後志管内 高校ICT活用授業の取組~新たな時代見据えた授業づくり~ 高校で1人1台端末を実現 町村支援で家庭負担なく(学校 2022-01-24付)
留寿都高校・端末で単語を検索し、正しい発音を学んだ
【小樽発】本年度、義務教育段階では1人1台端末の整備が完了し、新年度からは高校でBYODによる授業が開始となる。この動きに先駆けて、後志管内の高校では地元教委の支援を受け、ICT端末を活用した様々な授業に取り組んでいる。インターネットを使った調べ学習や、プレゼン資料の作成、タブレット端末からの課題提出・出席確認、オンライン授業の実施によるコロナ禍の学びの保障や、進路希望に応じた高度な遠隔配信授業など、新しい時代に対応した3校の取組を取材した。
◆留寿都高校 興味・関心に大きな効果 動画や写真で理解度向上 学びの保障・業務改善等多角的に
留寿都高校(齋藤讓一校長)は、留寿都村教委から貸与されたタブレット端末を用いて、前年度からICT授業を試行。本年度、新たに60台の端末の貸与を受け、8月から全学年で1人1台端末を活用したICT授業を展開している。
1学年の英語の授業では、教師が自身のタブレット端末の画面を黒板に映しながら指導。生徒も自身の端末を使用し、聞き取った英文をアプリを使って打ち込んだり、インターネット上で検索し、英単語の正しい発音を調べて聞き取ったりと、ICTを活用し効率的に授業に取り組んでいる。
英語科教諭の増井誠一教務部長は「ICTを活用した授業は、直感的に生徒にイメージを伝えられる」とそのメリットを挙げる。
例えばコーヒー豆の収穫について説明したいとき、タブレット端末を使えば動画や写真を映し出して、その様子や情景を視覚的、聴覚的に分かりやすく伝えられる。「言葉だけで説明するより、生徒たちも理解しやすく、学習に対する興味・関心が深まっている」と、ICTが高い成果を上げていることを語る。
また、ICTは、生徒の学びを保障する手段としても、その効果が発揮されている。
昨年の夏には、部活動の大会などに出場し、新型コロナウイルスの影響で自宅待機となった生徒に対し、端末を使ったオンライン授業を実施。教室にカメラを設置して授業をライブ配信し、生徒は自宅から授業を受けた。
受講した生徒は「先生とのコミュニケーションもオンライン上でできたので、いつもどおり授業を受けることができた」と感想を述べた。
このほか、同校では教員用のタブレット端末も用意し、時間割作成など多角的に活用。業務改善につなげている。
齋藤校長は「村教委にICT環境を整備してもらい、各家庭に負担を強いることなく、タブレット端末を活用した授業を始めることができた」と感謝。
その上で「ICT機器はあくまで手段の一つ。ICTを活用した授業を目的とせず、筆記用具を使うのと同じように、当たり前にICT機器を使うようになれば」と期待している。
◆寿都高校 双方向で個に応じた指導 寿都町・島牧村支援で1人1台端末 家庭負担軽減に向けサポート
寿都高校(苅屋正人校長)は、寿都町教委と島牧村教委からの支援を受け、3年4月から、全校生徒1人1人にタブレット端末の貸与を開始。全教科で1人1台端末を活用した授業を実施している。
同校では平成28年度から、道教委の「ほっかいどうICT活用教育加速化事業」に基づき、難関国立大学等への進学を希望する生徒に対し遠隔システムを活用した授業を行ってきた。道教委から支給されたテレビや遠隔システムを使い、双方向でライブ配信しながら授業を展開。本年度からはタブレット端末も活用し、道高校遠隔授業配信センターから配信される国語・数学・英語・書道の授業を遠隔で行っている。
1人1台端末が整備されたことで、生徒が取り組んだ課題プリントを端末で撮影し、画像を教員にメールで送信、画像をもとに教員が採点するなど、生徒と配信校の教員とのやり取りがより綿密になり、より個に応じた指導が行われている。
通常の授業では、調べ学習や小テストなども端末を使い実施。発表学習に向けたまとめなど、プレゼン活動にも端末を活用。生徒が他の生徒の発表を評価する際も、意見や感想などを端末から記入している。
