生涯学習推進センターと道教委3課 先生方どう引き込む? 第1回地学協働遠隔講座
(道・道教委 2022-10-19付)

 道立生涯学習推進センターは13日、第1回地学協働オンライン講座を開催した。テーマは「地学協働を促すマネジメント力~先生方・保護者・地域住民をどう引き込むか」。壮瞥町立壮瞥中学校(松岡賢晃校長)と幕別清陵高校(澤田慎也校長)の事例発表をもとに意見交流、トークセッションを行った。中では「子どもは外に出て体験すると成長する。子の成長を見て先生方も変わっていく」といった多くの成果が示された。一方「先生方との意識の共有が一番難しい」と、地学協働に理解を示さない教員への対応が課題に上がった。

 道教委社会教育課、高校教育課、義務教育課の3課との共催で初めて開催した。対象は校長、副校長、教頭、主幹教諭、地域連携担当教職員、社会教育主事、行政職員等。約60人が参加した。

 事前に両校の事例発表をユーチューブでオンデマンド配信。壮瞥中は、岩手県釜石中学校の修学旅行生に随行し、火山や防災についてガイドをするため、事前に火山マイスターから指導を受け、フィールドワークで町や火山、防災についての知識を深めてから、釜石中の生徒に丁寧にガイドを行った。

 幕別清陵高は、澤田校長と活動の中心となっている羽田野圭介教諭が地学協働の成果や課題について語り「地域からの依頼はたくさんくるが、単に物を運ぶだけのようなものは受けない。生徒の成長の視点があるか、頭を使うなど工夫が必要な仕事に絞っている」「できれば企画段階から入れていただき、企画から進行、司会などにも生徒が入れるようにしたい」「管理職や先生方のやる気だけではなく、生徒が主体的に参加するのでなければ意味がない」「事業が終わり、こういうことがあったと報告しているときの先生方はとてもいい顔をしている。外に出ていろいろな人やことに触れることは、生徒にも先生方にも良い刺激となる」などと述べた。

 意見交流では、参加者が両校長と質疑応答。「壮瞥中の火山ガイドのきっかけは」との質問に松岡校長は「知識を身に付ける活動は以前から。今回はガイドをする形で発表する場面を振興局と教育局との協働で行うことができた」と答えた。

 「新たな連携先をつくるのに有効なことは」との質問に澤田校長は「会費は高いがライオンズクラブに入会すると町内の名のある方をはじめ貴重な出会いが広がった。ロータリークラブも普段会えないような方と会える」と。松岡校長は「効果的だったのは壮瞥町の社会教育委員との関係。一番地域のことを知り、地域にどういう人がいるかを知っている方で大変助かった。もう一つは学校運営協議会の委員との関係。学校を応援してくれる方であり、いろいろな職種の方がいるのでそういう方と会議の場で出会えたことは貴重だった」と答えた。

 「子どもや先生、地域がどう変わったか」との問いに澤田校長は「地学協働で一番難しいのは先生方との意識の共有で、かなりの時間がかかる。生徒が変わっていかないと先生が変わらないため、生徒をどんどん外に出し、第三者と触れ合う機会をつくった。そうすると生徒は変わる。先生と口を聞けなかったくらいおとなしい子ががぜん元気になり、優良企業に就職したくらいである」「体験・経験で生徒は変わるが、先生方は生徒の成長を見て変わる。しかし、何を言っても変わらない先生もいる」と。松岡校長は「今までは防災についてただ学ぶだけだったが、今回は伝えるというモチベーションが加わり、意欲が高まった。ガイドの方の話も真剣に聞き、録画したりメモしたりと、聞き逃さないように工夫していた。また、他の学校の生徒に発表することで自信が付いたと思う。先生たちの意識も変わった」と述べた。

 このあと、道教委社会教育課の佐々木直人主査が加わり、参加者全体でトークセッションを行った。

 講座の2回目は「はじめての地学協働のすすめ方講座~先生方・保護者・地域住民をどう引き込むか」をテーマに11月15日午後2時からオンラインで開催する。

 トークセッションの概要はつぎのとおり。

       =敬称略=

佐々木 最初は校長として強引に進めた方がいいか。

澤田 先生に理解・協力をもらうのは非常に難しい。私は社会教育の経験が8年あるので、いろいろな地学協働の事業を思いついてしまうのだが、一般の先生とのギャップにぎくしゃくしてしまう。長時間個人面談しても駄目だった人もいる。

 ただ、町からの補助金が少ないと先生方から不満が出てきたとき、それを増やすにはただ増やしてくれと言うのではなく、町と関わり、町にとってなくてはならない学校にならないとと考え、そこら辺から話を押し通すようになった。最初は丁寧にお願いしていたが、あまりスピード感がないと任期中にできなくなってしまう。

松岡 先生方が地域の方とやりやすい環境の整備が校長の仕事。協力を仰ぎ、セッティングする。最初は会議には提案せず「こういう事業をやります。子どもがこう成長するのでお願いします」と宣言し校長主導でやっていた。

佐々木 やりたいことが浮かんだらまずどうするか。

松岡 教頭と教務主任になぜやりたいかを話す。子どもにこうなってほしいからと。そうすると、いろいろ調整してやってくれる。

澤田 やりたいことはたくさんあるが、予算がどうかまず聞く。そして危険性がどうか、先生方の負担はどうか、この3点をクリアすればぜひやりたいと思う。

 ただ、何にしてもできない理由を挙げてくる先生もいる。また、町・町教委に依頼するときは「道立ですよね」という壁がある。まず町のために動かないと何事も進まない。

佐々木 担当の先生が重要と思うが、負担がかかる?

