全国学力・学習状況調査 全ての児童生徒が、全国平均+10へ 宗谷教育局と管内市町村教委が学力向上へ連携 子どもの未来保障の実現を 必要な資質・能力を「今」、確実に
(道・道教委 2022-01-31付)

全学力・豊富小
授業改善チームの遠山教諭(左)との算数のTT授業

 【稚内発】宗谷教育局は、2年度から管内市町村教委と連携し「全国学力・学習状況調査で、全ての児童生徒が、全国平均+10ポイント」を目標に掲げている。目標実現のための学校経営の充実や教員の資質・能力の育成、授業改善について指導助言。昨年5月の全国学力・学習状況調査では、管内全体で前回調査よりも平均正答率が上昇した。ここでは、教育局の取組と、管内の放課後学習、授業改善、ICT活用の取組を紹介する。

 宗谷局は、2年度から管内市町村教委と連携し「全国学力・学習状況調査で、全ての児童生徒が、全国平均+10ポイント」を目標に掲げ、学校経営の充実や教員の資質・能力の育成、授業改善について指導助言を行っている。

 本年度は、重点テーマを「子どもの未来保障+10」に設定。未来を生きる子どもたちに必要な資質・能力を「今」、確実に身に付けさせることを意味しており、3年度の重点を6項目設定した。

 前半の3点は、生涯を通じて学ぶため、①学力保障②業務改善③施策理解・推進―とした。具体的な取組として、まず、管内の教育長や校長会の代表者らで構成する管内学力向上推進会議で「全国学力・学習状況調査で、全ての児童生徒が、全国平均+10ポイント」を目標に掲げ、実現のための指導助言を行った。

 また、「教員にとって授業が最も重要」と考え、子どもの資質・能力を育成する授業改善について指導助言。児童生徒の資質・能力の状況に応じて迅速に教育課程を改善できるよう、変化に対応できる教育課程の編成・実施を指導助言している。

 また、児童生徒の資質・能力の定着状況を確実に把握し改善するよう指導助言。予測困難な時代に生きる児童生徒への教育施策をしっかり理解し推進する学校づくりと、短期的な成果検証の継続も促している。

 後半の3点は、北海道への愛情を持ち、未来を切り拓く人づくりのため、④地域課題の共有⑤安心・安全な環境の保持⑥生涯学習の充実―と定めた。

 具体的な取組は、学校と地域住民が課題の共通理解を図るとともに、学校の教育活動の成果・状況を地域住民等に正しく理解してもらうよう、コミュニティ・スクールの導入を働きかけ、学校評価に数値目標を位置づけるなどの改善・充実を図るよう指導助言。

 また、学校と地域との連携・協働が円滑に進むよう、校務分掌へ地域連携担当部署の設置を要請。

 さらに、全ての児童生徒が、自らの個性を発揮して、安心して学ぶことができるよう、児童生徒理解を深め、寄り添い、他者を尊重し安心して学ぶことができる人間関係づくりなどについて指導助言を行っている。

 こうした取組を推進してから初の学力調査において、前回よりも管内の平均正答率が向上。小学校国語では「知識・技能」が全国正答率より0・1ポイント高い68・9%に。「話すこと・聞くこと」では、北海道の正答率と同率の75・4%となった。

 田中賢一局長は「管内全体で一定の成果があった」と話す。一方で、正答率が低く授業が分からない児童生徒が一定数いることから「正答率が低い子どもたちを一人でも多く、学習を分かるようにしなければならない」と指摘。

 課題解決に向け、「各市町村教委と学校が協力して、学習が分からない子どもを救う取組をしてほしい」「学習が分からない子が“どこでつまずいているか”、逆に“どこまで分かっているか”を現場の先生がしっかりと把握することが重要」と話した。

 また、今後の展望として「義務教育で育成する力は、社会で生きていく力の基になるもので、確実に身に付けさせることが重要」「児童生徒自身の自己実現に向けた力をしっかりとつけるという観点で、学校での授業や教育活動を行ってほしい」と話し、教育局としても、「しっかりサポートし“子どもの未来保障”を実現したい」と語った。

豊富小と幌延小が共同で取組

つまずきに迅速に対応

道教委の推進チーム活用

授業改善

 豊富町立豊富小学校(三野宮誠一校長)と幌延町立幌延小学校(塩原悟校長)は、共同で授業改善の取組を進めている。道教委の授業改善推進チーム活用事業の一環。 

 同事業は、児童の学力向上に積極的に取り組もうとする複数の小学校に1人ずつ授業改善推進教員を配置し、推進教員からなる「事業改善推進チーム」を活用して学校全体の授業改善に取り組むもの。