例年、寿都町内の小・中学校と合同で行っているキャリア教育合同発表会も、端末を活用してオンラインで開催。同校1年生は、SNSを使った町のPRなどについて、パワーポイントなどを使用し資料を作成。1年間のキャリア教育の成果を発表した。
寿都町教委では、教員のスキルアップを目的に前年度からICT研修会を実施。高校への端末貸与開始を受けて小・中・高校の教員を対象に合同研修会も開催。プログラミング教育の操作や小テスト・アンケートの作成、動画編集ソフトの使い方など、授業での活用を想定した操作方法などを教示した。
町教委は、今後も定期的に研修会を行い、最新情報を共有していく考え。
また、端末の貸与に当たっては、マイクロソフトのアカウント発行やシステムのバージョン更新なども町教委が実施することに。担当者は「何をどうすればいいのか分からない保護者もいると思う」と話し、「端末貸与はもちろんのこと、各家庭の様々な負担の軽減を少しでも図れれば」と期待していた。
◆蘭越高校 希望進路に応じ遠隔授業 ICTで意見交流活発化の効果も 来年度町が1人1台端末整備
蘭越高校(藤田博史校長)は、元年度から段階的にタブレット端末を導入し、ICT授業を実施してきた。昨年は6台のタブレット端末のほか、PC教室のパソコンも使用し、全学年の各授業でICTを活用した授業を展開した。
台数が少ないため、少人数授業では1人が1台ずつ端末を使い、クラウドサービスを用いた学習物の提出などを実施。
大人数の授業では、複数人のグループで1台の端末を使い、調べ学習やまとめ学習を展開する。また、大人数でも1人1台端末を使う場合はPC教室に移動し、備え付けのパソコンも活用してICTによる授業を行っている。
3年生国語の少人数授業では、1人1台端末を活用した授業を展開。「和の思想、和の文化」について学ぶ単元で、生徒は47都道府県の中からランダムに1つを選択し、地域の郷土料理を3つ調査し紹介した。
郷土料理の調べ学習にタブレット端末を活用したほか、パワーポイントで発表資料を作成。発表時には資料を黒板に映し出し、プレゼンテーションを行った。
国語科の岡田脩大教諭は、1人1台の端末整備について「グーグルドライブなどを使い、離れたところから複数人で1つのものをつくり上げることができるようになる」と期待。「模造紙などを使用した資料作成は1ヵ所に集まる必要があったが、端末を活用すれば、好きな時間に好きなところで作業を進めることができる」と利点を語る。
また、「ワードなどで感想や意見を打ち込んでもらい、その中から教師が黒板に投影すれば、意見交流もより効率的になり、活発になるのでは」と話し、「今後も、コミュニケーションを中心にICT授業を展開していきたい」と語る。
また、同校では生徒の可能性を引き出し、希望する進路の実現につなげる教育活動を展開。進学を目指す生徒のため、1学年の数学Ⅰの授業では、道高校遠隔授業配信センターとオンラインでつなぎ、映像や音声を双方向でライブ配信。少人数で授業を展開し、一人ひとりが端末を使いながら配信センターからの指導を受けた。長期休業中には、数学と英語の進学講習も配信授業で実施した。
今後は、大学進学等の希望に対応した教科・科目を増やし、希望する進路の実現に向けた教育活動の一層の充実を図る考えだ。
来年度からの1人1台端末の授業開始に向けて、昨年末に道教委から、経済的理由で端末の整備が難しい家庭用に12台のタブレット端末が同校に支給された。蘭越町教委は、全校生徒に端末を無償で貸与できるようにすることを決定。「家庭に負担を強いることなく学習環境を整え、高校の魅力度向上につながれば」と話す。
同校は「1人1台の端末が貸与されることで、これまで取り組んできたICT授業が、より一層充実するはず」と期待している。
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寿都高校・生徒の発表に対して、他の生徒は端末を使い評価・意見・感想を送った
蘭越高校・端末を活用し調べ学習やプレゼン資料の制作を行った
(学校 2022-01-24付)
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