石狩管内4年度教育推進の重点 資質・能力確実に育成 田中局長 全ての子の幸せのため(道・道教委 2022-04-25付)
石狩教育局・田中賢一局長
石狩教育局の田中賢一局長は4月上旬、管内小・中学校長会議で4年度管内教育推進の重点を説明した。「社会で活きる力の育成」「豊かな人間性の育成」など6つの目標を示すとともに「全ての子どもの幸せのために、資質・能力を確実に育成する学校経営を進めていただきたい」と期待した。
田中局長は、4年度石狩管内教育推進の重点における説明に当たって①策定②前年度からの変更点③管内教育推進の重点の概要説明④重点的に取り組むこと―の4点を示した。
概要はつぎのとおり。
【1 策定】
管内教育推進の重点は、北海道教育推進計画および教育行政執行方針に基づいている。
策定に当たって「3年度の管内教育推進の重点の評価」「国や道の各種調査結果」「国の動向」「教育局職員による学校訪問の状況」等から総合的に分析し、管内教育として重点的に進めることを示している。
項目の並びは、それぞれの太枠が「目標」、その中に「項目」「小項目」、その下に「推進の視点」とした。
学校で具体的に進めていただきたいことが「推進の視点」となる。
【2 前年度からの変更点】
前年度からの変更点は4点。1点目は、項目内容を13から12へ変更した。
3年度の目標1「社会で活きる力の育成」の「理数教育の充実」を外した。皆さんの努力によって算数・数学および理科の授業改善で、一定の成果があったため。
2点目は、目標2「豊かな人間性の育成」の1つ目の項目「いじめの防止や不登校児童生徒への支援の取組の充実」で、3つ目の小項目「全教育活動を通じた自他の命を大切にする教育の充実」を追加し、推進の視点を「援助希求的態度の育成に向けた取組の充実」とした。生徒指導上の課題の増加を受け、命を大切にする教育のさらなる充実が課題となっているため。
3点目は、同じく目標2の2つ目の項目「ふるさと教育の充実」で、小項目「アイヌの人たちの歴史・文化等に関する教育の充実および北方領土に関する教育の充実」の推進の視点に「デジタル教材を活用するなど」を追加。直接施設訪問や人材の活用だけではなく、ユーチューブ北海道庁公式チャンネル掲載のデジタル教材などの活用による教育の充実を考えたため。
4点目は、目標4「学びを支える地域・家庭との連携・協働の推進」の2つ目の項目「学校と地域の連携・協働の推進」に、推進の視点に「様々な地域人材を活用した教育活動の推進」を追加。社会に開かれた教育課程の理念に基づき、地域人材などを積極的に活用して、質の高い学びを実現することが求められているため。
【3 管内教育推進の重点の概要説明】
▼目標1 社会で活きる力の育成
▽義務教育における確かな学力の育成
「“主体的・対話的で深い学び”の実現に向けた授業改善」は方策であり、推進の視点「資質・能力の明確化」を図り、確実に全ての子どもに資質・能力を育成するという学びの保障のためであることをあらためて踏まえる。
▽特別支援教育の充実
特別支援教育に変わってから10年以上経つが、ますます特別支援教育の重要性が高まり、それに応じた知識や技能の必要性が教員に求められている。そのため、推進の視点「特別支援教育に関る研修の実施」の充実を図る。
▽情報教育の充実
「1人1台端末を活用した教育活動の充実」で、ICT端末を活用するための目的、つまり、子ども一人ひとりが「個別最適な学びを進めることができること」、さらに「自らの考えを効果的に他者に伝えることができ協働的な学びの充実を図ることができる方策であること」を踏まえ、推進の視点にある「ICTの効果的な活用に向けた研修の充実」を図る。
▼目標2 豊かな人間性の育成
▽いじめの防止や不登校児童生徒への支援の取組の充実
各学校においては、いじめの重大事態が増加する状況等を踏まえ、子どもたちの現状に応じた指導の充実が図られるよう、学校のいじめ防止の基盤となる「学校いじめ防止基本方針」を常に見直し、子どもたち自身が主体的に考える場を設定するなど、いじめの未然防止に向けた実質的な取組を推進するよう図る。
また、小項目の2つ目の推進の視点「不登校児童生徒の相談・指導の充実」として、不登校児童生徒が、社会との関わりを持ち続けることができるように、専門機関等による相談・指導を受けることができる取組の充実を図る。
▼目標3 健やかな体の育成
▽体力・運動能力の向上
子どもが将来にわたって、健康で活力ある生活を維持するためにも健やかな体は大切である。そのため、現在の子どもたちの体力・運動能力の状況を客観的に把握し、指導の充実を図るために、推進の視点「新体力テストの全学年・全種目実施」に取り組み、その結果分析等に基づき、例えば体力・運動能力に関する1校1実践を設定して取り組むなど、子どもたちが日常的に運動に親しむ機会の設定を図る。
