道内私大・短大・高校連絡協議会 高・大・社つなぐ入試に 英語民間試験や情報望まず
(学校 2022-08-05付)

私立大・短大・高校連絡協議会
関係者が一堂に会し情報や意見を交流した

 道内私立大学・私立短期大学、高等学校連絡協議会が7月28日、ホテルライフォート札幌で開かれた。2人の提言に続いて意見交換し、英語の民間試験や「情報」について高校側から「活用しないでほしい」との声が寄せられたほか、調査書の点数化について大学側が苦慮している実態を明かした。また「どんな方法でも、生徒の良い面を評価できる選抜であってほしい」「高大接続を“地域の活性化を図る小中高大社接続”に移行する必要がある」「高、大、社の学びの連続性、シームレスな入試制度が大切」などの意見が寄せられた。

 主催は日本私立大学協会北海道支部、日本私立短期大学協会北海道支部と道高校長協会。大学・短大から44人、高校から21人の計65人が参加した。

 大学と短大の入学者選抜の在り方について協議し、高校の進学指導と大学・短大の入学者選抜方法の工夫と改善に資するもの。コロナ禍によって3年ぶりの開催となった。

 はじめに、主催者を代表し道高校長協会の林正憲会長があいさつ。「高校は大学の動向を適切に把握したい。偏差値という一つの尺度で考える時代ははるか昔。それぞれの大学が今何を目指し、どんな目的を持ったカリキュラムなのか、入試制度をどう変えていくのか、学びの面で高校とどう接続したいのかといった情報を求めている」などと述べた上で「幼稚園から大学までの学びがうまくつながり、経済の低迷や格差、環境問題など課題が山積する北海道で、日本の未来を切り拓く人材が育ってくれれば」と期待を寄せた。

 続いて、同協会調査研究部高大接続小委員会委員長の合浦英則氏(帯広三条高校長)が「多様化する大学入試と高大連携の在り方」、酪農学園大学入試広報センター長の中田健氏が「高大接続に向けた地方私立大学の在り方」と題しそれぞれ提言した。

 合浦氏は、ルーブリック評価の導入や単元配列表作成による教科等横断的な取組、探究的な授業への転換など、近年の高校の新たな取組について説明。新学習指導要領が本格実施となり、3段階の観点別評価の義務づけや1人1台端末の活用など「高校改革がようやく本格化してきた」と述べた。

 英語民間試験の活用については、全国・全道の高校の4割以上が「活用は控えた方が良い」と思っていること、実施のため解決しなければならない課題は「経済・地域格差の解消」「試験の公平性・公正性」などであることを説明。

 また「主体性」の評価について「大学側が何をどう評価するのか分からない」ことを課題と捉えている高校が多いことを指摘した。

 最後に「一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜のいずれもが、生徒の良い面を評価できる選抜であってほしい」と訴えた。

 一方、中田氏は新学習指導要領に対応したテストは7年度からだが、各大学における選抜方法の予告は本年度であることを説明し「丁寧にお知らせしていきたい」と述べた。

 また、18歳人口の減少などによって「大学の現状維持での存続は考えられない」とし「地元の特色ある産業の維持、創出など分かりやすい、具体的な大学と社会の接続が求められる」とし「グローカル人材の育成」を提案。「高大接続の基本的な考え方を“地域の活性化を図る小中高大社接続”に移行する必要がある」などと述べた。

 このあと、2つの分科会に分かれ協議。中では「調査書について、どう活用するか高校に説明する場を設けていきたい」「総合型選抜にプレゼンテーションを導入するなど多様化し、意欲的な子を獲得するためブラッシュアップしていきたい」「調査書は点数化にかなり時間がかかっているが、生徒を最大限評価できるよう精査している」「学力だけでなく、人の話をきちんと聞けて、自分の考えを伝えられる人間力のある子を育成したい」「調査書の配点は2割とし、アドミッション・ポリシーに照らし試行錯誤している」「ミスマッチを起こさない入試が重要。調査書だけで評価すると教師の力量によって公平にならないので、調査書プラス面接とする」「学びの接続が大切。高校、大学、社会の学びの連続性、シームレスな入試制度が大切」「主体性の数値化は極めて難しい。観点別評価から良いところを見てほしい」「大学には今3つの入試があるが、何がどう評価されるのかピンとこない」「調査書については生徒も教員もより一層負担になるのではと危惧している」「入試が多様化されるのはいいが、地域的・経済的影響が心配。面接をオンラインで受けられるようにすると遠方でも受験できる」「英語の民間試験は、離島からの受験者には明らかに負担。広域な北海道では必修にされると苦しい」「北海道の高校で情報の教員は少なく、実際には数学や理科の先生が行っていることが多い。カリキュラムも全く異なる。プログラミングも初めて。入試に入れられても教師も大変であり、情報は選ばないでもらえるとありがたい」などの意見が出された。

 9月5日には道内国公立大学を含めた入試に関する意見交換会を行う予定。

(学校 2022-08-05付)

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