【新春インタビュー 4種校長会長に聞く①】北海道小学校長会 会長 吉田信興(関係団体 2022-01-17付)
北海道小学校長会・吉田信興会長
―校長会としての新年の展望をお聞かせください。
令和4年は、高校で新学習指導要領実施の年。幼保小中高特が一本につながって同じ方向に向かい、同じ資質・能力を育んでいく教育が本格的に始まります。小学校に勤務する者として、幼児教育と中学校教育をつなぐ重責をしっかり果たしたいと新年を機に強く思った次第です。
教員免許更新制は廃止の方向となりました。そこで新たな「教師の在り方」「校長の在り方」と更新制に代わる新たな研修の方向性が検討されています。昨年11月15日に示された「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会検討の方向性(案)の中で、「〝教師個人”は教員免許で担保される基礎的な資質能力を備えた上で、それを越えた強みや専門性を発揮することが求められる」と書かれています。その基礎的な資質能力の具体例が3つの観点で示されています。
教職の素養の観点では「常に学び続けようとする」「組織の中で自らの役割を果たそうとする」「連携協働を通じて課題を解決しようとする」など、学習指導の観点では「子どもの心身の発達や学習過程に関する理解」「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」「学習者中心の授業の創造」などが、生徒指導の観点では「子ども一人ひとりの良さや可能性を伸ばす姿勢」「個々の悩みや思いを共感的に受け止める」「自分らしい生き方を実現するための力を育成する」などが書かれています。
これらは教員免許を持っている以上、身につけているべき教師の基礎的な資質能力です。その上で、教師個人は強みや専門性を発揮し資質・能力を膨らませていくという研修イメージのようです。
日本中の教職員がこれらを共有し、理解し、これまでの自己を顧みて、目の前の子どもに真正面から向き合うことが最も求められていると思います。さらに、校長には、教職員同士の豊かな関わり合いの場をつくることや、学校内外の環境に関する様々な情報を収集、整理、分析して経営に当たることが求められており、北海道小学校長会としても道内20地区980人の校長のため、国内や道内の情報を発出したり、各地区の声を受け止めて、国や道に要望、意見したりするよう努める一年にしたいと考えます。
―校長会の抱える課題と対策をお願いします。
▼個の学びの世界の充実
令和の日本型学校教育の学びのスタイルは、個別最適な学びと協働的な学びです。まず個の学びがあり、さらに、多様な仲間と関わり合いながら学び、それを個の学びに生かすという個の学び重視が特徴です。
そのために前倒しで導入された1人1台端末は、個の学びの世界を広げ、加速させる絶好のアイテムであり、ドリルをはじめ様々な学習機能を有効活用していただきたいと考えます。学びの世界が個別になれば、当然、教職員の子どもへの関わりも個別になっていきます。
中央教育審議会答申には個別最適な学びを支える指導の個別化をつぎのように定義しています。
「個によって子どもの成長やつまずき、悩みなどの理解に努め、個々の興味・関心・意欲等を踏まえてきめ細かく指導・支援する」。つまり、個に寄り添った積極的な評価、支援がこれからの教育には欠かせません。
▼主体的・対話的で深い学びの授業改善の定着
小学校は学習指導要領2年目を終えようとしています。運悪く新型コロナウイルス感染症も並行して流行しました。臨時休業や学年学級閉鎖等があり、教育活動がスムースに進まなかったことは否めません。
しかし、目玉であり核である主体的・対話的で深い学びが推進できない要因にはならないと考えます。道内には「一律の一斉学習が継続されている」「児童は、先生の話を聞く人、先生はできるだけ分かりやすく解説する人という立ち位置を抜け出せずにいる」と現状を何とか改善したい校長先生もいます。
今一度、学習指導要領の趣旨や令和の日本型学校教育に求められる教師の基礎的な資質・能力を全教職員で共有し理解を深め、授業改善の定着を図っていただきたいと思います。
▼ICTの積極的、有効的活用
これらの学びのスタイルと授業改善の定着に向け、大きな役割を果たすのが1人1台端末であり、周辺機器を含めたICTの活用です。学習対象に個が深く関わったり、仲間への発信や仲間からの受信、そして交流へと関わりを広げたりする有効な手段であります。