 本年度から豊富小と幌延小が共同で事業を実施。豊富小の遠山静香教諭と幌延小の伊佐拓人教諭が推進教員を務め、算数と国語の研究を推進。現在は算数をメインに取り組んでいる。

 「算数の〝説明″の問題では、何を説明するのか、子どもに説明の視点を持たせてから始めると道筋が見えやすくなる」「この数字は何か、この式は何を求めているのかという“事実”と、どんな手段を使ったのか、どう考えたのか、どんな手順で解いたのかという“方法”、何をもとに考えたのか、なぜその答えになるのかの“理由”を意識させることが必要」

 など、授業の指導方法を探究し、授業改善チーム通信『かけはし』で各教諭と情報共有を図っている。

 また、ノート指導をテーマにしたものでは、統一したい基本的な事柄として、「前から順番に使う」「日付、教科書のページ数、問題の番号を入れる」などを挙げ、ノートがうまく取れないため授業につまずいている子をフォローした。

 遠山教諭は「教員同士の授業改善に向けた話し合いが増えた。多くの教員が授業に関わることで、児童たちの学習のつまずきにいち早く気づき、対処することができ、学習の成果が表れている」と話していた。

利尻富士町 基礎学力向上へ

AIアプリで学習支援

休業時でも授業配信可能

ICT活用

 利尻富士町は、離島のハンデを解消すべくICTの活用を積極的に推進しており、本年度、町内全小・中学校にAIアプリを導入し、学習を支援している。鴛泊中学校(森河真校長)では、家庭学習や自習時間に活用。前期中間テストのテスト勉強でも活躍した。

 町教委は、国が進めるGIGAスクール構想に基づき、小・中学校におけるICT環境整備を進めてきた。一昨年10月には、1人1台のタブレット端末の配備を完了。また、インターネット環境がない家庭には、ポケットWi―Fiを無償提供し支援している。

 2年度は、新型コロナウイルスによって長期休業となった小・中学校でオンライン授業の取組を進めた。

 同時双方向システムのライブ配信授業を行い、配信授業はプラットフォーム上にアップロードすることで授業の復習も可能に。今後、いつ長期休業になっても、ライブ配信授業などを実施するシステムを構築した。

 本年度は、国語、社会、算数・数学、理科、英語の5教科を学習するAIアプリを町教委の負担で全小・中学校に導入した。

 鴛泊中では、AIアプリを昨年5月の連休明けから本格導入。AIが問題を出し、苦手な部分を分析し、その子に合った出題をしてくれるため、家庭学習や自習時間に活用している。また、生徒たちは昨年7月に実施した前期中間テストのテスト勉強にも活用。苦手な教科や単元を復習し成績アップを目指した。

 込山茂教頭は「単元・項目別となっているので生徒自身が苦手な教科を振り返りやすい」と指摘。苦手な問題などの情報は、教員にも送信されるようになっているため「学習のつまずきが教員たちに一目で分かり、指導しやすくなった」と話している。

 町教委の松谷大輝次長は「AIアプリの導入によって、町内の児童生徒たちの基礎学力の向上につながれば」と期待している。

中頓別町 教育長らが学習支援

なかとん学習塾を開講

思考力伸ばし好循環に

放課後学習

 中頓別町は、放課後を活用し「なかとん学習塾」を開講。児童たちの思考力を高める指導を行うことで、学力向上につなげている。

 なかとん学習塾は、児童の学習環境の支援を目的に平成30年からスタート。3年度は、火曜日に算数、金曜日に隔週で国語と英語の授業を行っている。

 現在は小学校4年生から6年生までの24人が利用。講師は町教委の相座豊教育長らが担当し、中学生に指導ボランティアを呼びかけたところ、中頓別中学校3年生の生徒がボランティアでサポートに加わり学習を支援している。

 学習塾では、文部科学省の学習指導要領に倣い、自ら学び、自ら考え、主体的に判断・行動し、よりよく問題を解決する資質・能力を身に付けさせる授業を展開している。

 開講時から教鞭をとる相座教育長は「始めのころ、授業していたときに、児童たちの言語能力・読解力に課題があると感じた」と話す。

 この課題を解決するため、学習塾では、ただ学校の補習を行う場ではなく、思考力・判断力を養う学習を展開。授業では、児童自身が深く考え、答えを導き出すプロセスを重視することで、学力向上につなげている。

 「全国学力・学習状況調査でも、年々点数が上がってきている」と相座教育長。なかとん学習塾で思考力を鍛え、学校の授業に臨むことで、好循環が生まれている。

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全学力・ICT活用.JPG
タブレット端末を使いテスト勉強に励んだ
全学力・中頓別町
児童が深く考え、答えを導きだす過程を重視している

(道・道教委 2022-01-31付)

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