人々の営みの本質伝えて 教材観、教材研究在り方議論 全小社研北海道大会記念シンポジウム
(関係団体 2022-11-04付)

全小社研シンポジウム・石井氏
石井正広氏

 第60回全国小学校社会科研究協議会研究大会北海道大会では、記念シンポジウムが行われた。道社会科教育連盟が示す「雪や寒さは宝であるとする発想の転換」という教材観や、研究内容および特設提案授業をもとに討論。教材研究や授業の進め方などについて考えを深め合った。

 シンポジストには、道社会科教育連盟研究部長の斉藤健一氏、札幌市社会科教育連盟研究部長の竹村正氏、全国小学校社会科研究協議会元調査研究部長の石井正広氏、大妻女子大学家政学部児童学科教授の澤井陽介氏が登壇。コーディネーターは道社会科教育連盟事務局次長の佐野浩志氏が務めた。

 斉藤氏と竹村氏は、道社会教育連盟が示す「雪や寒さは宝であるとする発想の転換」という教材観について説明した。

 斉藤氏は「(雪による影響を)大変なままで終わらせるのではなく、いかにプラスに変えていくか、発想を転換し、人々の営みを勉強して子どもに教えることを大切に進めてきた」と述べた。

 教材化に当たっては、雪解け水による水不足解消や、雪を利用した野菜栽培、雪氷熱の利活用などの事例を挙げ「(研究授業において)発想の転換をして、豊かな社会を実現したり、持続可能な社会を構築したりする人物を取り上げている。雪や寒さに限定されるものではなく、その人の営みの本質をしっかり見て、子どもたちに授業として伝えていくことを大切にしている」と述べた。

 竹村氏は「教材化の根本にあるものは、社会的事象を生み出しているのは全て人だというところにある」と説明。本道の開拓・発展に携わった人物の思いや考えを学ぶことで「子どもたちが夢や憧れを持って、自分たちがこれから生きていくときに、発想の転換の考え方を生かすことができると考えている」と説明した。

 石井氏は、今大会における公開授業を高く評価。学習指導要領総則に示された、持続可能な社会のつくり手を育成する授業をつくり上げるために学びたい点として①互いに考えを伝え合う力②思考を高める構造的な板書③子どもが本気になる魅力ある教材―の3点を挙げた。

 「本道の子どもたちは“問いの力”“自分で考える力”“高め合う学級風土”が築かれている」とたたえた。構造的な板書や、人物の営みや働きを教材化するスタイルが世代を超えて受け継がれていることを高く評価。「目標の実現に向けて、その教材が持っている本質が合致しているかが大切。特に、地域教材を開発するときは大切な視点であり、北海道の先生は、学習指導要領を踏まえて解釈して授業に結び付けている」と述べた。

 澤井氏は、これまでの社会科教育における指摘として「教師の指導性と子どもの主体性」があることに言及し「これを二項対立の論理に載せてはいけない。教師の指導性がなければ、子どもの主体性が生まれない」と強調。「“内容理解の社会科”と“問題解決の社会科”の二項対立がある。どちらも大事で、単元のどこに何を位置付けるか、単元全体を通してどのような資質・能力を身に付けさせるかがこれからの授業づくりの肝になる」と述べた。

 その上で、「“見方・考え方”をもう一度考えたい」と提起。「見方・考え方は、教材・教師・子どもが相互に結び付くもの。教師が教材を子どもに届ける、視点を導き出す、子どもにしっかりと届く問題解決の視点をつなげることが教師の仕事だ」と訴えた。

 教材研究を考えるとき「学習指導要領から教材を取り分ける入口の研究」「それを子どもに届けるための出口の研究」の2つの側面があると定義。本道における教材研究を「教師目線と子ども目線を併せ持って子どもに届けることを考えている」と述べ、地域の実態、地域教材にこだわっている姿勢を高く評価した。

 このあと、学年別授業研究会を開催。シンポジウムでの議論を踏まえて、9分科会に分かれて討議した。

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全小社研シンポジウム・澤井氏
澤井陽介氏
全小社研シンポジウム・斉藤氏
斉藤健一氏
全小社研シンポジウム・竹村氏
竹村正氏
全小社研シンポジウム・佐野氏
佐野浩志氏

(関係団体 2022-11-04付)

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