理セン 観察・実験の事故実態調査 小中高特1777人回答 ヒヤリハット含めリスク分析(道・道教委 2022-09-22付)
道立教育研究所附属理科教育センターは、道内公立学校の理科の観察・実験における事故についての調査結果をまとめた。回答数が小中高特計1777人と全国調査並みであることと、事故に至らない「ヒヤリハット」を含めて調査することにより、潜在的な危険を洗い出したことが特徴。事故が起こりがちな実験の種類や、校種を問わず子どもたちがピンセットをコンセントに差し込む事例が多いことなどが調査から判明した。
理科の観察・実験においては、全国的に毎年様々な事故が発生していることが報告されており、同センターでは「重大な事故を引き起こさないためには、発生した事故への適切な対処とともに、事故の背景に潜む未然の事故(潜在的な危険)を避けるリスク・マネジメントを機能させなければならない」と考え、事故にはならなかったが危険を感じた体験(ヒヤリハット)を含む事故事例について調査・分析した。
調査期間は5月2~31日。全道の小・中・高・特別支援学校(札幌市・国立・私立を除く)の理科の指導に関わる教職員を対象に個人単位でグーグルフォームで回答を求めた。
観察・実験の対象期間は平成29年度から令和3年度のうちコロナの影響で観察・実験を実施できなかった時期を除いた期間。回答者数は1777人。うち小学校が906人、中学校が467人、高校が322人、特別支援学校が50人、実習助手が32人。
事故の起きたタイミングは「実験中」が概ね7割、「片付け」が2割、「準備中」が1割で「休み時間」「放課後」「管理時」「予備実験時」の回答はごく少数。校種間の有意差はなかった。
事故を起こした、起こしそうになった対象は「児童・生徒」が8割弱、「教師」が2割強で、校種間の有意差は見られなかった。
実験の種類は「燃焼」と「加熱」の合計が全体の約半分。その後、「薬品使用」「機器操作」「いたずら」と続く。「いたずら」はコンセントにピンセットを差し込む事例が学校種を問わず報告されている。
小学校特有の例として「虫眼鏡を使用した光を集める実験において発火した」という記載が多数上がっている。
理科の観察・実験における事故についての調査結果の概要はつぎのとおり。
理科の授業で、生徒が観察や実験を行う頻度は「週に1~2回かそれ以上」と回答した教員の割合が小・中学校で5割程度であるのに対し、高校では5・6%と非常に少数だった。
また、「単元に一度も行わない」と回答した教員の割合は、小・中学校が2%未満であるのに比べ、高校は40%を超えた。
観察・実験における事故経験は「起こったことがある」「起こりそうになった」の合計が小学校は17・9%、中学校は50%、高校は30・7%であり、中学校段階で増加している。
実験で扱っていた器具は「ガラス器具」と「加熱器具」が突出して多く、「ガラス器具」は小学校と高校で、「加熱器具」は中学校で多いことが分かった。
事故の具体例から、同センターでは「小学校ではビーカーやメスシリンダー、フラスコなどの破損が多く、中学校ではガスバーナーの扱いが不慣れであることが多数報告されている」「背景として、ガラス器具の劣化や、準備の時間等が不足しているために劣化の点検を教員が十分に行えていないこと、生徒がガスコンロやマッチなどを日常的に使わなくなったことや、発達段階において器具の操作が不慣れなことなどが予想される」と分析している。
起こった、または起こりそうになった事故の具体的な内容や処置報告のあった事故事例については、先行研究を参考に13のカテゴリーに分類した。
「熱源・加熱・燃焼」は、加熱器具の保持・点検に関する不備、着火時の誤操作、加熱中の破損・やけど・いたずら、冷却中のやけど、集気瓶のふたをアルミニウムで覆わなかったことによる破損など。
「酸・塩基」は、ラベルの剥がれ等の保持・点検に関する不備が見られたほか、希釈時の発熱・飛散、体の各部分への溶液付着に関する報告が多い。
「気体」は、過剰発生やそれに付随する事故、気体の性質による発火や燃焼の拡大等の事例が集まった。
「水溶液」は、硫酸銅水溶液や石灰水、再結晶に関する事故、「金属・金属塩」はナトリウム、マグネシウム、鉄の反応と廃棄時の事故が報告されている。
「刺激臭」は、硫化鉄の化合時の事故、硫化水素・二酸化硫黄・アンモニア・塩素の各気体の匂いを嗅ぐ際に勢いよく嗅ぐこと、気体が室内に充満することによる体調不良など。
「引火性・可燃性」は、エタノールの気化や容器からの漏れ・沸騰・湯煎などに起因する引火、水素の爆発、ろうの発火など。
「回路・電流」はショート回路のほか、電熱線の過熱が、「文房具・工具・工作」は虫眼鏡を使用した実験における発火などが報告されている。
「器具・機器操作」は、ガラス器具全般についての報告が多数あり、固定や落下時の破損のほか、ビーカーや試験管にできたひびによる事故、温度計やガラス管の破損、洗浄中のけがなどの事例があった。
「いたずら」は、ほとんどが学校種によらずピンセット等をコンセントに差し込むもの。「偶発」は、ビーカーの光レンズ効果による発火、蛇口の老朽化が報告された。
同センターでは、今回の調査研究について「これらの多くは、児童生徒の知識や技術が未熟であることや、いたずら等によって生じているが、教師の指導や教材研究、事前の準備の不足から生じたと考えられる事故事例も散見された」と分析。
今後に向け「今回、報告された事故は、過去の事故事例と照らし合わせても典型的なものであり、今後は、13のカテゴリーを細分化し、その発生原因や発生状況、事故の重大さの分類をもとに、重大な事故に至るまでのプロセスを明らかにすることが必要」「また、事故発生のプロセスに対応した事故防止策や実験室の安全基準などを作成し、理科教員が安心して観察・実験を行うことができるような環境の整備に生かしていくことが重要」としている。
(道・道教委 2022-09-22付)
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