専門高フューチャープロジェクト ハウス周年栽培 経済性検討など 岩農高 4年度実施計画
(学校 2022-08-10付)

 【岩見沢発】2年度から3年間、道教委の「実践的職業教育推進事業専門高校フューチャープロジェクト」の指定を受けている岩見沢農業高校(鎌田一宏校長)は、4年度実施計画書をまとめた。3年目の本年度はハウス周年栽培における経済性の検討と輪作の在り方、冬期無加温・加湿栽培での葉菜類栽培試験、地域への技術普及を行う。農業者や関連産業従事者の視察を積極的に受け入れる予定。実施計画の概要はつぎのとおり。

【研究主題】

▼北海道におけるハウス構造とバイオマスエネルギー等を活用した野菜類周年利用技術の確立

【研究の内容等】

▼地域の現状

 空知管内は、全道の農耕地面積の約10%を有し、うち水稲が80%を占める地域である。気候は比較的温暖で昼夜の温度差があり、農業生産には向いている地域である一方、冬は豪雪地帯として知られている。

 そのため、厳冬・積雪期間が長く、特に畑作・野菜栽培においては施設や労働力の未利用状態が課題となっている。特に夏場、生産に使用するビニールハウス等の施設においては、冬は栽培作目がなく、雪害等の恐れがあることから余剰状態となっている。

 また、岩見沢市はスマート農業の先進地域でもあり、ICTの農業分野への導入も進む中で、これまで以上に幅広い分野での労働力や施設の活用が求められている。

▼課題、高校に対するニーズ等

 農業の多様化、マーケティングの多様化が進む中で、農閑期の余剰状態となっている労働力や施設を有効活用する方策を見いだすためには豪雪に耐え得る施設構造の検討が必要である。併せてスマート農業の推進とそれを支える人材育成も急務である。

 本校は道内の農業後継者が多く集まることから、課題解決に向けて必要な見方・考え方や科学的な視点を養う学習の機会を設定するとともに、他産業と連携した探究的な学びを創出することが重要であると考える。

▼研究目的

▽試験研究を通して北海道産業の現状や課題を理解し、農業に関する先進的な取組に触れ、専門的な知識技術・科学的視点を身に付ける

▽北海道産業の方向性について考える力、調査した内容を整理する力、課題解決に向けて創造する力、普及に向けた発表・表現力を身に付ける

▽工業高校との連携を通して、協働的に学ぼうとする姿勢や多様性を尊重する態度を身に付ける

▼研究目標

▽北海道の厳冬期において0度以上を維持する施設構造の確立

▽ハウス周年栽培による農業生産・所得向上の実証

▽研究成果の普及と実用性の検討

▼研究内容

▽果菜類・葉菜類を組み合わせた周年栽培モデルの確立

▽春~秋の果菜類、冬期の葉菜類を組み合わせた輪作モデルの確立

▽バイオマスエネルギーの利用と保温・生育促進効果の検証

▽地域の未利用副産物等を使った保温設備の在り方を検討

▽ICTを活用したハウス管理システムの実践

▽ハウス環境制御におけるICT導入法の検討

▼実践研究の規模

 本校農業科学科、農業土木工学科の2学科が札幌工業高校と連携し、試験研究を行う。なお、外部講師の講演会や現地指導においては、関係する学科の生徒・教員も参加できるようにする。実践研究を進める上でSSH指定時の経験を生かし、校内推進体制を構築する。

▼研究成果の普及方法

 地域企業、専門機関、大学と緊密に連携を図りながら研究を進めることで、企業による技術普及や学会への参加・発表を行うほか、本校での視察受け入れや活動報告会を通して研究成果の普及を図る。3年目の本年度は、農業者や関連産業従事者の視察を積極的に受け入れる予定である。

 併せて、学校ウェブページや各種メディア等を活用し、生徒の取組を広く発信する。

▼3年間の研究計画

▽2年度=周年栽培に関わる施設の検討と耐雪性や厳冬期における耐寒性の検討、冬期無加温栽培に適する葉菜類の検討

▽3年度=ハウス周年利用における土壌の変化と植物体への影響、ハウス周年栽培における経済性の検討、冬期無加温・加湿栽培での葉菜類栽培試験

▽4年度=ハウス周年栽培における経済性の検討と輪作の在り方、冬期無加温・加湿栽培での葉菜類栽培試験、地域への技術普及

▼4年度の実践計画

▽4月=①試験設計「栽培試験設計に関わる調査および設計書作成」②試験ハウス準備「耕起、整地、施肥、マルチング・トマト播種定植」③コラボレーションチャレンジ「ICT機器の設置・稼働試験」

▽5月=①先端技術講義「最終年度の試験計画・今後の取組」②先端技術講義「自然エネルギー利用に向けて」③先端技術講義「自然エネルギーの有効利用の実際について」④第1回専門高校NEXT人材育成協議会⑤第1回指定校連絡調整会議⑥調査観察の実践「生育調査・肥培管理・観察」

▽6月=①先端技術講義「流体工学と農業」②先端技術講義「雪冷熱利用と農業」③栽培管理・調査観察の実践「生育調査・肥培管理・観察」

▽7月=①先端技術講義「栽培試験の状況と今後のまとめ方」②先端技術講義「沼田町の雪冷熱の取組について」③栽培管理・調査観察の実践「生育調査・肥培管理・観察」④視察研修「蔬菜園芸作物栽培の基礎」⑤視察研修「美唄市自然エネルギー関連施設」⑥農場視察受入「地域農業者・関係機関対象の見学会」⑦視察研修「再生可能エネルギーの実際」

▽8月=①先端技術講義「野菜の栽培環境制御と環境保全型農業」②視察研修「沼田町雪冷熱関連施設」③栽培管理・調査観察の実践「生育調査・肥培管理・観察」④視察研修「先進農業者視察研修」

▽9月=①先端技術講義「持続可能性を意識した農業環境整備」②栽培管理・調査観察の実践「生育調査・肥培管理・観察」③視察研修「資源循環型バイオマスグリーンサイクル」

▽10月=①栽培管理・調査観察の実践「生育調査・肥培管理・観察」②研究成果報告会③第2回指定校連絡調整会議

▽11月=①視察研修「室蘭工業大学施設」②栽培管理・調査観察の実践「生育調査・肥培管理・観察」

▽12月=①視察研修「冬期葉菜類栽培に関わる視察」②視察研修「自然エネルギー利用施設」③視察研修「自然エネルギー利用施設」④栽培管理・調査観察の実践「生育調査・肥培管理・観察」

▽5年1月=①先端技術講義「試験成果のまとめとこれからの北海道農業」②栽培管理・調査観察の実践「生育調査・肥培管理・観察」③視察研修「バイオマスエネルギー利用と園芸作物栽培に関する視察」④視察研修「利雪研究・自然エネルギー活用について」

▽5年2月=①第3回指定校連絡調整会議②第2回専門高校NEXT人材育成協議会

(学校 2022-08-10付)

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