苫前町教委 苫前商業高校商業部活動支援事業 生徒の企画・実践を支援(学校 2022-01-21付)
地域住民とともに走行ルートやルールなどを検討した
【留萌発】苫前町教委は、本年度から苫前商業高校(藤田和秀校長)の商業部活動支援事業に取り組んでいる。生徒がイベントを企画立案し実践するのを支援し、同校の魅力化推進や生徒の達成感・自己肯定感の醸成、地域との交流促進などを図るもの。既に自転車ツーリング事業や町のイベントへの出店などを経験し、来年度に向けて自ら改善点を探るなど、日々の学習に意欲的に取り組む姿が現れている。
苫前町教委は、他者との交流を通して地域への興味・関心を高め、地域に根差して自主的に活動する青年層を拡充しようと、平成29年度から「未来ビジョンミーティング事業」を実施。前年度から苫前商業高の生徒も加わった。
しかし、前年度は生徒たちも含め「今後実施してみたい事業案」を作成したものの、新型コロナウイルス感染症のため、企画が実現する機会はなかった。
また、同校の入学生が減少し、魅力ある活動が求められることから、生徒からの提案を町教委社会教育課が受け付け、事業の実現化を支援する「苫前商業高校商業部活動支援事業」を本年度からスタート。生徒のやる気と自己肯定感を醸成し、地域との交流を促進させることで、同校の魅力化を図ることとした。
同校の商業部には全校生徒が加入している。
昨年7月には、事業の初弾として、留萌市や深川市、幌加内町など220㌔㍍を走破する自転車ツーリング事業を計画。生徒が地域住民とともにツーリングのルートや持ち物、走行時のルールなどを話し合いながら内容を決定。2泊3日の日程で仲間とともに220㌔㍍を走破した。
10月にはツーリング事業を踏まえ、サイクルラックづくりを実施。地域活性化に向けて産官学協働でサイクルラックを製作した。設置個所は、ツーリングの経験からどのような場所が最適かを検討した。
また、11月には町教委からの依頼で、町の公民館フェスティバルに「TOMAカフェ」を出店。一からメニューづくりや会場設営を実施。生徒が開発した「もちもち米ベー」「カボレーヌ」などを販売したほか、プロ直伝の味わい深いコーヒーを町民に提供し、町のイベントを盛り上げた。
事業について町教委は、高校生が地域住民など多くの大人と交流する機会が増えたことで「生徒が地元の農業や漁業でアルバイトをしたり、社会教育事業へのボランティアに積極的に参加したりと、効果が見られている」と成果を語っており、来年度以降も取組を継続することとしている。
同校では、校内の限られた人間関係のみならず、大人に混じって様々な事業の企画運営から参加することで「生徒が自信を持ってコミュニケーションを取っている」「自分たちの企画が実現することで、生徒の自己肯定感がより一層育まれているのでは」と話す。
また、TOMAカフェについては、商品の提供に時間がかかったことなどを踏まえ、来年度の実践に向けて、生徒自らが注文伝票を振り返り、人気の傾向を踏まえたメニューを再考するなど「日々の学習に課題をもって意欲的に取り組んでいる」と話している。
町教委と苫前商業高では、事業の成果を踏まえ、来年度以降も引き続き取組を継続し、高校の魅力化や地域の活性化につなげたい考え。
仲間とともに220㌔㍍走破
初弾はツーリング事業に
地域と協働で日程やルート決定
昨年7月の3日間、生徒が企画し、地域住民とともにルートや日程などを決めた高校生自転車ツーリング事業を実施。9人の生徒が留萌市や深川市、幌加内町など、220㌔㍍の道のりを仲間とともに走破した。
生徒が企画から事業実施までを経験することで、自分たちで考え、つくり上げた事業の達成感を体験するほか、普段できない体験をやり抜くことによって生きる力を育み、自己肯定感を高めることをねらった。
6月から企画会議をスタートし、地域住民とともにツーリングのルートや日程、走行時のルール、安全確保対策、持ち物などを決めた。