北海道は広大であり、様々な規模の学校があることから、近隣の学校同士でつながりながらの合同授業を日常的に行っている自治体もあります。子どもの学びのため、より積極的な活用が大切です。
そのためには各学校で教職員と子どもたちが快適に端末を活用するための条件整備が必須です。3年度の文部科学省補正予算が国会で認められ担任以外の教職員の端末の整備や周辺機器の整備のために2分の1を補助する予算がつきました。各自治体で声を出して実現を目指したいと思います。
併せて、ICTを支援する人的な条件整備や地域全体の通信環境の整備などは今後も道や国に対して、道小から声を出し続けていきます。
▼子どものための学校の働き方改革の実現
道教委の学校における働き方改革の手引『Road』に基づいた学校の働き方改革が取り組まれています。本年度は、重点項目や達成目標も具体的に示されており、前年度以上に進んでいると思われます。
しかし、このような声も聞こえます。「やるべきことはやっているが、教師の個々の意識という点では課題がある」。さらに、保護者からは「先生方のための働き方改革なのではないか」という声も聞こえます。つまり、学校の働き方改革の本来の目的である子どもと向き合うための時間を生み出すという理解が教職員にも保護者にも不足していたり、子どもの教育活動の充実と学校の働き方改革がつながっていなかったりするのではないかと考えられます。
学校では本来の目的を共有した上で、働き方改革を実現するとともに、子どもの教育活動の一層の充実に努めることが保護者や地域からの理解を得られることにつながると思います。
▼いじめ、不登校、教職員の不祥事への対応
この3点については校長会としても重大な課題と受け止め対策を講じなければなりません。
いじめについては、道教委から組織的な対応不足の指導を受けていますが、併せて個への積極的な理解が重要です。学びの世界も個が中心になりますので“全体”以上に“個”にスポットを当てた理解に努めることで未然防止にもつながると考えます。
不登校の児童は小学校でも1%おり、1年生の不登校が急増しています。様々な要因が考えられますが、学校としてはいじめの対応と同様に、個の理解と個に寄り添った支援の積極的な取組が学校に背を向ける子どもを防ぐことにもなるのではないかと考えます。
教職員の不祥事については、特にわいせつ事案が全国的に多く、北海道でも同様です。子どもを育てる教育公務員であることを強く自覚させるための啓発は重要です。さらに、校長が教職員と個別面談をし、現状の共有や将来への目標の設定、具体的な研修の在り方などを話し合う中から、人としてのつながりを築くことが未然防止にもなるのではないかと考えます。
▼研修体制の充実と要望活動の推進
教育研究大会はここ2年間、参集型の開催をしておりません。第65回教育研究旭川大会は9月9~10日に参集型で開催予定です。新型コロナウイルス感染症拡大の影響がある場合に備え、ハイブリッドタイプの開催も視野に入れ、旭川市小学校長会を中心に道小の会員全員の力を結集していきたいと思います。
道小では毎年5月に『北海道文教施策・予算策定に関する要望書』を提出しています。各地区からいただいた要望をまとめ、次年度に向け、道中学校長会、道公立学校教頭会とともに道教委に要望しています。これは夏に行われる道教委との意見交換会・各課懇談会にも活用されるものであり、すでに各地区への働きかけを行っているところです。道小は全国連合小学校長会とも連携し、北海道の実情や意見を文部科学省・関係行政機関・国会議員や地方議員等への意見表明や要望活動にも結びつけています。
―新年度の重点的取組を伺います。
道小ではここ数年「チーム北海道」を掲げ、活動を進めてきました。新年度も道中学校長会、道公立学校教頭会はもちろん、道教委や各市町村教委等の教育関係諸機関と連携を図りながら、新型コロナウイルス対応も含めた、学校現場がその時々に直面する様々な教育課題の解決に向け、各地区校長の声を聞きながら、取り組んでいきたいと考えています。
【吉田 信興氏】
昭和60年道教育大札幌分校卒業後、札幌市立真駒内曙小学校に赴任。平成21年札幌市立平岸小教頭、26年札幌市立札苗緑小教頭、29年札幌市立川北小校長、令和2年札幌市立旭小校長。
昭和36年6月7日生まれ。60歳。札幌市出身。
(関係団体 2022-01-17付)
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