釧路市景雲中 全生徒が防災小説 自分の身を守る物語を 大津波想定し初の試み(学校 2022-08-31付)
防災小説を書く生徒
【釧路発】釧路市立景雲中学校(松岡伸之校長)は27日、防災小説を書く防災学習を実施した。初の試みで、1~3学年の生徒約500人が参加。土曜日の午後6時過ぎ、震度6強の地震が発生し、大津波が襲来することを想定し、一人ひとりが生命を守ること、助け合うことなどについて深く考えた。部活動帰りの途中や、塾に通い学習している時など、思い思いに発災時の状況を頭に描き、非常事態にあっても希望を見いだすストーリーづくりに取り組んだ。
今回の授業のねらいは、生徒自身が災害に遭遇することを自分事として考えるもの。避難訓練を主体とした防災学習以上に、災害時をより強く意識することを目指した。全校生徒を対象としたが、公立高校の説明会と重なり、全校生徒599人のうち約100人が欠席を余儀なくされた。
講師を務めたのは道教育大学釧路校の境智洋教授。体育館で行った授業説明の冒頭、釧路市の人口約16万人のうち、15歳以下は約1万5000人と少ないこと、千島海溝沖地震の際には、最大M9・3の地震が発生し、景雲中周辺でも最大高20・3㍍の大津波が太平洋や新釧路川から押し寄せることなどを説明した。
また、震度6強の揺れや大津波の状況を実際の映像で紹介したほか、釧路地域では約400年前に高さ30㍍を超える津波が襲来した事実など、400~500年周期で巨大地震が発生していることを示した。
境教授の授業には、避難訓練の際に生徒たちと一緒に訓練する豊川町内会の地域住民約20人も参加。生徒と共に講話に耳を傾けた。
境教授は「もしものときに何ができるかを考えてほしい」とし、災害時の適切な対応、安全な避難行動、地域の人たちと助け合うことなどを考えるよう呼びかけた。
生徒たちは各教室に移動し、40分で約800字の防災小説を書き上げた。教室単位で3、4人の生徒が作品を発表。発表後にグループ協議を行う教室もあった。
さらに1学年の村瀬紗菜さん、2学年の松田奏飛さん、3学年の多田結さんの3人が全教室で作品を発表。
村瀬さんは、悲しい気持ちに打ちのめされそうな自身(主人公)が、避難し自身の命を守り、周りの助かった多くの人たちの姿を見て「生きている。あの日のことは忘れない」と希望を見いだす物語を披露。
松田さんは、塾で学習している時の発災を想定。「甘く見てはいけない災害」と、自身が避難する過程を克明に記す一方、離れている家族の状況を思い、安否確認ができるまでの情景を書いた。
多田さんは、大災害の中、離れている家族が最悪の事態を迎えているのではと、大きな不安に襲われている自身の姿を描き「一人じゃないんだ」との気持ちの大切さや、「精いっぱい、前を向いていこう」と強く決意するストーリーを発表した。
境教授は「皆さんは想像の中で一度、被災した。日常がかけがえのないものであることに気が付いたのでは」と小説に取り組んだ生徒をねぎらった。
また「それぞれの小説には、助かった自分ができること、一生懸命、今を生き抜くことが書かれている。今の中学生の素晴らしさが伝わった」と評価した。
さらに、スマトラ沖地震の際に、津波襲来を呼びかけた一人の女の子の行動によって、あるビーチでの人的被害がゼロだったこと、東日本大震災の際には、釜石市の中学生が、校舎最上階ではなく近隣の高台への避難が必要なことを訴え、多くの地域の人たちの生命を守ったことを紹介した。
境教授は、釧路においても災害時には、若い中学生が地域の中心になって、多くの人の生命を救ってほしいとの願いを込め「希望を持ってください。釧路をつくっていくのは皆さん」とエールを送った。
土曜授業となった今回の防災学習は、教室から体育館、再び教室への移動はもちろん、作文(小説)指導、グーグルミートによる授業展開、町内会参加者への校舎内施設案内など、同校の教職員が役割分担しながら運営。災害時には地域の拠点ともなる同校での円滑な授業づくりに努めた。
(学校 2022-08-31付)
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