真の共生社会実現に向け 新春インタビュー 4種校長会に聞く④(関係団体 2022-01-20付)
北海道特別支援学校長会会長 友善 学氏
―校長会としての新年の展望をお聞かせください。
一昨年実施の予定がコロナ禍において異例の延期となり、昨年、緊急事態宣言下に実施されたオリンピック・パラリンピック。様々な意見が行き交う中ではありましたが、オリンピアン、パラリンピアンたちが極めて厳しい条件の中、ひたむきに競技に向かう姿に感銘を受けた方々も多かったことと思います。中でも私は、パラリンピックを通し、これまで以上に障がい者スポーツへの理解や関心の高まりに加え、障がいのある方々を含む多様な人たちとの共生へ向けての意識が、大いに高まるきっかけになったと強く感じております。
これを一過性のものとせず、SDGsの理解と実践の広がり、深まりと合わせ、真の共生社会実現に向け、特別支援教育のさらなる充実と発展に向け取り組んでいきたいと思います。
昨年1月、中央教育審議会答申「“令和の日本型学校教育”の構築を目指して」が示され、一昨年の小学部、昨年の中学部に続き、本年4月には、高等部においても年次進行にて新学習指導要領が実施となります。私ども特別支援学校長会としましては、確実な新学習指導要領の実施とともに、ICT教育の積極的な推進によって、個別最適な学びと、協働的な学びの充実を図っていくとともに、答申に示されています「障害のある子どもの学びの場の整備・連携強化」「特別支援教育を担う教師の専門性の向上」「関係機関の連携強化による切れ目ない支援の充実」等について、関係諸機関と連携を図りながら着実に取組を進めていきたいと考えます。
―新年度の重点的取組を伺います。
視覚障がい教育では、4校の視覚支援学校、盲学校において、センター機能の一環として、視覚障がいのある乳幼児から成人の方とその保護者、関係者に対し、医療・保健・福祉等の関係機関と連携を図りながら、見え方の状態に応じた学習や生活等の教育相談、弱視の早期発見等の研修支援を行っており、今後もその継続、内容に充実が必要です。
各校では、在籍者数の減少が続いており、大きな課題となる一方、個々の状態に応じた様々な工夫によって、個別最適な学びの充実に取り組んでいます。
また、ICTを積極的に活用し、4校の幼児児童生徒が北海道盲学校文化体育活動発表大会や合同授業などに取り組むなど、子どもたち同士の協働的な学びの充実につながる教育活動を推進しています。
今後は、道教委のハンズオンプロジェクトによって、4校間の遠隔授業や、小・中学校、高校等との連携授業へと段階的に範囲を広げ、4校の教員の教科指導力の向上および幼児児童生徒同士が学び合い教え合う協働的な学びの充実に向けた活動を推進します。
また、視覚支援学校・盲学校4校が連携・協働して、道内に広域点在する弱視の子どもの早期発見・早期療育につながるよう保健センター等と連携体制を構築し、地域の視覚障がい教育のセンターとしての役割を一層充実させていきます。
聴覚障がい教育では、7校の聾学校等(釧路鶴野支援学校を含む)が特色ある教育を推し進めるとともに、地域の聴覚障がい教育のセンターとしての役割を担っています。
学習指導では、コミュニケーションにおける多様な方法を活用しつつ、言語の獲得と活用のための学習や、言語を基盤とした各教科等の学習など、基礎的・基本的事項の習得を目指して取り組んでいます。
近年、人工内耳装用児や重複障がい児の在籍率が増加傾向にあり、障がいの多様化が進んでいます。そのため、一人ひとりの児童等に応じた学習指導の充実を図るため、ICTを活用するなどして個別最適な学びの充実を進めています。
また、各聾学校においても児童生徒の減少傾向が進む中、道内外の聾学校とのオンライン交流を通し、協働的な学びの充実に取り組んでいます。
教職員の専門性の向上に向けては、ウェブ会議システムを積極的に活用し、各校で実施する研修会に相互に参加できるようにしたり、北海道聴覚障がい教育研究大会などの全道規模の研究会も実施されています。
今後は、各校で保有している研修資料等をクラウドで共有し、いつでも必要な研修が受けられるシステムを構築したいと考えています。
