北特活 創立50周年記念札幌大会 コロナ禍こそ特別活動を 文科省安部視学官が講演
(関係団体 2022-11-04付)

 道特別活動研究会(北特活、山下尊子会長)の創立50周年記念札幌大会(1日付2面既報)では、文部科学省初等中等教育局の安部恭子視学官=写真=が「多様な他者と協働し、よりよく生きる子供を育む特別活動」と題し講演した。安部視学官は「学校は社会を学ぶ場でもある。それなのに、コロナ禍でその経験が不十分になっている」と指摘し「コロナの時代だからこそ特別活動の豊かな実践を」と提唱。社会性や自己肯定感を育むクラブ活動や学校行事の大切さも強調した。また、活動は漠然と行うのではなく「何のために行うか意義を学校全体で共有することが大切」と訴えた。

 講演概要はつぎのとおり。

 コロナの時代だからこそ、特別活動の豊かな実践を大切にしてほしい。

 クラブ活動はコロナ禍のため壊滅的である。前年度まではまだ仕方ない面もあるが、いつまでもそうしていてはいけない。クラブ活動こそ異学年で交流し、自分たちで創意工夫するなど子どもたちを大きく成長させるものである。

 「お世話してくれた5年生のようになりたい」など、低学年の子は尊敬や憧れを抱き、高学年の子は思いやりや自己有用感が生まれる。

 ただ、事前に子どもとの関わり方を全教職員で共有しておくことが大切。また、先生はきちんとなりたいクラブの担当に就けるよう話し合ってほしい。

 北海道は雪のため2学期でクラブ活動が終わることがあると思うが、冬の間もクラブのまとめ動画を作ったり資料を作ったり、1人1台端末を利用し様々な活動ができると思う。

 学校行事は繰り返すことで関わりを深めていく。ペア学年や縦割りなどいろいろな方法があるが、子ども自身が主体的に活動できることと、何のための活動か意義をしっかり意識して行うことが大切。異学年交流にしても、何のために行うのか意義を学校全体で共有すること。

 学校行事は「精選」という名の削減が行われている。その少ない行事を「行事予定表のどこに入れていくか」という決め方ではいけないし「行事予定表に書いてあるからやる」とか「例年やっているので」というやり方は絶対にいけない。

 学校行事を通し、どんな資質や能力を身に付けたいかを共有し、保護者にも示すことが大切。

 今の学習指導要領は2030年の社会を想定したものだが、既に2050年を想定したつぎの学習指導要領の検討が始まっている。生産年齢人口がさらに少なくなり、ますます主体的に生きる子どもを育てないといけない。

 学校は社会を学ぶ場でもある。それなのに、コロナ禍でその経験が不十分になっている。協働的な学びは、互いの知恵を出し合い、話し合い、協力し合う。まさしく特別活動が大切にしていることである。

 不登校の子が増え続けているが、学校が居心地が悪い、楽しくないという状態では学べるわけがない。

 クラスの係活動も当番でやらせるのではなく、得意分野や興味・関心を生かした係で活躍することで、楽しさややりがい、自己有用感などにつながる。

 多様な他者と協働するためには、楽しいだけではなく目標が大切。集団社会の形成者としての見方・考え方を働かせること、これが一丁目一番地である。

 全国学力調査では、学校に行くのが楽しくない子が小学校で14・5%、中学校で17%もいる。また「自分に良いところがあるか」という問いには「分からない」子が多い。

 自分の良いところは、他者との関わり合いを通して分かる。子どもの場合、一番初めの評価者は大抵先生である。「頑張ったね」だけではなく、どこが良かったかを言ってあげることで子どもは自分の良さを自覚できる。振り返りシートの活用なども大切。

 令和2年の若者の意識調査では、自己有用感がない子が5割、居場所調査では家庭、学校、地域いずれも下がり「どこにも居場所がない」だけが増えている。

 そんな若者をなくしたい。居場所は、活躍できる場がないとできない。居場所があれば、自己肯定感や充実感が生まれる。

 いろいろな人と関わり、居場所の数が多いほど自己肯定感は高くなる。委員会活動でいつも決まった子が委員長だったり、理科の実験の発表はいつも班長にするのではなく、他の子にも活躍の場を与えてほしい。

 特別活動は、集団生活をより良くしていくもので、対話的でない話し合いはない。だが、日ごろから他者を尊重する関係性がないと自分の考えに固執してしまい、相手の考えを尊重した話し合いは難しい。また、反対意見は話し合いを深めるために大切なもので、悪者にしてはいけない。

 特別活動こそ、子どもがより良く生きていくため、良さや可能性を発揮できるもの。自分の学級だけではなく、他のクラスや学校中に広げていってほしい。

(関係団体 2022-11-04付)

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