい多様性の時代をしなやかに生きる力を育む教育相談を目指して」を研究主題に、オンラインで第50回記念研究大会を開いた。開会...

(2022-01-19)  全て読む

釧路市小中学校校長会が学校経営研 子の可能性を広げて 新時代展望した学校経営とは

 【釧路発】釧路市小中学校校長会(伊藤晃一会長)は7日、釧路教育研究センターで学校経営研究協議会を開いた。市内小・中・義務教育学校の校長40人が参加。講演や分科会協議を通して、新しい時代を展...

(2022-01-18)  全て読む

健康・安全第一に学びを 新春インタビュー 4種校長会長に聞く ②

4種校長会インタビュー道中学校長会三浦会長 ―校長会としての新年の展望をお聞かせください。  昨年を振り返ると、道内では2度の緊急事態宣言を引き起こした新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、教育、経済、医療などあらゆる分野において、...

(2022-01-18)  全て読む

【新春インタビュー 4種校長会長に聞く①】北海道小学校長会 会長 吉田信興

校長会インタビュー・道小吉田会長  ―校長会としての新年の展望をお聞かせください。  令和4年は、高校で新学習指導要領実施の年。幼保小中高特が一本につながって同じ方向に向かい、同じ資質・能力を育んでいく教育が本格的に始...

(2022-01-17)  全て読む

教職員との信頼関係を 道高校長協会後期研 廣田会長

高校長協会廣田会長  道高校長協会が11日に開催した3年度後期研究協議会・全国高校長協会北海道ブロック研究協議会(13日付1面既報)における廣田定憲会長のあいさつ概要はつぎのとおり。  会長に就任してすぐの2...

(2022-01-17)  全て読む