本年度、音声文字変換システムが導入され、児童等の学習の理解促進のために活用するとともに、聴覚障がいのある教職員への情報保障にも活用できるようになりました。今後一層、聴覚障がい児・者が学びやすい、働きやすい学校となるよう合理的配慮の充実を進めていきたいと考えます。
知的障がい教育校は、私立、附属を含めて全道に42校設置されています。小学部、中学部、高等部の3学部が併設されたいわゆる義務校と(苫小牧支援学校は小学部、中学部のみ)、高等部単独のいわゆる単置校とがあります。都市部の義務校では就学を希望する児童生徒は増加の一途をたどり、深刻な教室不足の状態にあり、狭あい化は一層進んでいます。昨年9月、文部科学省から特別支援学校設置基準が公布されましたが、多くの義務校でこの基準を満たすことができず、必要な教室数の確保など、学習環境の改善が急務となっております。
高等部教育においては、障がいの程度によって選択する高等部から、学ぶ内容によって選択する高等部へと転換して2年が経過しました。4年には転換後に入学した生徒が進路選択を迎えます。学ぶ内容の趣旨が生徒のニーズに合致しているか、高等部の生徒の進路状況がどのように変化したのかを検証する必要があります。また、単置校ではものづくりを主とした学科が多数設置されており、設備の老朽化が課題となっています。今後の高等部の在り方とも合わせ道教委、関係各所と協議していく予定です。
知的障がい教育校でもオンラインでの会議や研究会がスタンダードとなり、どのような状況でも顔を合わせ情報交流ができる体制ができました。5年度には全国知的障がい教育校長会の全国研究協議大会が北海道で開催される予定となっており、感染状況を見極めながら準備を進めていきます。
肢体不自由・病弱教育では、平成31年3月に、校長会と副校長・教頭会で今後の学校経営の指針となるビジョンを策定し、学校間で連携・協力しながら課題解決に向けた取組を進めてきました。この連携・協力のツールとして、これまでICTを積極的に活用し、児童生徒の交流、教職員の研修、管理職の情報交換などで取組の成果が得られています。今後は、こうした取組を一層充実させながら、各学校で授業改善を図り、多様化する教育的ニーズに対応するための学校全体としての教育力を高めたいと考えています。
肢体不自由関係では、昨年8月に肢体不自由養護学校体育大会を初めてオンラインで開催しました。参加した7校の選手たちは、全道大会であることを意識し、真剣に競技に取り組んでいました。次年度以降も、同じ形式で大会の目的が達せられるよう改善を図っていく予定です。
また、道教委のICTを活用した学びのDX事業の推進校2校と特別支援学校ICT就労促進事業の実践校2校(1校は病弱)の成果と課題等を共有し、各学校の授業改善につなげていきたいと思います。
病弱関係では、八雲養護学校の移転によって開校した手稲養護学校三角山分校と市立札幌山の手支援学校の2つの学校が同一の校舎で教育活動をスタートさせてから、次年度は3年目を迎えます。この間、両校では新校舎での円滑な教育活動に向けて連携・協力するとともに、可能なところから児童生徒間の交流にも取り組んでいます。今後は、授業におけるICT活用の実践をはじめ、本道の病弱教育の充実に向けた情報発信を積極的に進めていきたいと考えています。
▼結びに
コロナ禍において2度目の新年を迎えることとなり、間もなく3度目の卒業式、入学式を迎えなければなりません。当面コロナ禍での学校経営を標準とし、引き続き児童生徒の命と健康、学びを守る取組を重ねつつ、心のケアに努めながら、ICTの積極活用を図り、望ましい児童生徒の成長を図っていかなければなりません。
また、特別支援学校長会では、昨年から取り組んでおります、本道における特別支援教育の基本方針策定に関わる提言について、まとめの時期となっており、今後、5年間の指針として達成可能な、より具体的なものを取りまとめていきたいと考えます。今後とも特別支援学校長会の活動に、ご理解、ご支援の程お願い申し上げます。
(関係団体 2022-01-20付)
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