7月に同校教諭や町教委職員、シーニックバイウェイ北海道・萌える天北オロロンルート運営代表者会議のガイドライダーとともに同校を出発。
留萌市や深川市、幌加内町を回り、2泊3日で同校へ向かうルートで、道中ではネイパル深川で宿泊したほか、苫前町の農家から苫前メロンの提供を受けるなど、様々な人々の協力を得て、220㌔㍍の道のりを仲間とともに走破した。
参加した生徒は「完走ができ、貴重な3日間になった」「いろいろな方の支えのおかげで走り切ることができた」などと、感謝の気持ちと、やり切った達成感を味わった。
産官学で木製ラック製作
サイクリストの受入環境向上
地域活性化の起爆剤に
昨年10月、同校生徒、町教委、道路を管理する留萌開発建設部の職員などで、地域の活性化に向けてサイクルラックを製作した。
サイクルラックは、ロードバイクなど、サイクリング用の自転車には、スピード向上のため車体を路面に止めるためのスタンドがついていないものが多いことから、車体を立てかけられるよう設置を企画した。
全国的に地域活性化の起爆剤としてサイクルツーリズムの振興が図られている中で、サイクリスト受け入れ環境向上による地域活性化に向けて、産官学協働でサイクルラックを製作した。
当日は、同校生徒はじめ苫前町教委職員、シーニックバイウェイ北海道・萌える天北オロロンルート運営代表者会議、留萌開発建設部職員ら約30人が参加。
3グループに分かれ、木材に穴を開けて塗装。ボルトの打ち込みや固定などをしてサイクルラック12個を組み立てた。
このあとワークショップを実施。生徒たちは自転車ツーリング事業の経験を踏まえ、サイクリストが通る観光ルートなどから、サイクルラックを設置する場所について意見を交わした。
製作したサイクルラックは雪解けを待ち、来年度に設置する予定となっている。
町の祭典にカフェ出店
来年度に向けた改善にも意欲
自力でメニュー開発や会場設営
町教委の依頼を受け、昨年11月には町の公民館フェスティバルに「TOMAカフェ」を出店。生徒が開発した商品や味わい深いコーヒーを町民に提供した。
町では、毎年公民館フェスティバルを開催しているが、新型コロナウイルス感染症の影響で舞台発表を中止。舞台に代わるものとして出店を企画し、町教委が同校に依頼した。
同校では毎年、札幌市で実施している販売会がコロナ禍の影響で中止となったこともあり、出店を通して日ごろ学んでいるマーケティングを現場で生かすことをねらった。また、学校やその取組を広く知ってもらうことを目指した。
生徒は、自分たちで一からメニューを作成し、米粉を使用したもちもち食感のカステラ「もちもち米ベー」や、かぼちゃのマドレーヌ「カボレーヌ」、ミルク餡を生地で包んだ饅頭「150年かまくら」など独自の商品を開発。
また、同校卒業生が札幌市でコーヒー店を経営している縁から、そのコーヒー豆を仕入れ、卒業生からプロ直伝のドリップを学習した。会場設営なども生徒だけで挑戦した。
当日は生徒26人が参加した。精魂込めて開発したメニューや、ワンコインランチなどを提供。プロ直伝の味わい深いコーヒーを町民に提供し、いずれも早々に売り切れるほど好評を博した。
現場での実践を通して生徒たちは「メニューが多く、お客さんを待たせてしまった」「来年は動線や提供方法の流れを変えたい」と既に改善点を洗い出しており、注文伝票から人気の傾向を踏まえたメニューを再考するなど、来年度の実践に向けて、日々の学習に意欲的に取り組んでいる。
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自分たちで企画したルートを仲間とともに走破した
大人たちと力を合わせてサイクルラックを製作した
プロ直伝のコーヒーも提供。好評を博した
(学校 2022-01-21付)
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