▼目標4 学びを支える地域・家庭との連携・協働の推進
▽幼児教育の充実
近年、ますます幼児教育と義務教育の円滑な連携が重要となっている。そのため、域内の幼児教育施設と小学校の意見交換や合同研修会の機会を設定し、スタートカリキュラムの合同作成に取り組むなど、小学校入学時の指導の一層の充実を図るよう、推進の視点「スタートカリキュラムの実質化」の取組を図る。
▽学校と地域の連携・協働の推進
地域の教育力を活用し、学校の教育活動の充実を図ることは、地域の担い手である子どもたちの成長に重要である。そのため、コミュニティ・スクールと地域学校協働活動を一体的に進め、関係者で目標やビジョンを共有する機会を設定するなど「地域とともにある学校づくり」「学校を核とした地域づくり」の実現に向けた取組を図る。
▼目標5 学びをつなぐ学校づくりの実現
▽学校段階間の連携・接続の推進
学校種間の学びをつなぐことは子どもの成長を支える重要な要素となり、それぞれの学校で効果的な学校経営を進めることが大切である。すでに議会では「小中高12年間の学びの保障」が論議されているところだが、まずは義務教育の9年間の指導の連続性に関する取組とともに、9年間の一貫した教育課程の策定に向けて、推進の視点「小中の教育課程に関する共通した取組の充実」を図る。
▽学校運営の改善
学校が本来、教育課程を通して子どもに資質・能力を身に付けさせる機関であることを踏まえ、資質・能力育成の取組をあらためて重視するよう、推進の視点「働き方改革の推進に向けた組織運営体制の改善・充実」の取組を図る。
▼目標6 学びを活かす地域社会の実現
▽生涯学習の振興
学校で学ぶ意義は、あくまでも将来にわたって自分で納得した人生を送ることができる、いわば自己実現を図るための資質・能力を身に付けることである。そのため、地域の課題解決に参画する機会などを設け、自己実現に向かい、学んだことを活用し、学ぶ意義を実感できるよう、推進の視点「学んだ成果を生かした社会参画の推進」の取組の充実を図る。
【4 重点的に取り組むこと】
▼管内教育推進の重点
全ての目標、項目において取組を進めていただけると考えているが、特に重点的にお願いしたい点を1点申し上げる。
その1点は「子どもたちに資質・能力を確実に育成する」ことである。これが、学校本来の役割である。資質・能力はすでに学習指導要領上3つの柱にまとめられている。その3つを簡単に言うと「自分の考えをもち、他者の考えと比較・検討・理解し、よりよい考えを生み出す」ことである。私たちが育てた子どもたちが将来にわたって「自分の考えを持ち、いろいろな人々と話し合い考えを出し合い、理解し合ってより良い考えを生み出す」ことがなければ、私たちの今の仕事の意味はない。
だからこそ、学校の1年間1015時間の中で「主体的・対話的で深い学び」を実現する授業を進めることが必要であり、子どもたちにとって重要である。
そのため、学校の教育課程は、子どもたちに「考えを持たせ、友達と理解し合い、より良い考え、新しい考えを創出させる」ためのチャンスが並べられているはずである。
皆さんには、自校の教育課程がこれらのチャンスを生かし「真の意味で子どもたちに資質・能力を身に付けさせているか」について「検証・改善」を積極的に進めていただき、学びの質を高めていただきたい。
さらには、そうした資質・能力の定着の状況を客観的に把握できる一つの機会が、19日に行われる全国学力・学習状況調査である。教育基本法にある「義務教育の機会均等」と「その水準維持向上」の観点から、全国平均という「指標」を大切に考えていただき、全ての子どもが身に付けた資質・能力を十分発揮できるようお願いする。
また、このことは、実は「目標2豊かな人間性の育成」の推進の視点に加えた「援助希求的態度の育成に向けた取組の充実」にも関わる。子どもたちが多くを過ごす学校の授業の中で、多くの友達と話し合い、多くの友達の考えが理解できたならば、自然と自分の考えを伝え、良い考えがあれば「いい考えを見つけた」と言うように、困ったことがあれば「困ったから助けてほしい」と言えるようになる。また、困った友達に気づけるようになる。
こうしたことから、3つの柱に整理された資質・能力をその学年、その月、その1日で、確実に身に付けさせるよう検証・改善に力を入れた学校経営の充実をお願いしたい。
なお、もう1点付け加える。この資質・能力を身に付けさせる授業を展開することは非常に難しい。なぜなら、子ども一人ひとりの考え方や表現の仕方に応じた授業展開を考えなければ、子どもが十分に活躍し求められる資質・能力を身に付けることができないからである。