澤田 地域とつながる事業はプラスアルファになってくるので、どうしても先生に負担がかかってしまう。

松岡 担当より全体を見なければならない教頭の負担が大きい。ただ、地域の方が講師をやってくれるようなものだと、その分は負担を減らすことができる。

佐々木 一般の先生方の思っていることを吸い上げる手立ては。

松岡 面談で何かやってみたいことはない?困っていることはない?と聞き、できるだけ実現できるようにしている。校長は校長室にいるので分からないが、職員室内の雑談から実現するものは意外と多い。そういうものを教頭が聞いておき伝えてほしい。

佐々木 これまで失敗したことは。

松岡 町との避難訓練の際に考えがうまく担当に伝わらず、自分のイメージとは違うものになってしまった。分かっているだろうと決め付けず、目的と目標を共有することが大切。子どもがこうなってほしいからやりたい、ということが伝わらないと意味がない。

澤田 目的意識や目標を共有しないと、やらされ感たっぷりでうまくいかない。またスケジューリングを人任せにすると後手に回ってしまう。ただ、失敗は悪ではない。失敗はつぎへの糧にすればいい。

佐々木 教育行政に求めることは。

澤田 いろいろなことを言ってきてほしい。ただ、行政は指示が一件一件くるので何件にもなってしまう。行政側で高校に何を求めるかを整理してほしい。

 また、構想の卵のようなものについてはじっくり話したい。そして、楽しく話したい。やっていて楽しくないと、ただやらされている感じで終わる。生徒がこうなればいいねと楽しく話が弾むといい。

松岡 町立なのだから、町や町教委にはもっと遠慮しないでいろいろ言ってもらいたい。地域の方にも「うちの町としては学校はこうしてほしい」と、はっきり言ってきてほしい。

参加者 学校の開かれていない部分は。解消するには。

澤田 生徒が主体的に地域と関われるなら、保育所でも小学校でも、どんどん出かけ何人の町民と触れ合えるかを目指したい。環境づくりが外せないが、それができたら開かれた学校と言えるかと思う。

 学校運営協議会は月1回やりたいが、予算の関係で難しい。また、メンバーは充て職ではなく、一般の主婦らから本音の部分を聞きたいと思う。

松岡 学校運営協議会は、教育活動をする上での大きな根拠になる。「地域からこういう要望が出た」ということがあると、先生方に説明しやすい。

佐々木 生徒は外に出すべき?

澤田 絶対に出さないと駄目。ありとあらゆる方法で出していきたい。

松岡 ハードルは高くない。何をするか、目的と一致すれば出すべき。

 地域コーディネーターが常にいて、地域の方や行政などとつないでくれるのがすごく大きい。

参加者 地域と連携した取組は有効だが、働き方改革にはつながるか。教員の質の向上にはつながるか。

松岡 地域の人が指導してくれるときは負担は少なくなる。ただ、地域の方とは何のためにやるのかを十分擦り合わせておかないといけない。

 質の向上については、まず子どもが変わる。変容が見て取れる。先生も一歩引いて見られるので、TTより効果的に変容する。

澤田 地学協働をすればするほど働き方改革とは離れていく。年休、代休などで負担を軽減し、業績の評価も行う。また、やはり褒められるとやりがいを感じるもの。やらせっぱなしにしてはいけない。

 授業の質を向上するには、教員が話し生徒が聞いているだけでは駄目である。先生の長い話はいらない。50分先生が話すのではなく、半分以上は生徒が話す時間にしてほしい。

参加者 障がいのある子に対する対応は。

澤田 1クラスを2人で見て、1人が後ろから見るなど、担任のほか2、3人いることが大切。

松岡 障がいのある子が地域に出て目を輝かせて取り組んでいる姿をよく見る。他の生徒より体験を通した方が効果があるようで、体験を大切にしたい。

佐々木 最後に一言。

松岡 子どものために取り組みたいという人は地域にたくさんいる。いかにそういう方の声を拾って力を貸してもらうかが校長の役割である。

 また、自分がやりたいからではなく「子どもがこうなってほしいからやる」ということを共有する場面が必要。地域の方に教育者としての当事者意識を醸成するのも校長の仕事である。

澤田 これまでこんなに地域と関わることはほぼなかった。本校に来て、こういうことはやりがいを感じると一人でも多く思ってほしい。また、各学校では早くそういう方を見つけてほしい。地域との連携を始めて4年、とにかく連携を進めてきたが、今は連携がゴールなのではなく、うちの生徒の主体性を育てるための手段だと思っている。

(道・道教委 2022-10-19付)

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