したがって、そうした授業構想をつくるには、相当内容を練るための時間と労力が必要である。
しかしながら、このことは学校の本質的な役割であることから、必ず進めなければならない。だからこそ、これまでの教育活動を見直し、資質・能力の育成を優先した取組が最重要である。業務改善の必要性、つまり、働き方改革の必要性が生まれる。
決して働き方改革は、時短や人を増やして仕事をシェアリングすることが中心ではない。あくまでも、学校の本質的な役割を全うするための方策である。
【おわりに】
以上、4年度の管内教育推進に当たり、重点的に取り組んでいただきたい内容を申し上げた。公教育の役割は、様々な状況や事情によらず、全ての子どもに資質・能力を身に付けさせることであり、その最前線に立っているのが、学校経営者である校長だからである。
ぜひとも、全ての子どもの幸せのために「資質・能力を確実に育成する」学校経営を進めていただくようお願いする。
この記事の他の写真
(道・道教委 2022-04-25付)
その他の記事( 道・道教委)
道 フロンティアキッズ育成事業 浦河小など6校で SDGsで地域のリーダーを
道は、フロンティアキッズ育成事業の4年度実施校を決定した。浦河町立浦河小学校など6校の5年生の総合的な学習の時間において、SDGsの視点で地域の環境の良さや問題点をマップにする「地域未来図...(2022-04-26) 全て読む
公立高配置計画検討協議会〈胆振西・東〉 胆振西 8~11年度2~3学級相当減 胆振東 11年度まで1~2学級相当減
◆胆振西学区 【室蘭発】道教委は18日、公立高校配置計画地域別検討協議会(胆振西学区)をオンライン開催した。学区内の教育関係者約40人が参加。8~11年度までに2~3学級に相当する中学卒...(2022-04-26) 全て読む
日高局 公立高・特校長・事務長会議 小中高連携強化を提案 行徳局長 教育推進の重点説明
【苫小牧発】日高教育局は20日、日高合同庁舎で管内公立高校・特別支援学校長・事務長会議を開催した。管内8校の校長・事務長16人が出席。行徳義朗局長が管内教育推進の重点を説明したほか、小・中...(2022-04-25) 全て読む
道教委 中1ギャップ未然防止事業 4年度46校で研究 新規は旭川光陽中など8校
道教委は、中1ギャップ問題未然防止事業の4年度推進地域・推進校として15中学校区46校を決定した。このうち新規は旭川市立光陽中学校など4中学校区8校で、子どもの人間関係づくりの能力の育成や...(2022-04-25) 全て読む
キャリア・パスポート作成で筑波大教授 教師の対話的関わりを 道教委 高校進路指導対策会議
道教委は21日、高校進路指導対策会議をオンライン開催した。筑波大学人間系の藤田晃之教授がキャリア教育の実践をテーマに講演したほか、過労死等防止対策推進北海道センターが労働問題・労働条件に関...(2022-04-25) 全て読む
第1回全道代表高校長研 道教委所管事項④
◆生徒指導・学校安全課 【生徒指導について】 ▼いじめ問題への対応 ◇学校いじめ防止基本方針について ▽学校いじめ防止基本方針を必ず入学時・年度始めに配布し、生徒、保護者に説明すると...(2022-04-25) 全て読む
十勝管内4年度教育推進の重点 動画教材等で学校支援 新山局長 重点化図った取組を
【帯広発】十勝教育局の新山知邦局長は、11日に幕別町内の十勝教育研修センターで開いた管内小中学校長会議で4年度管内教育推進の重点を説明した。「社会で活きる力の育成」など5項目を提示し、重点...(2022-04-22) 全て読む
道立学校男性職員の育児 チェックシート導入 道教委 育休取得状況など管理
道教委は「男性職員の育児計画チェックシート」を新たに作成し、道立学校での導入を開始した。子どもの出生に当たり管理職員が職員と相談して作成するもの。出産予定日に応じて関係休暇や育児休業の取得...(2022-04-22) 全て読む
道内学校臨時休業 11~17日 学校閉鎖32校・園に 学年・学校閉鎖増加傾向
道教委は、新型コロナウイルス感染症の罹患に伴う道内学校の臨時休業の状況(4月11~17日)をまとめた。札幌市を含む道内の公立・私立の学校、幼稚園2268校・園のうち、学級閉鎖は69校・園、...(2022-04-22) 全て読む
第1回全道代表高校長研 道教委所管事項③ ICT サイト等で情報発信 小・中・高12年見通し学力向上
◆学力向上推進課 当課は学力向上の取組の一層の充実を図り、教育効果を高めていくためには、小学校から高校までの学力の実態把握や分析等を一体的に実施し、それを踏まえた一貫した授業改善を行うな...(2022-04-22) 全て読む